これからの総合型選抜はますます「各教科の学力」が問われてくる【大学受験】
更新日:2026/03/31
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(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
「総合型選抜(旧AO入試)は学力以外を評価する」は「学力を評価しない」ではない
「学力以外の学習意欲や個性、適性などを総合的に評価する選抜」というのが、大学受験総合型選抜に対する一般的なイメージかと思いますが、これは正確な認識とは言えません。たしかに、一般選抜のように教科のペーパーテストの得点だけで決まるのとは異なり、その受験生の学びに対する意欲や動機・適性や資質を見るのが総合型選抜ではあります。しかし、それは「教科の学力を全く評価の対象としない」ということではありません。考えて見れば当然のことなのですが、その大学の勉強についていくだけの基礎的な学力があるかどうかも問われます。「総合的にその受験生を評価する」という総合型選抜であり、そこには英語や数学・国語などの主要教科の基礎学力の有無も当然含まれています。ただ一般選抜のように「そうした教科学力だけを評価の対象としない」のが総合型選抜なのであって、基礎的な教科学力が求められるのは言うまでもありません。
旧AO入試時代から起きていた問題を解消するために総合型選抜は生まれた
かつてのAO入試(現総合型選抜)で「学力が十分でない学生が増えてしまった」という反省から、現在の総合型選抜は生まれました。多くの大学の調査から「AO入試で入った学生は、一般入試(現一般選抜)で入った学生よりも学びに意欲的であり学力も向上させている」ことは明らかになっていました。それは、一般入試と違い選抜段階で志望理由を明確にする必要があり、それによって「大学進学の動機」が明確となるため学びにも主体的に取り組むことができるからです。しかし、一方で「一般入試合格者に比べ、AO入試合格者は基礎学力が十分でないこと」が問題として指摘されていました。それは、多くの場合、「学力」を評価の対象として考慮していないことが原因でした。
そのため、そうした問題の解消を目的の一つとして、AO入試は新学習指導要領の下で「総合型選抜」と看板を掛け替えて再出発した、という歴史的経緯があります。したがって、「教科学力を評価しない」わけなどないのです。現に、総合型選抜で学力試験が実施されることは、大学教育を受けるために必要な学力を総合的に評価する観点から、文科省の通知により義務化されています。
大学側から見て、高校の評定値はもはや「基礎学力があることの証明」としてあてにならない
基礎的な教科学力の有無を測る指標の一つとして、高校の評定平均値があります。以前の別の記事で説明しましたが、これは各教科の成績(評定値:5段階)を足して割った平均値のことです。たしかに、これでもその受験生が基礎学力があるかどうかを測ることはできるでしょう。
(評定平均値についての拙記事)
しかし、上掲の記事でも少しふれましたが、この評定値は基礎学力の有無の客観的指標とはなり得ないと大学側が考えている節があります。なぜなら、下の杉浦由美子氏の記事にあるように「高校での成績をつける観点は、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」」となり、「この最後の「学びに向かう力、人間性等」の評価はどうしても教師の主観が影響してしまう」ため、客観的指標としての信頼を欠いているからです。そのため、多くの大学は「個別に基礎学力を測定する方法」を考えています。
(ダイヤモンドオンラインの杉浦由美子氏の記事)
その中で起きたのが、去年の「東洋大の学校推薦型選抜(公募制)の件」です。2025年度入試で、東洋大学が年内に学力テストを行う「学校推薦入試 基礎学力テスト型」を実施して約2万人の志願者を集め話題となりました。しかし一方で「ルール違反ではないか」という声が上がりました。これは、面接や小論文などは実施せず、学力テスト(英語・国語または英語・数学の2教科)で合否判定をするものです。また他大学との併願も可能(公募制)でした。そのため、多くの受験生が殺到しました。しかし、事実上学力試験一本の選抜であるため一般選抜と変わりなく、そうした「学力試験は翌年2月以降に一般選抜で行う」のがルールであるため、ルールから逸脱していると指摘されたのです。これにより、文科省は学長宛てに、試験日などの順守について依頼を通知することとなりました。これを受け、東洋大学は、26年度入試からはこれを「総合型選抜」に変更し、基礎学力テストと合わせて調査書などの提出書類やその他の評価方法を組み合わせて実施することとしました(※総合型選抜とし他の評価方法と共に実施すれば、ルールから逸脱したことにはならない)。
(東洋大学が学力テスト形式の「学校推薦型」の年内入試を「総合型選抜」に変更へ 高校からの推薦書は不要に)
いずれにしても、これは、大学側が高校の評定平均値をあてにしていないことを示す、一つの事例です。
大学の総合型選抜では、すでに「学力試験」や多くの出願条件を課している
以前から多くの大学は、総合型選抜で小論文や面接試験などと合わせて「学力試験」を課しています。たとえば、多くの国公立大の総合型選抜では大学入試共通テストが課されていますし、早稲田大学法学部の地域探究・貢献入試でも大学入試共通テストが課されています。また、その大学独自で基礎学力テストを行う(前述の東洋大の総合型選抜のように)ところも多いです。
また一方で「学力試験」がない総合型選抜もありますが、そうした大学も「ある一定以上の評定平均値があること」や「ある一定以上の資格スコアを有していること」を出願条件に課しているため、決して「学力試験がないから学力を見ない」ということではありません。たとえば、その資格スコアを有していることによって「ある一定の語学力が有る」と大学側は判断しているのです。
まとめ ~これからさらに総合型選抜で「教科学力」は問われてくるが、それは大学受験生にとって望ましいことではないか~
こうした傾向の中で、総合型選抜の受験を考える生徒は、総合型選抜に対して正しい認識を持つことが必要と言えるでしょう。ここまで読んでいただいた方ならわかるかとは思いますが、以前の「AO入試」や「一芸入試」のように「学力が見られない」ということではありません。これは保護者の方も注意していただきたいところです。自身の経験から以前のAO入試のイメージを総合型選抜に重ねがちですが、それは誤った認識です。「基礎的な教科学力」も十分に問われてきます。
また、そうした動きは今後ますます加速化すると思われます。少子化が進む中、大学は生き残りをかけて優秀な学生を早めに確保したいと考えるでしょう。一方で、なるべく早く合格を手にしたいと考えるため、総合型選抜を始めとする推薦系選抜の受験を希望する大学受験生が今後も増えるでしょう。その中で、総合型選抜が事実上の「大本番」となる未来が見えてきています。いまや、高校生の全体5割程度が推薦系選抜で合格しています(※国公立が約4割後半、私立が約6割)。この割合はさらに今後も増えるのではないでしょうか。
しかし、私は、大学受験の全体のスケジュールを考えればむしろこれは望ましいことだと思っています。以前もお話ししましたが、私はAO・推薦入試指導の担当者だったとき、生徒にはよく「AOや推薦に落ちることもあるのだから、一般入試のことも考えて英語や国語・数学といった教科の勉強も並行してやるように」と言っていました。しかし、受験生としてはどうしても目先のAO・推薦入試の面接や小論文の対策に入れ込み、教科の勉強がおろそかになっていました。本来の推薦系選抜受験の対策としては「一般選抜の対策も並行して行う」のがセオリーです。この記事を読んでわかったかと思いますが、総合型選抜でも学力が十分問われますので、大変ですが、一般選抜受験者と同じように教科の勉強もしっかり行うようにしてください。
追記
現に、下の読売新聞の記事のように「推薦系選抜で基礎学力を測る試験の実施を容認する方向」になっています。推薦系選抜受験者も基礎学力をしっかりつけましょう。
(大学入試、年内の学力試験実施を容認へ…面接や小論文など組み合わせ条件)
(各大学によって総合型選抜で課される出願条件や試験は異なります。自分の志望校については下のような資料などを使ってリサーチしてください。)
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