夏休み特集:スタッフが取り組む「大人の自由研究」
今週はお盆休みという方も多いかと思いますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。前回の記事では夏休み特集ということで小学生に参考にして欲しい図工の宿題のアイデアをまとめました。
今回は夏休み特集の第2弾ということで、シフカのスタッフが仕事以外で取り組んでいることを「大人の自由研究」に見立てて話を聞いてみます。興味を持つ分野は人それぞれですので、こういう機会でなければ知らないまま…という世界のお話が聞けるかもしれませんよ。
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大人の自由研究①:自作のイヤホン
最初に話を聞いたデザイナー氏は、これまでも長い時間をかけて取り組んできた「自作のイヤホン」をこの夏に完成させたいと意気込みを語ってくれました。
この自作のイヤホンに関する話は以前も記事にしたことがあります。
イヤホン作りと言っても色々ある
イヤホンを自作する、いわゆる「イヤホンDIY」の世界でもその形は色々あるそうです。
最も手軽なのはイヤホン作りを体験するイベントに参加すること。国内のイヤホンメーカーが主催することも多く、例えばMAKEシリーズを展開するfinalというメーカーが定期的に開催しています。
イベントではイヤホンの外側部分にあたる「シェル」、その内側に入るドライバー(スピーカー)やフィルター等のパーツが用意されており、それを組み立てることでお手軽に「好みの音」のイヤホンを作ることができます。スタッフが丁寧にレクチャーしてくれるそうで、まさにイヤホンDIY界の入り口ですね。
既存のパーツを組み合わせるだけでは満足できなくなると、自分専用のイヤホンが欲しくなります。つまりイヤホンのオーダーメイドですね。自分の「耳型」を取り、それにフィットする形状にすることで正に自分専用のイヤホンになるのです。耳型は専門のお店で取ってもらうのが一般的。こうして作られるイヤホンは「カスタムIEM」と呼ばれ、アーティストがライブをするときや、エンジニアが音響チェックをするときなど、音にこだわる場面で使われます。
更にこだわりたい人はイヤホンの形状そのものを自分で作り、その型を取って中にドライバーを入れた上で医療用のレジンを流しこむといった、完全自作の道へ進むそうです。話を聞いたデザイナー氏が取り組んでいるのはこの完全自作のイヤホンです。
なぜイヤホンを自作するのか
なぜイヤホンの自作に取り組むようになったのでしょうか。
完全自作のイヤホン作りにハマった人たちの中には、自作の技を極めたことでイヤホンを販売する会社にした人もいるそうです。デザイナー氏もそういった姿を見て自作に興味を持ったのですが、初めの頃は正直なところイヤホン作りを少しナメていました。構成部品も多くないので「中と外が揃えばいい音が出るだろう」と考えていたのです。
しかし、これが実際にやってみると奥が深い。耳からドライバーまでの0.1mm、音導管の太さが0.1mm違うだけで音が全く変わってしまうことに衝撃を受けます。それからは調べては試すことを繰り返して知識を増やしていきました。
そして知識を得た状態で市販品を聞くと多くの気づきがあったのです。なるほど、だからこうなっているのか、これは凄い、これを自分で作ることができたら満足感が凄そうだ。そんな思いから自作イヤホンの魅力に取り憑かれたのだそうです。
目指せユニバーサル
イヤホンを自作するにあたり、いま興味があるのは「ユニバーサル」形状だとのこと。完全に自分専用のイヤホンを作る「カスタム」に対して、多くの人にフィットするのが「ユニバーサル」。
イヤホンではその先端についているゴムのイヤーピースも大事ですが、市販されているイヤーピースやケーブルが使えないとユニバーサルとは言えないそうです。その分だけ自作のハードルが高くなるため、イヤホンDIY界隈の流れとしてはカスタムを作るのが先で、ユニバーサルのほうが後に来るイメージなんだとか。
その自作イヤホンですが、今は誰の耳にもフィットし聞きやすい形状を目指してパテなどで微調整をしているところ。納得できる形状になりつつあるので、あとは見た目をどんなデザインにするか検討をしています。
ユニバーサルを目指していることもあり、見た目も自作には見えないようにしたいとのこと。イヤホンのデザインを決定づけるフェイスプレートにカーボンシートや螺鈿シートなどを使うと綺麗なのですが、どうしても自作っぽさが出てしまいます。そこでメーカーが使うような素材をずっと探していたところ、DIYに特化したサイトEtsyで希望に合う素材が見つかり、テンションが高くなっているのだそうです。
今後の取り組み
自画自賛だと前置きしつつ、音が出る部分については市販品レベルまで持ってこられたそうです。それでもまだ素人レベルの域を出ていないというのが今の自己評価。
今回の経験の中でパーツ類の知見が得られるので、それを活かしてやがては量産して世に出したいという目標があるそうです。そのためにもまず完成させることが大事なので、この夏も時間を見つけては取り組みを続けると語ってくれました。
なんとも夢のある話ですが、実際に自分の手でモノを既に作り上げているので、もう夢ではなくすぐそこまで来ている未来なのかもしれませんね。

中:3種のドライバーを組み込み、出音の調整をしています
右:フタをして最終チェックの段階です
大人の自由研究②:カポエイラ
次に話を聞いた別のデザイナー氏からは、自分が通っているカポエイラ教室での取り組みを聞くことが出来ました。
格闘技というよりは自分の内面との語らい
皆さんはカポエイラをご存知でしょうか。格闘技の一種として聞いたことはあるものの、詳しくはわからないという方も多いかもしれません。カポエイラは格闘技でもありダンスでもあるブラジルの文化で、2014年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。
そんなカポエイラに、デザイナー氏が通う教室では自分の身体性の内面と向き合うマインドフルネス的な感覚で取り組んでいるそうです。どういうことなのか、具体的な内容を聞いてみましょう。
頭を使って体を動かす
まずはシンプルな姿勢と動きをいくつか習います。例えば、四股みたいな立ち方の姿勢から片手を床に付けるとか、爪先立ちでしゃがんで手を後ろの床につく姿勢からそのまま足を前に出すといった動きです。普段の生活ではしないような動きなので、体の普段使わない部分を使うことになります。
更に、こういった動き同士を組み合わせて動き続けます。慣れない動きを連続させるには意識して体を動かす必要があります。次にどこをどう動かす? どう足を出せば上手く回れる? この型から次の型に行くにはこのタイミングで足を入れ替えないとダメだ。
このような感じで自分の身体感覚と向き合い、体と対話しながら動かすのです。体の部位を意識することで動きも変わってくるのが分かります。こう意識するとこう変わるのか…と自分の体ながら毎回発見があるそうです。

ホーダとジョーゴ
カポエイラは格闘技ですので、教室で組手のようなこともします。初心者ということもあり、4つの蹴りを基本として相手の動きに合わせて技を繰り出すイメージです。蹴りなどは実際には当たらないように止めます。
カポエイラの世界ではホーダとジョーゴという言葉があり、人々の輪の中で音楽に合わせてカポエイラを行うことをホーダ、ホーダの中で二人のカポエイラ使いが技を出し合う組手のことをジョーゴと言うそうです。タイコを叩き弓の弦を弾いて奏でられるリズムに乗ってアクロバットな技を出し合うジョーゴは、一種のコミュニケーション、掛け合いの側面があるのだとか。
教室での組手でも相手の動きに合わせて効果的な技を繰り出す駆け引きの面があり、相手の次の動きを考えつつ瞬間的な判断が要るので、ここでも頭を使います。カポエイラは、自分の体を思い通りに動かすという究極のアナログでありながら、頭を使うクリエイティブな面も持っていたのでした。
カポエイラとの出会い
なぜカポエイラを習い始めたのでしょうか。体を動かしたい息子さんのために、そういった場を探したら近所にカポエイラ教室がありました。興味が湧いたので行ってみたところ大人のクラスもあり、子供と一緒にカポエイラが出来たら最高だとの思いもあって当人もチャレンジしてみたのでした。
実際に参加してみると、最初は頭がパニックになったとか。普段と全く異なる動きなので、懸命に考えないと動けなかったのです。それでも何度か通ううちに少しずつ慣れていきました。こうしてカポエイラの教室に週1回のペースで通い始めて1年、実際には多忙にて通えてない時期もあったので実質半年といたところでしょうか。
通っている教室は、大きな団体に所属していた先生が開いた町道場。先生の教え方は「カポエイラは本来自由なものだから自由にやろうよ」「規律を気にして余計な力が入るとかえって怪我につながるので、のびのびやろうよ」という感じだそう。
その精神性に共感したのも通うことにした理由の一つ。デザイナー氏の家の方針にも合っていたようで、お子さんも楽しんで通い続けているそうです。
想定以上の効果が
カポエイラに取り組むようになって起きた変化について聞いてみました。
週末の教室で普段しない動きをすることは「動的マッサージ」とも言えるもので、一週間のデスクワークで凝り固まった体をほぐすのに効果的。寝ている状態でやってもらう通常のマッサージとは全く違う感覚なんだとか。
またストレッチ続けるうちに柔軟性が上がり、悩みだった股関節痛が改善したそうです。高く上がらなかった腕も上げられるようになり、五十肩が治ったのだと語ってくれました。姿勢も良くなり、椅子の座り方まで変わったとのこと。今後も続けると更に健康になってしまいそうですね。
今後も通い続けて、逆立ちブリッジや180度開脚もできるようになりたいと語ってくれました。息子さんも体の柔軟性が爆上がりして先生も引くほどだそうで、想定以上の効果があったようです。
親子でジョーゴを楽しむようになるのもそう遠くないようですね。

大人の自由研究③:書道
最後のイラストレーター氏には、取り組んでいる「書道」についての話を聞きました。
上野の東京都美術館で先日開かれた書の展示会に自身も出品しており、これまでその作品づくりに注力していたそうです。そこで早速、実際の作品を書くときの流れを教えてもらいました。
作品を書くときの流れ
展示会が開かれるのは夏ですが、そこに出品する作品作りは半年以上前の年明けの頃から既にスタートしているそうです。最初に決めるのは「どんな書体で書くのか」と「どんなジャンルを書くのか」。
自分が得意な書体を軸に、過去の作品を見て「こういうのを書きたい」という感じで決めるのだとか。ジャンルについては中国の古典などから引用することが多いそうです。手本は何十ページにもなるので、どこを抜粋するかも作品の重要なポイントになります。
書く内容を決めたら、テスト的に小さな半紙に六文字くらい書いてみるそうです。本番ではかなり大きな用紙を使うので、書く文字数も多くなります。そこで何文字で何枚の紙になるのかを計算するフェーズもあるのだとか。その計算を元にシミュレーションを繰り返します。
シミュレーションは1/4のサイズで仮の作品を作ってみることが多いのだそうです。こういった準備の結果、文面が入り切らない場合には例えば文字を長体にするなどの調整を行います。
ただし、どんなに入念に準備をしても想定外は起きるもの。今回の作品づくりでも計算違いが起きてしまったとか。先生と一緒に計算したのですが、本番になって入り切らないことが判明したのだそうです。そこで慌てず、名前を書く代わりに印で仕上げたのでした。
作品を鑑賞してみよう
出来上がった作品を見せてもらいましょう。

写真で見ると分かりづらいのですが、上下2枚を貼った紙のサイズはかなり大きく、縦は272cmもあるそうです。実際に人が前に立つとこんな感じになるとか。

元が意味のある文章なので同じ文字が連続することも有り得ます。そんなとき、連続する片方の文字を別の字体に変える調整をするそうです。例えば作品の2枚めの中央近くにある「冥冥」がそう。
確かに2つある文字の形がそれぞれ違いますね。ちなみに同じ文字が連続する場合には文脈を見た上で1文字を飛ばしてしまうこともあるのだとか。書はアートなので正しい文章より見た目を優先する場合もあるとのことでした。
また作品1枚めの上端に雨かんむりの2文字が隣り合って並んでいますが、こういった場合も雨かんむりの形を変えているとのこと。

想像していた以上に一文字一文字のバランスを考慮して緻密に表現されていることを知りました。ただ漫然と見るだけではわからない機微があるのですね。
ステレオタイプとは違う
自分が詳しく知らない分野に対しては、どうにも勝手に作り上げたイメージを持ちがちです。書道についても、例えば作品を書き始める前に瞑想みたいなルーチンがあるのではないかと思っていました。しかしイラストレーター氏自身はそのようなルーチンはしていないそうです。
作品を書く際は用紙が大きいので自宅ではなく大きな机のある教室を使うため、他の教室で書く生徒の子どもたちの賑やかな声が響く中で書いているとのことでした。それでも作品に集中し始めると周囲の音も聞こえなくなるので問題ないそうで、そこは想像したとおりの書道家の集中力です。
作品は用紙1枚につきおよそ2時間くらいかけて一気に書きます。別の日にも同じ部分を書いて、より良い方を選びます。それを繰り返してベストな仕上がりのものを作品にするのです。
書道を嗜む方は筆へ強いこだわりがあると思っていましたが、イラストレーター氏自身は筆にそれほどこだわりはないそうです。その一方で「紙」は気に入ったものがあり、それが困ったことにとても高価なのだとか。
書き損じてしまうと「250円が飛んでいく…」と悲しい気持ちになるのだそう。それでも墨の吸い心地が素晴らしく、安価な紙だと筆が滑るような違和感を感じてしまうこともあり、その紙以外は考えられないとのことでした。
取り組むきっかけと今後の取り組み
書道を始めたのは小学校三年生のとき。きっかけは習い事でよくあるパターンですが友達がやっていたから。続ける中で思ったよりお金がかかってしまう事情もあり高校生のときに辞めようと思ったのですが、師範の試験の受かったこともあって結局は続けました。
仕事に就いてからは自分のお金が自由に使えるようになったので余裕が持てるようになりました。書のほうも自由の幅が広がってきたことで好きなものを書けるようになり、今はとても楽しいそうです。
今後の取り組みですが、近いうちに昇段試験があるのでそれに向けて練習をするとのこと。楷書や行書は苦手なのですが試験に必要なので頑張るしかないと話してくれました。
今回紹介した作品も展示される展示会が千葉県船橋市で開催されるそうです。読者の方も興味があれば訪れてみてはいかがでしょうか。

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いかがでしょうか。今回紹介したどの事例も、自分が興味のある分野に飛び込み、それを突き詰めてみることの楽しさを思い起こさせてくれました。
大人の自由研究と題しましたが、自由な研究なのですから「夏だから」「宿題だから」「小学生だから」やるのではなく、興味が湧いたら大人も子供も好きなときに好きようにやれば良いはず。
これからもチャレンジの原動力となる好奇心を大切に、楽しく研究していきましょう!
