ビールと酵素〜③タンパク質の高次構造
前回からの続き
前回はタンパク質の構造の前提となるアミノ酸の基礎理解と、ペプチド結合についてでした。ペプチド結合がたくさん繋がったポリペプチドはタンパク質の一次構造と呼ばれています。
今回はタンパク質の高次構造のお話をしたいと思います。
タンパク質の高次構造
タンパク質は、たくさんのアミノ酸がひも状につながってできています。ポリペプチドによる一本の鎖のような構造です。このポリペプチドは、側鎖の性質、つまり親水性/疎水性、水素結合を形成する極性、ジスルフィド結合を形成する硫黄分子などの影響で、直線ではなく立体的な構造をとります。これがタンパク質の高次構造です。

二次構造: αヘリックス・βシート構造
まず、一直線のひも状のタンパク質は部分的にらせん状に巻かれたり、折れ曲がったりします。この巻き方・折れ方をタンパク質の二次構造といいます。なぜ二次構造ができるのか。これは水素結合によるところが大きいです。水素結合は分子と分子の間に働く分子間相互作用(分子間力)の一種です。分子を形成する共有結合やイオン結合と違って、水素結合は比較的弱い引き合いで、タンパク質の巻き方や折れ方を形成しつつも、柔軟に形を変える構造にもなっているのです。

二次構造の代表例は2つです。α(アルファ)ヘリックスは、ひもが右巻きのらせん状 に巻いた形で、バネや電話のコードのようなイメージです。所々で水素結合がらせん構造を補強します。ちなみにDNAも同じように水素結合によって、右巻きの二重らせん構造を形成します。
もう一つはβ(ベータ)シート。ひもが ジグザグに折れて並んだ形です。折り紙を何回か折ったようなイメージです。となり合う部分どうしが水素結合で支え合います。
αヘリックスもβシートも、同じタンパク質の中に両方あることが多いです。これらが組み合わさって、さらに複雑な三次構造ができます。
三次構造
三次構造では、αヘリックスやβシートを含む「1本の鎖全体」が、さらに立体的に折れ曲がることで特定の形になります。二次構造が部品だとすると三次構造は部品を組み立てた完成品です。

三次構造の形成には側鎖の親水性/疎水性という性質が大きく影響しています。細胞内は水の中と環境が似ており、水が嫌いな部分(疎水性)は内側に集まり、水が好きな部分(親水性)は外側に出ます。この結果、自然に安定した立体構造になるのです。
三次構造は、様々な化学結合や相互作用(分子間力)の組み合わせで保たれています。具体的にはジスルフィド結合(共有結合)、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用などです。
特にジスルフィド結合は、折りたたまれて構造化されたタンパク質の形を保持するのに重要な役割を果たしており、水素結合などで作られた柔軟な構造の所々を、まるでビスで止めるようにバラバラにならないようにしています。

三次構造が重要な理由は何でしょうか。要するに形が決まらないとタンパク質は機能しないからです。酵素は形が合わないと基質が入りません。受容体はシグナルを受け取れません。運搬タンパク質は分子をつかめません。つまりタンパク質においては「形=機能」であり、三次構造は形を作ることで機能を実現しているわけです。
四次構造
タンパク質は三次構造の段階で機能するのですが、実はその上の四次構造があります。四次構造では、複数のポリペプチド鎖(=サブユニット)が、それぞれが三次構造を保ったまま一定の配置で集合します。これによって、単独ではできない働きが可能になります。なぜ四次構造ができるのでしょうか。理由はシンプルで、1つだけでは不安定だったり、機能が弱かったりするためです。集まることで効率が上がり、複雑な調節できるのです。酵素のアロステリック調節という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、このような高度な制御は四次構造で実現できるのです。

ここまでのまとめです。タンパク質の高次構造は、一次構造=設計図、二次構造=部品、三次構造=完成品、四次構造=完成品が集まったチームというステップで構造化されています。安定化には様々な化学結合や相互作用が関わってきます。
構造の介添え役: 分子シャペロン
さて、ここでタンパク質の構造を形成するための名脇役を紹介します。タンパク質は、基本的には一次構造が決まると自然と折りたたまれて自動的に構造が決定されます。実際にタンパク質濃度が低い試験管の中で実験すると、ほぼ正確に構造化するようです。つまり、化学的に最も安定する立体配置がタンパク質の構造なのです。これをアンフィンゼンのドグマといいます。ところが、実際にタンパク質が作られるのは、他のタンパク質もたくさん存在する細胞内です。このような環境では他のタンパク質と相互作用して、正しい構造を取れないことがあります。具体的には間違って折れる(ミスフォールド)とか、 他のタンパク質とくっつく(凝集)ということが起こります。
そこで登場するのが分子シャペロン。分子シャペロンは、新しく合成された、または変性したタンパク質が正しい三次構造をとるのを助け、誤った折りたたみや凝集を防ぐタンパク質です。

代表的な分子シャペロンであるGroEL/GroESを例にして説明してみます。GroELはドーナツ状のリングが2段重なった構造で、未完成タンパク質を入れる容器の役割です。GroESはふた(キャップ)の役割をします。この2つのタンパク質で合わせて巨大な空洞(箱) を作ります。どう働くのか。ごくごくシンプルにいうと、まず未完成タンパク質が箱の中に入り、GroESがふたをします。そして、タンパク質がその中で安全に折りたたまれ、正しく折れたら外に出るというものです。「折りたたみ専用の個室」のようなイメージです。
次回へと続く
今回は、タンパク質の高次構造についてでした。タンパク質は構造=機能なので、構造の理解は重要です。次回は構造から見えてくるタンパク質の特徴についてお話します。
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小菅村にできた複合施設Beer Adventureの紹介です。将来像はこんな感じになる予定です。 大麦畑、ホップ畑、製麦施設、ビール造り体験など徐々に整えていきます。

