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中小企業の経営者向け「やりたいこと」を研ぎ澄ます方法

最近、「やりたいこと」が多すぎて点と点がまるで点描画のごとく散らかっている経営者の方にお会いする機会が増えてきました。

AIや情報過多の影響で、インプットが過剰に増えたり、焦りを感じたり、逆にチャンスに飛びつこうと躍起になったり、要因は様々かも知れませんが「やりたいこと」は確実に増えている傾向にあると思います。

経営の3要素のひとつでもある「やりたいこと」それ自体はあるに越したことはありません。あった方が絶対に経営が形になりやすいですし、本人や従業員のモチベーションにも大きく影響してきます。

しかし一方で、その「やりたいこと」が複数に分散しすぎると、中小企業の限られたリソースでは勝てない戦いを方々で起こすことになり、負けを重ねることにもなりかねません。十分な企業体力や経営者の鋼のメンタルであればそれでもよいでしょうが、戦いの現場の従業員たちは確実に疲弊していきます

今回は、ケーススタディを通じて、中小企業経営者の「やりたいこと」を研ぎ澄ましていく方法を解説していきたいと思います。

  • やりたいことは沢山あるけど絞れない方

  • 沢山のやりたいことを従業員と共に実現したい方

  • やりたいことはまだ無いけど見つけたい方

こんな中小企業経営者におすすめです。

■結論:

「ドーグ(道具)」or「ゴール」アプローチ※で、アイデアやプロジェクト間の従属関係をクリアにしていきましょう。

※道具orゴールアプローチは私の造語です。

■ケース1:多角化と迷走の違い

⚫︎とある小売業の経営者A様

・地方都市で生活雑貨やフード、DIY関連商品などを扱う複合型ショップを展開。
・数年前から、新たに以下のような事業を展開:
・会員制の体験型コテージを全国で運営
・空き家を活用したレンタルスペースのプロデュース
・地域の魅力を発信するインバウンド向け観光メディア(Web)の立ち上げ

経営者の「やりたいこと」:

・「地域に人の流れをつくって、空き資産を価値化したい」
・「インバウンドを絡めて多角化を加速させ、従業員の働き口を創出したい」

問題の構造:

・それぞれの事業は面白く、個別には成立しそうに見えるが、社内では「どう繋がっているのか」が伝わっていない。
・各プロジェクトが“単発的な挑戦”に見え、従業員が目的意識やシナジー意識を持ちにくくなっていた。

支援アプローチ:

・全事業ごとの「自社資源の活用構造」や「マネタイズ方法と規模感」を言語化して整理。
・その取り組みや事業が、「何かの道具なのか」それとも「その事業のゴールなのか」を問い、仕分け。
・事業ごとの優先順位と事実と仮説、各取り組みのKPIが整理され、現場の納得感も高まった。

⚫︎迷走から脱却し、真の多角化のビジョンが見えた

多角化という名の迷走状態から、自社のリソースと強みを活かしきる戦略的な多角化の状態に昇華することができました。

戦略の実行とはすなわち「仮説検証」なので、このA社の戦いはむしろ始まったばかりと言えますが、社員と経営者が同じ目線に立てたことは非常に大きな一歩だと言えるでしょう。

■ケース2:マルチブランドとつまみ食いの違い

⚫︎とある金属加工メーカーからプロダクトブランドを目指す若手経営者B様

会社概要:
・精密な金属加工を強みとし、BtoB製造受託を20年近く行ってきたメーカー。
・世代交代を経て、BtoC領域や企画商品の自社ブランド化にもチャレンジを開始。

経営者の「やりたいこと」:

・「モノづくりの可能性をもっと世の中に広げたい」
・「教育や災害、防災、アウトドアなど“社会性”のあるプロダクトをつくりたい」
・「見た目にもこだわった“語れる商品”を出したい」
・「単なる工場ではなく“価値提案企業”として認知されたい」

問題の構造:

・試作アイデアは多数あるし、地に足をつけた開発もしているが、リソースと計画が分散し、誰も全体を把握していない。
・リソースの分散によって突破力とシナジーが犠牲になっている。
  ・突破力とシナジーが薄いため、経営者のストーリーテリングが顧客の誰にも刺さらない。

支援アプローチ:

・とにかく自由に語ってもらう形で構想中のアイデアを全て一度棚卸し。
  ・道具なのかゴールなのかを仕分ける
・初手としては、新商品の開発プロセスそのものをパターン化して標準化することがキーだと判明
・中長期的には、経営者がハブとなって一つのコミュニティや物語としてまとまる絵を描いた

⚫︎つまみ食いから「マルチブランド量産」の仕組みに昇華

色々な人と出会い、色々な場所に行き、刺激のシャワーを浴びまくり、全てつまみ食いして商品に反映する。このつまみ食い状態から、言語化と道具orゴール仕分けを経て、ちょっとしたアイデアと仕組みで商品開発のプロセスを標準化するという発想に至りました。そこからは、これまで同様のインプットでも、商品開発に活かすべきポイントと基準が明確になったので「マルチブランドの量産」というスタイルに昇華されました。

■まとめ:やりたいことを“削ぐ”ために必要なこと

“やりたいこと”は比較だけでは絞れない

やりたいことが無数に湧く人は「その中でも1番やりたいことは?」と優先度をストレートに聞かれても答えられますが実行が出来ません。どれも捨てがたいからです。やりたい気持ちの大きさだけで比較・選定しても、気持ちの揺らぎだけで意思決定が変わりかねないのです。

だからこそ“やるべきこと(=戦略)”を設計する必要があるのです。

やるべきこと(戦略)アプローチ
・制約条件(リソース、設備、顧客ニーズ)と向き合うことで、やりたいことは自然に絞られていく。
・子どもが「◯◯したい」と言ったとき、親に「なら宿題終わらせてからね」と言われるように、「現実」との対話がやりたいことを洗練させる。
・経営者自身が、「やりたいことの中でも今やるべきことは何か?」に気づいた瞬間、現場の迷いも消える。

「戦略」を決めれば、やりたいことは削られます

ただし、やるべきこと(戦略)は得意な人以外は意識してもなかなか難しいもので、そういう方向けに「道具orゴール」アプローチをお勧めしています。

この取り組みは何かの道具(手段)の位置付けなのか、それともその取り組みの達成自体がゴール(目的)なのか、これを一つ一つのアイデアや活動に対して問うて、仕分けるのです。

地道で時間もかかりますし、1人でやってたら多分あやふやになって上手くいきません。あなたに厳しいことを素直に言ってくれる人と一緒にやるのがコツです。

以上です。

参考になれば嬉しいです。

それではまた🖐️