日本とアメリカのコンサート運営の違い 6
ツアーメンバーのギャラ
どんなコンサートにもツアーに同行するメンバーがいます。ツアーメンバーのギャラ設定は、どんなプロダクションも悩む部分だと思います。経費もどんどん増えていきます。
この記事では、中規模クラス(1000〜3000席)のコンサートの相場感を元に、色々と解説していきます。
1. 日によってギャラ設定が変わる
3つの Day Rate
アメリカでは、その日の責任・負荷の度合いでギャラが変わる仕組みになっています。
Show Day(本番日): Full Day Rate
Production Day(仕込み日): Full Day Rate、もしくは75%
Travel Day(移動日): Full Day Rate の50%
仕込み日のレートは仕事量で決めます。半日で終わる程度なら、75%が妥当でしょう。仕込みと本番が同じ日でも、それは1本番日として数えます。
1日2公演だと、Full Day Rate x2を提示してくる人もいます。x1.75でも納得してくれるでしょう。
飛行機での移動が長時間になると、Travel Day Rateも75%(Production Dayと同じ)、または100%(Full Day Rateと同じ)計算にする場合もあります。何時間を超えたらそうなるのか契約書に明記します。
Weekly & Monthly Rate
ミュージシャンもクルーも、Day Rateの他にWeekly・Monthly Rateを持っています。もし拘束期間が長いツアーになるなら、WeeklyやMonthlyを選ぶ方が得策です。
大体これくらいの設定になります。人によるので確認必須です。
Weekly Rate: Full Day Rate x 3 + Travel Day Rate x 2
Monthly Rate: Weekly Rate x 3
2. ミュージシャンとクルーの相場感
人によってレートが違う前提
アメリカでは、みんな自分のレートを持っています。仕事を依頼する際に「What's your day rate?」(あなたの1日のレートは何?)と聞きます。上で書いたFull Day Rateのことです。そこから交渉を始め、双方が納得のいく数字に落ち着きます。
過去に何度も一緒に仕事をしたことがあっても、提示金額が低すぎたら断ってくるし、逆にレートが高過ぎたら諦めて違う人を探します。あくまでもビジネスはビジネス、という感覚です。
ミュージシャンの相場感
リードシンガー: $500 - $850/day
ミュージシャン: $400 - $700/day
指揮者: $700 - $1,000/day
レートは知名度にも比例します。例えばSNSのフォロワー数が数十万人いるシンガー、大御所ギタリストになると、言い値になるので上記の一般的な相場とは全く変わってきます。
注:指揮者のレートは、クラシック界とは著しく異なります。
クルーの相場感
Production Manager: $300 - $700/day
Stage Manager: $400 - $600/day
Lighting Director: $600 - $800/day
FOH: $600 - $800/day
Monitor Engineer: $400 - $600/day
Playback Engineer: $400 - $600/day
クルーの世界は役職によって以下の様に分類され、上に行くほどレートが高くなります。
A1: FOH
A2: モニターエンジニア、ワイヤレス周波数のエンジニア、など
A3: アシスタント
Aはオーディオのことです。照明チームの場合はL(L1、L2、L3)、映像チームの場合はV(V1、V2、V3)という呼び方に変わります。
ツアーメンバーとユニオン
前の記事で書いたAFMの規定レートは、現地雇用ではないツアーメンバーには適用されません。ユニオンを介さずプロダクション側に直接雇われるためです。
3. その他の項目
個人機材について
機材を持参してレンタル料を交渉してくる人もいます。プロダクションマネージャーは現場にポータブルプリンターなどを持参する人もいて、使った分のインク代や紙代も請求してきます。
アドバンスという仕事
プロダクションマネージャーは事前にかなり多くのコーディネートをこなすため、事前準備(Advance)のギャラを求めてきます。これは1公演に対して幾ら、という金額です。$500〜$800くらいだと想定しておいてください。
リテイナーの存在
メジャーなアーティストのツアーになってくると、ミュージシャンやクルーを固定にするために、仕事がない月でもリテイナーを支払います。
ただしミュージシャン側は急な呼び出しにも対応しないといけなくなるため、レコーディングやスポットの仕事の管理が大変になるでしょう。
Per Diem(パーディエム)
1日あたりの生活手当です。大体の相場は1日$50〜$75で、ミュージシャンやクルーはこれで追加の食事や雑費をカバーします。
4. まとめ
結論を言うと、アメリカのギャラ設定は雇う人で大きく変わります。しかし相場と交渉文化を知ることで、適正なギャラを提示することができます。それもミュージシャンやクルーに対するリスペクトです。
長く信頼できるチームを作っていきましょう。
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