#すべてが既読になっていた。│ #33「シン・悪魔との契約」
突然、僕の部屋に黒いローブを着たガイコツのような男が現れた。
「私は悪魔だ。お前の命と引き換えに望みを一つ叶えてやろう」
悪魔はそう言ってタブレットを手渡した。
画面は指紋だらけでちょっと嫌だなと思った。
色とりどりの広告動画が表示されている。
『永遠なる若さの旅路!』
『酒池肉林を超える伴侶との出会い!』
『無尽蔵の金の木!』
地味だった人生にスポットライトが当たった気がする。
どうせ、これからも僕は何もない平凡な生活を送るのだろう。
それなら、思いきって飛び出してもいいじゃないか――。
僕は深い呼吸をして覚悟を決めた。
この願いにしよう――表示されたているボタンをタップする。
けれど、タブレットが反応しない。
何度かタップしてみたが、一向に反応してくれなかった。
「すみません、これって……」
僕は悪魔に話しかけた。
ところが、悪魔はイヤホンをしてスマホを触っている。
何度も声をかけても聞こえていないみたいだ。
僕は苛立ってタブレットを床に叩きつけた。
液晶が砕けるのと同時に、悪魔とタブレットは消えていった。
静まり返った部屋に僕一人。
目を見て話してさえくれれば、簡単に契約していたのに。
了
この作品は一話完結のショートショート連作『#すべてが既読になっていた。』のひとつです。
また、現代の隙間時間でお会いしましょう。
【▶︎マガジン「#すべてが既読になっていた。」】
第32回 ⇒ 「呪いの人形を転売してみた」
第34回 ⇒ 「ネタバレを食んでゆく」
