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部下成長#2「動物園みたい」と言われた営業所― でも、それは“いい組織”の証だった ―

信頼関係の構築

ー ラポールを築く関係づくりー

「しゅうくろうさんは、動物園の園長ですね」

ある日、他部署のリーダーからそう言われたことがあります。
実は、似たようなことを言われたのは一度ではありません。
そう言われたとき、
正直、少し複雑な気持ちになりました。

でも今なら、はっきり言えます。

それは、いい組織だったからです。

私の組織は、とにかく「にぎやか」でした。

メンバーそれぞれの個性がよく出ていて、
雑談も多く、笑いもあり、でも仕事の話になると真剣に議論する。

外から見ると、まるで動物園のように見えていたのだと思います。

ただ一つだけ、はっきり言えることがあります。それは成果は出ていました。
私はこれまで、5つの部署でリーダーをしてきました。
その中で確信したことがあります。
それは、人は「正しい環境」ではなく、「安心できる環境」で動き出すということです。


ここでは、4つの軸の1つである

「信頼関係 ー ラポールを築く関係づくり」

について、少し深く書いていきます。

これは、部下の成長において
すべての土台になるものです。


私がいたある営業所での話です。

私が赴任した当初、その営業所はどこか殺伐としていて、
全体的にピリピリした空気が流れていました。

メンバー同士の会話も少なく、
必要最低限のやり取りだけで仕事が進んでいるような状態でした。


そんな中、ある1人のメンバーがいました。

最初に会ったときの印象は、正直に言うと「かなり暗い」。

周囲のメンバーに対してもどこか距離があり、
発言も否定的なものが多い状態でした。

「この人は、まだ組織を信じていないんだろうな」

そんなふうに感じていました。

しかし、時間が経つにつれて少しずつ変化が起きます。

雑談をしたり、話を聞いたり、
関わりを重ねる中で、徐々にその人は自分を出すようになっていきました。

そして気づけば、

自分から周囲に話しかけるようになり、
積極的にコミュニケーションを取るようになっていきました。

さらに数年後。

そのメンバーは、営業所の中心的な存在になっていました。


また、別のメンバーの話です。

その人は、自ら「営業所のNo.2」と名乗るほど主体性が強く、
周囲とのコミュニケーションも非常に積極的でした。

後輩の育成にも関わりながら、
組織全体を良くしようと動いており、

時にはリーダーである私に対しても、
改善提案や意見をしっかりと伝えてくる存在でした。


この2人に共通していたのは、

「自分を出せている」こと

でした。

そして、それは2人だけではありません。

最初は静かだった組織も、少しずつ変わっていき、

  • 自分の意見を言う

  • お互いに助け合う

  • 組織を良くしようと考える

そんな状態が、自然と生まれていきました。


私はこれこそが、

ラポール(信頼関係)ができている状態

だと思っています。

安心して話せる。
否定されないと分かっている。
自分の考えを出してもいいと感じられる。

そうした状態があるからこそ、

人は本来の力を発揮し始めます。

結果として、その営業所は

明るく、にぎやかで、活気のある組織になりました。

そしてそれが、
「動物園のようだ」と言われる理由だったのだと思います。


ラポールを築くために、私が意識していたこと

ここまで読んでいただいて、こう思った方もいるかもしれません。

「信頼関係が大事なのは分かる。でも、具体的にはどうすればいいのか?」

ここからは、私が実際に現場で意識していたことを、少し具体的に書いてみます。


① 雑談は「ムダ」ではなく、土台になる

ピリピリしていて、みんなが黙々と仕事をしている組織。
そういう職場を見たことがある方も多いと思います。

そういう組織では、不思議とリーダー自身も余裕がなく、
どこか張り詰めた空気をまとっていることが多いように感じます。

私自身も、そういう環境にいたことがあります。

そのときに感じたのは、
メンバーが「仕事」ではなく「リーダーの顔色」を見ているという状態でした。

本来向くべき方向が、お客様や成果ではなく、
リーダーに向いてしまっているのです。

だからこそ、私はあえて雑談を大切にしていました。

雑談をすることで、場の空気がほぐれる。
メンバーの表情が柔らかくなる。

そして、少しずつ「この場は安心していい場所なんだ」と感じてもらえるようになります。

この“安心感”があるからこそ、
人は本音を話し、挑戦し、失敗から学べるようになります。

雑談は一見ムダに見えますが、
実は組織の土台をつくる重要な時間だと私は考えています。


② リーダーの「雑談力」

雑談は自然に生まれるものでもありますが、
リーダー側の関わり方によって、その質は大きく変わります。

仕事の話だけをしていると、関係性はどうしても“業務的”になります。
そうすると、部下は「正しいこと」しか言わなくなります。

だから私は、あえて仕事以外の話にも耳を傾けるようにしていました。

たとえば、休日の過ごし方や、ちょっとした日常の話。
そういう話の中に、その人らしさや価値観が見えてきます。

また、ときには自分から話題を振って、
その場に入り込むことも意識していました。

「仕事を見るリーダー」であることも大切ですが、
それ以上に「一緒にいて話しやすい人」であること。

この要素があるかどうかで、
信頼関係の深さは大きく変わると感じています。


③ リーダーも「自分を出す」

私は、「リーダーだからこうあるべき」と
自分を作り込む必要はないと思っています。

リーダーも一人の人間です。

うまくいかないこともあるし、
迷うことだってあります。

そういった部分を少し見せることで、
部下は安心します。

「この人も同じように悩むんだ」と思えたとき、
心理的な距離は一気に縮まります。

逆に、完璧なリーダーを演じすぎると、
部下はどこかで距離を感じてしまいます。

だからこそ私は、
あえて“隙”を見せることも意識していました。

その結果として、
部下の方から自然と話しかけてくれるようになり、
コミュニケーションの量も質も上がっていきました。


④ こちらから声をかける

信頼関係は、待っていてもなかなか生まれません。

特に立場が上になるほど、
部下の方から話しかけるハードルは上がります。

だから私は、できるだけ自分から声をかけるようにしていました。

「最近どう?」
「この案件どう進んでる?」

そんな一言でも、メンバーにとっては大きな意味を持ちます。

それは単なる確認ではなく、
「見てもらえている」という安心感につながるからです。

ただし、ここで重要なのは“踏み込みすぎないこと”です。

特にプライベートな話題については、
相手との距離感を見ながら慎重に扱う必要があります。

このバランスを取ることも、
リーダーとしての大切な感覚だと思っています。


⑤ 雰囲気はリーダーから伝染する

組織の空気は、想像以上にリーダーの影響を受けます。

リーダーが余裕を失っていると、
その空気はそのまま組織に広がります。

逆に、リーダーが落ち着いていて、
少し余白を持って接していると、
メンバーにも安心感が伝わります。

私はこれを何度も経験してきました。

だからこそ、どんなに忙しくても、
意識的に「和やかな雰囲気」をつくるようにしていました。

これは演技ではなく、
“姿勢”に近いものだと思っています。

リーダーの在り方そのものが、
組織の空気をつくるのだと感じています。


⑥ 話しかけられたときの「向き合い方」

メンバーから話しかけられたとき。

その瞬間の対応は、信頼関係に大きく影響します。

私はできるだけ手を止めて、
一度しっかり相手に向き合うようにしていました。

忙しいときでも、
「あとで」ではなく、一度リアクションをする。

それだけでも印象は大きく変わります。

人は、「自分の話をちゃんと聞いてもらえた」と感じたときに、
その相手に対して信頼を持ちます。

逆に、それが積み重ならないと、
徐々に話しかけづらい存在になってしまいます。

だからこそ、この“最初の反応”は、
とても大事にしていました。


⑦ 和やかさの中の「一線」

ここまで読むと、
「優しく接していればいいのか」と思うかもしれません。

ただ、それだけでは組織は締まりません。

私は、必要なときには
きちんと線を引くことも大切にしていました。

たとえば、場の空気が緩みすぎたとき。
仕事の質が落ちそうなとき。

そういうときには、あえて厳しい言葉をかけることもありました。

ただし、それが機能するのは、
普段から信頼関係があるからです。

関係性がない状態での厳しさは、ただの圧力になります。

逆に、関係性がある中での厳しさは、
「期待されている」として伝わります。

このバランスが、とても重要だと感じています。

ラポールが生まれると、組織はどう変わるか

こうした関わりを続けていくと、
少しずつ組織の空気が変わっていきます。

メンバー同士の会話が増え、
お互いに助け合うようになる。

そして何より、
一人ひとりが「自分らしく」動けるようになります。

私が異動する際、
メンバーから色紙をもらいました。

そこには、こんな言葉が書かれていました。

「この営業所がここまで良くなったのは、この雰囲気があったからだと思います」
「安心して働けたことが、自分の成長につながりました」
「この環境で働けてよかったです」

それを見たとき、
ラポールを大切にしてきたことは間違っていなかったと感じました。


信頼関係は、目に見える成果ではありません。

ただ、それがあるかどうかで、
組織の成長は大きく変わります。

そしてそれは、特別なことではなく、
日々の小さな関わりの積み重ねでつくられていくものだと思っています。

では、このようにして生まれた信頼関係の上で、
次にリーダーは何をすべきなのでしょうか。

私はここで初めて、
「挑戦の場」をどうつくるかが重要になってくると考えています。

次は、この「挑戦の場」について、
もう少し具体的に書いていきたいと思います。

もし今回の内容が少しでも参考になれば嬉しいです。
同じように「部下の成長」に向き合っている方にとって、何か一つでもヒントになればと思っています。


この内容は「部下成長シリーズ」としてマガジンにまとめています。

▶ 部下成長シリーズ一覧はこちら

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