ビールと酵素〜②アミノ酸とタンパク質の一次構造
前回からの続き
前回はシリーズイントロダクションと酵素とは何かという問いでした。今回は酵素はタンパク質であるという前提を元にタンパク質の構造についてお話します。まずはアミノ酸からです。
ちなみにアミノ酸の材料の一つである窒素は、窒素循環によって地球規模で循環し、アミノ酸を形成するまでに窒素固定、窒素同化という長い旅路を経てやってきます。この話もストーリーとしてめちゃくちゃ面白いのですが、このシリーズでは泣く泣く端折ります。詳しくは生物の教科書をお読みください。というわけで、この今回はアミノ酸の構造から話しはじめます。
タンパク質の材料: アミノ酸
酵素はタンパク質の一種(例外あり)で、タンパク質はアミノ酸が結合したもの。つまりタンパク質の材料はアミノ酸です。自然界には500種類のアミノ酸がありますが、ヒトをはじめ生物のタンパク質を構成するのは約20種類です。構造的にいうとアミノ酸はアミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)を持つ有機化合物です。側鎖の構造によって分類できます。

アミノ酸の性質は、側鎖の構造によって酸性/塩基性、親水性/疎水性で分類するのが一般的です。タンパク質になるとアミノ基とカルボキシ基は結合(ペプチド結合)に使われるので、あまり重要ではありません。あくまでも側鎖が性質を決定します。なぜこの分類が重要かというと、生物の組成はおよそ7割が水だからです。アミノ酸とそれを材料とするタンパク質は、水の中でどのような性質を持つかで、その機能が決まるというわけです。

酸性と塩基性
酸性アミノ酸は中性の水の中では水素イオン(プロトン、H+)を放出し、塩基性アミノ酸は水素イオンを受け取ります。アミノ酸が集合してタンパク質になったときにこの酸・塩基の性質が酵素の至適pHに影響するわけです。

アミノ酸は、アミノ基を-NH2、カルボキシ基を-COOHと表すことが多いですが、実際の水溶液中ではこの2つはイオン化してそれぞれ-NH3+と-COO-としても存在しています。それが水溶液のpHが低い(酸性)の場合は陽イオンに偏り、pHが高い(アルカリ性)の場合には陰イオンに偏って存在するように変化します。陽イオンと陰イオンが同量存在する時のpHは等電点といいます。アミノ酸がタンパク質/酵素になったときには、集合体としての電荷がプラスに偏るかマイナスに偏るかで、pHに応じて反応や構造に影響が出ます。
親水性/疎水性、その他の側鎖の特徴
親水性/疎水性は、タンパク質の構造(折りたたまれ方)に大きく影響します。側鎖が炭化水素のみで構成される脂肪族アミノ酸は疎水性が高いです。こういうアミノ酸が集まると疎水性相互作用によって、その側鎖の面は水溶液に対して内側に引っ込んで、構造を安定化させます。その他、システインなどの硫黄を含むアミノ酸はジスルフィド結合という共有結合を形成し、プロリンは環状構造を持つためタンパク質になったときに取れる立体構造が他のアミノ酸より制限されるのでより安定した構造になります。
ペプチド結合
タンパク質はアミノ酸が結合してそれがどんどん繋がっていくことでできます。タンパク質の生成過程でアミノ酸同士が繋がる結合をペプチド結合といいます。

カルボキシ基とアミノ基が図のような加水分解し、C-N間で共有結合が形成される構造です。この結合がどんどん繋がると下の図のように無限にC-N結合ができます。

このように小さな分子が多数繰り返し結合してできた、分子量の非常に大きな高分子をポリマーといいます。糖のポリマーであるデンプン(アミロース、アミロペクチンなど)、エチレンのポリマーであるポリエチレンなど様々なポリマーがあります。アミノ酸のポリマーは要するにタンパク質であることが多いですが、ポリペプチドともいいます。
タンパク質の一次構造として
アミノ酸が繰り返し結合してできるポリペプチドはタンパク質の一次構造と呼ばれています。タンパク質はポリマーの一種なのですが、他のポリマーとちょっと違う点があります。それは機能を念頭に「設計」されている点です。つまりセントラルドグマによって、DNAがアミノ酸の配列という指令を出すことで生成されているのです。他の有機化合物の生成は生命の代謝活動の中で起こるのですが、タンパク質の生成は通常の代謝とは別に細胞内のリボソームという場所でRNAの関与によって起こります。
タンパク質は二次構造、三次構造、四次構造と高次構造を持っていますが、実はRNAによって規定されているのは一次構造だけです。つまり、DNAが指令として出すタンパク質の設計図には、どのアミノ酸をどの順番でくっつけるかしか書いてないのです。あとはアミノ酸の側鎖の性質によって折りたたまれ構造化していきます。(ただし構造化にあたって介添え役みたいな存在もいます。)
次回へと続く
今回はタンパク質の構造の前提となるアミノ酸の基礎理解と、ペプチド結合についてでした。次回はタンパク質の高次構造についてお話します。
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