🏥 自治体病院の「赤字」を考える——赤字は本当に悪なのか?


🩺 導入

2025年10月23日(木)、毎月第4木曜に開催される「いわて総診くらぶ」では、オンラインイベントとして 「自治体病院の赤字を考える」 が開かれました。ゲストとして一般社団法人みんなの健康らぼ 代表理事の 坪谷透 氏が話題提供してきました。

今回のテーマは単なる「経営論」ではなく、

“赤字とは何か” “地域にとっての病院とは何か”

を問い直す、興味深い議論となりました。


💡 イベント概要

  • 日時:2025年10月23日(木)18:30〜19:30

  • 形式:オンライン(Zoom)

  • 主催:いわて総診くらぶ

  • ゲスト:坪谷 透(一般社団法人みんなの健康らぼ 代表理事)


🏥 1. 「赤字=悪」ではないという問題提起

冒頭で以下を確認しました。

「今日は、赤字が悪いとか良いとか、結論を出すつもりはありません。」

つまり本イベントは、「赤字をどう見るか」を再構成する試み。
公立病院の赤字を“問題”とする前に、何が問題で、何が構造的必然なのか を明らかにする対話でした。

参考記事:


🗣 2. 参加者の声から見える“地域のリアル”

参加者から寄せられた意見には、こんな声がありました。

「必要な医療を守るための赤字なら仕方ない」
「経営努力が足りない赤字は問題」
「不採算でも必要な医療は公的部門が担うべき」
「介護施設も人件費構造的に黒字化は難しい」

単なる数字の問題ではなく、「赤字の意味」 を見極める視点が必要であることが共有されました。


⚙️ 3. 赤字の“そもそも論”

赤字を問題視する理由には、以下のような構造があります。

  • 資金繰り悪化による給与・借入金の遅延

  • 地方交付税の減額・行政指導リスク

  • 医師・看護職員の確保難

  • サービス縮小と地域信頼の低下

しかし、赤字は「地域コスト」の裏返しでもあります。病院は単なる営利企業ではなく、雇用・税収・地域経済を支える社会インフラです。


🏢 4. 「民業圧迫」と公立病院の役割


「黒字になる事業(健診・訪問診療など)は民間がやる。
採算が合わないが社会的に必要な事業を担うのが公的部門。」

例として、郵政・国鉄・JALの民業圧迫構造も提示されました。
地方の小規模自治体では「赤字でも唯一の医療拠点」を残すことが、
むしろ地域維持の条件になっている現実があります。


💰 5. 地方交付税と病院の関係

地方交付税は国から地方に再配分される約20兆円の財源であり、
大きな病院を持つ自治体ほど交付額が増える傾向があります。

関連資料:

この構造が「病院を潰せない政治経済的背景」につながっていると分析されました。


📊 6. 岩手・兵庫・新潟の比較

県立病院王国の比較

県 収入 経費 赤字額
岩手県 1,150億円 1,223億円 ▲73億円
兵庫県 1,631億円 1,721億円 ▲91億円
新潟県 741億円 787億円 ▲46億円

岩手だけが特別悪いわけではありません。

また岩手県は一般会計では500億円の黒字があり、
「補填しても余力がある」?(財政学には詳しくないので断定は避ける)

資料:


🏙 7. 市立病院のほうが深刻

いずれもキャッシュフローが数十億で、10〜15億円規模の赤字。
県立よりもむしろ市立病院の経営構造が厳しいと指摘されました。


🧮 8. 全国の傾向と構造的課題

国立大学病院の7割が赤字。
全国的にも病院の経営は悪化時赤字。
➡赤字なのは、病院に問題があるのではなく、診療報酬体系の構造的欠陥によるものでは?という問いが提示されました。


🧭 9. 医療介護ニーズの減少と「撤退戦」

今後、岩手県をはじめ地方では医療介護需要が確実に減少します。

そのため、「撤退戦」としての地域医療再構築が不可避です。
参考:


🪶 結語:赤字を「悪」ではなく「意味」として問う

「赤字を減らす」ではなく、「赤字の意味を問う」こと。

自治体病院の赤字は、単なる会計上の損ではなく、
地域の命と暮らしを支える“必要経費”である場合がある。

財政論だけでなく、「社会実装」としての地域医療の価値を
どう再定義するか——。
その問いこそが、今回の対話の中心にありました。



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