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地元を離れて都市部の中堅私大を受ける地方在住の受験生が増えたという話【大学受験】

更新日:2026/07/16

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多くの志望理由書を見て考えた「地元への固執や愛着から地元進学や就職を決めたのではないか?」という私の仮説 

 以前、下の記事を書きました。その節は、多くの方にお読みいただきました。ありがとうございます。今日はその記事の「続き」のようなお話です。

 私がこの記事を書いたのは、ここ数年の傾向として、地方在住の高校生の進学先選定として「地元志向」が強いと体感していたからでした。もちろん、これは毎年の志望理由書の添削に拠るものです。ここ最近は「地元で公務員になりたい」とか「地元の経済を活性化」させたいという動機の志望理由書をよく目にすると感じていました。

(私は、志望理由書など作文・小論文の添削指導をふだん行っている者です。なお、志望理由書に当たっては、日本のどこのエリアの高校生のも添削してます。)

 少子化で地域経済の衰退化が懸念される昨今ですから、こうした「地元愛」のある高校生が地元に近い大学を選び、また大学卒業後はその地元に残りその地域社会のために尽力したいというのは、その地域にとっても喜ばしいことですし私も個人的にはそうした高校生を大いに応援したいところです。経済力や労働資源の都市部への集中化は日本社会全体としても歓迎すべきことではありません。地域社会への貢献に寄与する若者が多いことはよいことだと私も思います。

 しかし、そうした「地元志向」の動機によって書かれた志望理由書をつぶさに読むと、私の中に少し引っかかるものがあったのも事実です。その動機自体はよいのですが、そうした動機や将来目標を持つに至った経緯を見ると、「地元愛」というよりも「現状維持」を基本とした将来像であることが多かったからです。つまり、多くの将来像を想定し比較検討した上で「やはりこの愛する地元で進学し就職したい」と積極的に選択したというよりも、「今までいた地元にこれからも居続けたい」、「今までの生活に満足しているからこれからもこの地元でそれを継続したい」という希望が前提としてあって地元の進学や就職を考えていると読みとれる志望理由書の方が圧倒的に多かったのです。それは適切な進路選択というよりも、「これからも自分が地元に居続ける」ことを盲信しているところから生じた進路であり、それは、多くの選択肢を比較検討した上でその地元に残るという進路を「選択」したとは言えないものでした。

 「地元愛」をうたって公務員として地域社会に貢献することや町おこしをして地元の経済の活性化することを将来の目標としながら、その志望理由書のどこを読んでも進学や就職に際してその地元にこだわる理由がわからなかったり、また地元の何を愛しているのかがわからなかったりする志望理由書も少なくありませんでした。長年連れ添った人やもの、長く住んだ家や地域に、その長い時間を共にしたことにより生ずる愛着を感じるのは、私にもわかります。しかし、その愛着は「地元愛」とは言いません。単にそれは長い時間を共にして離れがたい心持になっているだけのことであり、本当にその地域のよいところを知った上で愛し「だからこそ今ある問題点を解消しその地域の社会や文化を後世に残したい」という思いとは少し異なります。なぜなら、そうした心持ならば、もしかりに志望理由書を書いた生徒が今いるところではない別の地域に生まれそこに長く住んで育っていったら、その別の地域に愛着を持っていたはずだからです。だとするなら、その生徒にとっての地元は東京だろうが大阪だろうが福岡だろうがどこでもよくそれは「要はその生徒がどこに生まれ育ったかに因って変わる話」と言えるわけで、それを「地元愛」と呼ぶのは少し違います。

 この仮説が正しいという前提に立って言うならば、そうした考えは本来の進路選択から見て「順序が逆」と言えます。つまり、あらゆる将来の可能性を考えて地元で進学や就職を決めたのではなく、地元に残ることを既定事項とした、それを前提とした進路決定だったというわけです。そして、そうであるとするなら、自分の将来的可能性をあらかじめ地元限定にしたことで無自覚的に狭めていると考えられます。「将来こうしたいから地元に残ることを選んだ」のではなく、それは「地元に残ることを前提とした場合私が地元で将来できることはこういうことだ」という思考過程を経ていると言えるからです。それは自分の可能性を狭め選択肢をあらかじめ限定しているとも言えます。

 こうした考えが上掲の拙記事を書いた動機です。だとしたらそれはあまりにももったいない、地元を離れることも含めて進学の選択肢を多く提示した上で進学先や将来の目標を決めてほしいと考えたのでした。

地元進学に固執せざるを得なかったコロナ禍とその束縛から解き放たれたコロナ禍以降

 しかし、下の産経新聞の記事を見て、「あーそうか」と合点しました。あのかつて多くの志望理由書の中に見えた「盲信的な地元へのこだわり」はコロナ禍によって植え付けられたものだったのです。私の中で遠い昔のことのようになっていてすっかり忘れていましたが、あの当時、たしかに他の地域への移動は制限されていました。これは、その「コロナ禍の生活様式の残滓」でもあったわけです。だとすると、私の仮説は一部間違えていたのかもしれません。それは個人の地元に対する固執や愛着の問題だけでなく、コロナ禍に身につけさせられた生活様式やその考えが背景にあった問題でもあったとも言えるからです。振り返れば、今高3生の子は小6のときにコロナ禍だったわけですから、そうした幼少期の生活で身につけたものの影響が色濃いわけです。そして、それよりも年齢が上の子は中高生のときコロナ禍だったりします。その影響はばちばちに受けているはずです。そんな彼らにとって「地元に残る」ことが否応なく既定事項になっていたわけで、そうした世代の子たちが書く志望理由書で「地元志向が強い」のは当たり前だったと言えるのかもしれません。

 ですが、上の記事ではこの「5年間で地元を離れ都市に向かう受験生が激増」したことを報じています。なお、これはあくまで私立大受験に対するものであり大学受験全体の傾向ではないことに注意する必要があります。

 大手予備校「河合塾」が行った令和8年春の受験生の追跡調査によると、私立大入試では地方の受験生たちが、首都圏や近畿といった都市部の大学を目指す傾向が強まっていることが分かった。

コロナ禍後に変わる受験地図、5年間で地元離れ都市へ向かう受験生が激増 受難の地方私学(産経新聞)

 ここで国公立が問題とされないのは、医学部など一部の学部を除いて基本「国公立受験は基本的に『地元志向』だから」ということに拠るのだと思います。コロナ禍などの社会情勢に関係なく今も昔も「その住んでいる地域の国公立を受けることが多い」はずです。ここでは、私立大、とりわけ都市部の中堅私立大を地方から目指す傾向が強まったことをトピックとしています。ただし、都市部と言っても全ての地域の子が首都圏・東京の大学を受けるのではありません。各地域にある大都市圏にある大学に受験生が流れやすいということです。

 例えば、中国・四国地区の受験生の場合、令和4(2022)年には39%が近畿の大学を受験。37%が地元中国・四国の大学を受けていたが、今春の8年入試では47%が近畿の大学を受験、地元中国・四国の大学は30%にとどまっているという。

コロナ禍後に変わる受験地図、5年間で地元離れ都市へ向かう受験生が激増 受難の地方私学(産経新聞)

 たとえば、中国・四国地区の受験生は、コロナ禍以前から近畿の都市部の大学を受験することが多かったです。このように、基本的に、受験生は近隣の地域の都市部に流れるのがセオリーです。

 また、北陸地区では4年には34%だった近畿の大学を受ける受験生が8年には42%に急上昇。首都圏の大学の受験生も4年の24%から8年の27%と増えている。これに対し、地元北陸の大学を受ける受験生は4年の29%から8年の22%と減少している。

コロナ禍後に変わる受験地図、5年間で地元離れ都市へ向かう受験生が激増 受難の地方私学(産経新聞)

 北陸地区の受験生はこれまた昔から近畿圏に流れることが多いです。ただし北陸新幹線の開通などに伴い、首都圏に流れる生徒も増えてきそうです。なお、こういうのはその時代時代の交通事情の変化によっても変わります。つまり、「受験しに行きやすいかどうか」でも変わります。

北海道地区、東北地区では首都圏の大学を受験する割合が年々増加。地元の大学の受験者が減っているという。

コロナ禍後に変わる受験地図、5年間で地元離れ都市へ向かう受験生が激増 受難の地方私学(産経新聞)

 これまた、北海道や東北の受験生は首都圏(関東圏)に向かうことが多いです。このようにして近隣の地区にある都市部に流れる傾向が強いのです。ただし、北海道エリアは東北エリアに比べては地元の大学を受験する傾向が強いです(北海道エリアの中に大中都市部があり、そこにはそれなりの数の大学があるため)。

 もちろんその一方で、コロナ禍前からもともと地元志向が強い地域と言うのがあります。それは九州と東海(中京)です。

 一方で、地元志向が強いのが、東海地区と九州地区だ。地元受験率はそれぞれ63%、68%の高い比率を維持している。ともに名古屋や福岡という大都市があり、受け皿となる大学が一定数あることが要因となっているとみられる。

コロナ禍後に変わる受験地図、5年間で地元離れ都市へ向かう受験生が激増 受難の地方私学(産経新聞)

 この記事にもある通り、その理由は、その地域内に受け皿になる、それなりに大きい都市部があるからだと言えます。ただし、これは記事にないですが、東海(中京)の場合、エリアが東西に長いので県によって若干事情が異なります。たとえば静岡の受験生は首都圏に出やすいですが、三重の受験生は愛知にも行きますが近畿圏にも出やすいです。あくまで傾向としてですが。あとこれも記事にないですが、沖縄の受験生は、九州圏、近畿圏、首都圏にばらけます。飛行機使う時点でどのエリアも行く手間はほぼ同じだからです(旅行費は変わりますが)。

 こうやって記事を見ると、コロナ禍以前の大学受験の状況にほぼ戻ったと言えます。しかしこの記事が問題としているのはそこではなく、都市部の中堅私大を地方から目指す動きが目立っている点です。記事にもありますが、地方の受験生が都市部の難関大を目指すのは珍しいことではないですからね。特筆する点はそれが中堅私大でも著しいということでしょう。ですから、都市部に住んでいて都市部の中堅私大を受ける人は例年に比べて難化が予測されるので注意が必要と言えます。

どこを受けるのであれ自分の将来の可能性や目標を前提に志望校は決めてほしい

 このこと自体は、都市部への若者の流入自体は地域経済の減退につながるため手放しで喜ぶことはできないものの、大学受験としては私はよい傾向だと考えています。先に挙げた拙記事でも言いましたが、自分の住んでいる地元にこだわることで自身の将来の可能性を狭めることになってはもったいないことになるからです。地元でも都市部でも、どこを受けるにしても、まずは自身の将来の可能性や目標を前提に志望校は決めてほしいと志望理由書の添削指導をしている立場からは思っています。ただ、都市部の中堅私大を受ける生徒(年内入試にしても一般選抜にしても)はちょっと注意しておいて方がよさそうですね。

 なお、都市部への若者の流入と先ほど言いましたが、もし地元を離れて都市部の大学に行ったとしても「やはり地元で就職したいな」と思ったら就職を機に地元に帰ってもいいと思います。私の大学時代の同級生でもいましたが、いわゆる「Uターン就職」も一つの選択肢ではあります。ですから、本当に地元の経済の振興やその地域の社会の活性化にかかわりたいのなら、「こういうことを勉強するために都市部のこの大学を志望するが、卒業後はその学びを生かして地元の経済に貢献したいと考えているため、将来は地元に戻ってそこで起業したい」という志望理由も当然成り立つとは思います。

(引用資料)

産経ニュース(産経新聞)


(こうした本なども活用して、志望校や進路の選択は多角的に行ってほしいと思います)


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