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「今住んでいる地元」が将来の進路選択とその実現可能性に影響するかもしれないという話【大学受験】

更新日:2026/07/16


小中高は地元進学が当たり前だが大学進学では当たり前ではない

 私は、今は一介の添削指導講師です。しかし、以前学習塾や予備校に勤務していたときは、生徒に進路や志望校の選択の話をする際によく言っていたことが私にはありました。それは、「大学受験は全国大会」ということです。これはどういうことかというと、「大学受験とは全国の受験生との戦いなのだ」ということです。つまり、大学受験は地元の勉強ができる奴との戦いだけではなくて全国の猛者(もさ)との戦いなのです。まさに、全国の大学受験生がストリートファイターばりに「オレより強いやつに会いに行く!」と言わんばかりに全国各地の大学受験会場に「参戦」してくるものなのです。これについて「いやいや、そんなの当たり前じゃないか」と大人の方は思われることでしょう。しかし、意外と多くの高校生(大学受験生)にはこの意識が欠けています。ですから、かつて私はまずこういう話を生徒にしていました。

 でも、なぜそうした意識が欠けているのでしょうか?それは彼ら高校生にとって今まで「進学では『地元進学』が当たり前だった」からです。多くの高校生にとって、今まで小中高と常に「地元進学」だったと思います。ですから、教室で席を並べる同級生はいずれも自分と同じ地元の子が多かったはずです。ですが、大学では違います。隣の席で講義を受ける学生が自分が訪れたこともない遠くの地域の出身の人間であることなんてざらにあります。このことは頭ではわかっているのでしょうが実際の体験としてないため、大学受験初体験の高校生は大学進学に対しても小中高と同じ地元進学の感覚でとらえてしまうことが多いのです。

 こうした認識のずれによって生じる受験勉強でのデメリットは、大きく分けて二つあります。一つは志望校の選択についてです。「無意識的に地元で通学することを想定している」ため、家から近い、地元にある大学しか志望校候補として考えておらず、結果志望校の選定において「ミスマッチ」が起こりやすいのです。自分のトータルの学力や偏差値、得意教科などを考えた上で全国の大学を視野に入れて志望校を考えれば「自分がより有利に戦える大学」はもっと他に多くあるのに、地元に限定して考えているためそうした大学が志望校候補としてあがってきません。もちろん自分の学力を高めることが先決ですが、地元以外で、入試科目や試験方法で自分が有利に戦える大学が他にあるのなら、「受験戦略上は」その大学を受けた方がよいと言えるでしょう。

 もう一つは、これは志望校の選択とも連動していることですが進路選択についてです。地元にある大学に通うことを前提として将来進路を考えてしまうため、自らで将来の可能性を狭めてしまうことがあり得ます。もしかしたら自分の適性や資質に合った職業や自分の興味や関心により近い学びにつながる大学が全国にはより多くあるかもしれないのに、地元進学のみで考えていると「地元にあるその大学でなれるもの」からしか自分の将来の夢や目標を考えていないということになりかねません。これは、その先の将来のことを考えると少し残念なことです。

 もちろん地元を離れて遠くにある大学に進学するということは、「一人暮らしをする」ことになることが多いです。ですから、そうした家計にかかる経済的負担を考慮してあえて「地元で進学できる大学を探している」という生徒も多くいるかとは思います。しかし、もしそうした負担が自身の家庭で多少なりとも許されるのならば、志望校や進路の選択は地元にこだわらずもう少し視野を広げて考えてみてもいいかもしれません。

「住んでいる地元」が環境要因としてあなたの志望校・進路選択やその実現可能性に与える影響

 ここに、こういう記事とデータがあります。

(【大学受験】地元進学の多い都道府県1位は愛知…旺文社)

 「旺文社は2026年1月30日、「2025年度 都道府県別 大学・短大進学状況」を公表した。地元の大学進学率は全国平均で45.4%。都道府県別では、1位が愛知県(72.5%)、2位が東京都(69.8%)であった。」

 この地元の大学進学率を多いと思うか少ないと思うかはその人の感じ方によりますが、いずれにしても地元の大学への進学を決めた人は半分もいません(※平均値)。半分以上は地元から離れて大学に進学しています。このように、大学進学においては地元進学は当たり前ではありません。

 1位が愛知県で2位が東京都というのは私にとっては少し意外だったのですが、しかし実際はそんなに差の開きはありません。このあとは「福岡県(65.9%)、北海道(65.6%)、大阪府(61.3%)」と続くのですが、総じて多少の差はあれど、「地元の大学に進学した人の多くはこうした大都市圏に住んでいる人である」ということがここからわかります。

 一方、「鳥取県(15.1%)や奈良県(15.1%)などは、8割以上の受験生が県外の大学へ進学」しているとのこと。いずれも大都市圏に属さない地域の人は地元から離れて大学に進学していることがわかります。細かいランキング順位はともかく、「大都市圏に住む人は地元の大学に進学することが多く、それ以外の地域の人は地元から離れた大学に進学することが多い」ということとして見るとこの結果はうなずけます。首都圏の中心である東京都は言うまでもなく、中京圏の中心である愛知県、九州圏の中心である福岡県、近畿・関西圏の中心である大阪府はいずれも人口が多くそれに応じて大学の数も多いです。北海道はエリアそのものが大きくその中に札幌や旭川、函館などの大中都市があるため北海道の中での進学が多いのだと思います。対して、鳥取県は人口が少ない県です。また奈良県のように大阪府や京都府などの大都市圏が近くにあると、奈良県内にこだわらずそちらに進学することが多いのでしょう。これは東京都の周りにある神奈川県や埼玉県、千葉県なども似た状況にあると言えます。

 いずれにしても高校生のみなさんはこのデータを見てどう思いますか?大学進学においては地元進学が全く当たり前ではないということがわかるはずです。また、生まれた、今住んでいる地域によって、志望校や進路の選択に対する向かい方を変える必要があるということもわかるでしょう。つまり、志望校や進路の選択にとって「住んでいる地元」が大きな環境要因になるのです。

 たとえば、あなたが「医師になりたいと考えている鳥取県在住の高校生」だとしましょう。医師になるには医学部に行く必要があります。では、あなたが「地元で通える医学部」を選ぶとしたら、その「選択肢」はどのくらいあるでしょうか?

鳥取大学

 鳥取大一択です。あなたが地元で医師になることにこだわるならば、この一択以外あり得ません。私立はありません。国立1校のみです。もちろん国立ですから、国立大学医学部の中では決して偏差値ランキングが上の方ではありませんが当然医学部ですから合格は相応に難しいと言えます。しかも、この大学、鳥取県以外に住んでいる受験生も多く受けに来ます(偏差値ランキングから見ると比較的受けやすい国立大医学部であるため)。どうですか?地元のみにこだわるとなかなか厳しい戦いになりそうです。

 一方、あなたが「医師になりたいと考えている東京都在住の高校生」だとしましょう。では、そんなあなたが地元で通える医学部を探すとすると、どれだけの選択肢があるでしょう?

〈国立大学〉
東京大学
東京科学大学(旧東京医科歯科大学)

〈私立大学〉
慶應義塾大学
東京慈恵会医科大学
順天堂大学
日本医科大学
昭和医科大学(旧昭和大学)
東京医科大学
東邦大学
日本大学
杏林大学
帝京大学
東京女子医科大学

 国立2校、私立11校の計13校あります。これに、通える範囲の近隣の県などを考えると聖マリアンナ医科大学や横浜市立大学、北里大学、東海大学(ここまで神奈川県)、埼玉医科大学、防衛医科大学校(ここまで埼玉県)、国際医療福祉大学、千葉大学(ここまで千葉県)などを加えることもできますから、より多くの選択肢があることがわかります(注:もちろん東京のどこに住んでいるかにもよりますから、東京にお住まいでもこれらの大学が全て通学可能とは一口には言えません)。地元が大都市であるということはこういうことであり、また「地元で大学進学をする」というのはこのように(人口に応じて)大学が多いから可能であることなのです。

 ここではわかりやすく医学部を例に挙げましたが、もちろんその大学や学部に受かる十分な学力が備わっていなければ全く意味がありません。いくら東京に住んでいても受験勉強をしっかりやっていなかったらこの「多くの選択肢」を活かすことができずにどこも合格できないでしょう。また、鳥取に住んでいてもしっかり受験対策を行い学力を養っていれば地元の医学部に合格することは可能です。ですから、これは「鳥取の子より東京の子の方が大学受験で有利になる」ということを言いたいのではありません。そうではなく、東京のような大都市圏以外のところに住んでいる生徒は「志望校や進路選択において『地元進学へのこだわり』を捨てる必要もときにはある」と言いたいのです。そうでないと、自分の志望や将来進路を泣く泣くあきらめるということにもなりかねないからです。地元の大学にこだわるがあまり自分が将来なりたいものをあきらめるという選択になってしまったら、それはとても残念に思います。

地元の大学だけにこだわらない広い視野で自分の将来進路を考えるのもときには必要

 これを読んでいる大都市以外に住んでいる大学受験生は「(大都市の子たちが)うらやましい」、「ずるい」と思ってしまったかもしれません。大都市の子たちは多くの大学が周りにあって特段深く考えなくても地元に残れる可能性が高いかもしれない、一方で自分たちの地元には大学が少なく自分が将来なりたいものを目指すには地元を離れることも考えなければならない……「自分たちは損をしている」、「そんなの理不尽だ」って思うかもしれません。

 でも、現実的に人生ってそういうものでもあるんです。それもまた、みなさんが大人になる前に、大学受験の経験を通して学んでほしいと私はふだんから思っています。

 ドイツの哲学者、マルティン・ハイデガーなどの実存主義の哲学者は、人間は「投企する」存在だと言いました。人間とはその置かれたところで自己の可能性を未来に投げかけて主体的に自己実現をする(投企する)存在だと考えたのです。そして、それが「生きる」ということだと言います。たとえばあなたがこの令和の時代の日本のその今いる場所に生を受けて今生活しているそのご家庭に生まれたことは、過去のあなた自身がどうにも変えることができないものです(被投性)。今あなたはその状況からあなたの人生をはじめていくしかなく、これは全ての人間がそうなのです。

 そこで、「東京に住んでいる高校生はうらやましいな」とか「あそこの家庭の子は経済的に裕福でいいな」とか比較してもどうしようもありません。あなたはあなたでその今いるその場所や状況の中で将来目標を立ててそれを実現するにはどうしたらいいのかを考えて、その中で自分の可能性が未来で花開くように取り組むしかありません。そこはそういうものだと割り切り「その目標実現に向けて自分のやれること」を考えて取り組む他ないのです。

 ただそのとき、「医者になりたかったけど、地元には医学部が一つしかないからその夢はあきらめよう」とはなってほしくありません。それはたしかに、他の高校生に比べて受験を厳しいものにする外部要因ではありますが、それを理由に「自分の可能性」を狭めてほしくはないと私は思っています。被投性の外部要因はどんな人にも何らかのかたちであるものです。そうした要因によってたしかにあなたにとっての大学受験の難易度も変わるかもしれません。でも、「その受験の難度が高いこと」と「あなたが実際その大学に合格できるかどうか」との間には実は因果関係はありません。「その環境下で目標達成に向けてどのように取り組んできたか」、それのみが「あなたが合格する未来を実現するかどうか」ということと直接因果関係のあることなのです。ですから、もしあなたの状況から見てそれが必要であると考えまたあなたの状況がそれを許すならば、地元以外の大学も志望校候補に加えてみることを私はおすすめしたいと思っています。

〈引用記事〉

リセマム


(こうした本なども活用して、志望校や進路の選択は多角的に行ってほしいと思います)


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