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会議室イングリッシュの英語プロジェクト名は狂気

アラフィフ英語苦手勢の会議室イングリッシュから続く 前編はこちら

話題は「仕事と英語」

同じ業界で働く彼女との共通の話題は、仕事と英語。
転職のエージェントを紹介してもらったこともありました。フィリピン人の癖と我が強いおばさんで、今は不動産会社に転職しちゃった。Instagramでつながっている。承認欲求がダダ漏れしてる。こんな自分中心の人が、人材のエージェントだったって、なんか違和感があるな。

私がポジションクローズで、クビになったときに、とにかく自分が持ってるポジションの案件に私を押し込もうとした。あるブランドのタイトルなしポジションの面接に捩じ込もうとする一方で、他のブランドのディレクターを「ジャンプアップだってチャンスなんだから」と、CVを書き換えようとした。無理すぎるだろ。二つの案件を同じ人に勧めるのが理解不能。どっちのポジションも帯に短し襷に長しで、嫌だわ。
私は、自分で他のブランドのポジションをかつての同僚から推薦してもらって掴んだから、彼女のお世話にはならなかった。彼女は、「給与交渉してあげる。あと2M上乗せするから、コンタクト先を教えて」と言ってきました。恐ろしい。そんな交渉されたら、せっかく決まった話がなくなっちゃう。もうサインしちゃったと断りました。
でも、働き始めて「同じ仕事で200万も高かったら…あのとき交渉してもらったらよかったかな」と思うことも。50万くらいは交渉できたんじゃないかな、と。

彼女とは、英語の苦労や、外国人と働くことで生じる軋轢を同じ感覚で話せるのがいい。悪口じゃなく、“あるある”としてネタ化できるのです。
話しているうちに、同じ人(日本語ができるスペイン人のIT)を知っていたり(すさまじく評判が悪い)、何かしら共通点が出てきます。

今日の話題:娘さんの英語学習 → 使わない単語 → 変なプロジェクト名

まず、舞台となる会議室名の“ブランドあるある”。
HQに関連する名前だったり、アイコンプロダクト名だったり。大会議室とか会議室Aとか、わかりやすい名前にすればいいのに、フランスの人名とかイタリアの地名とか、わかりにくいよねって共感しあいます。Mで始まる会議室を混同して予約して、大人数なのに小さな部屋にびっしり座って、信じられないくらいの“密”になったり。

葬られがちなプロジェクト名たち

続いては、葬られたプロジェクト名の話題へ。このときに使われるボキャブラリーは、大学受験、そしてTOEICで学んだ語彙が多い。
そのチームの苦手分野を攻めていく系案件にありがちな“Visionary Shift”とか“Project Voyager”。
たいてい担当者がいなくなって終わる。やる気満々だったはずなのにだんだん萎んでいって、あるとき担当者ごとなくなる。

以前の会社ではジャパンオフィス社長発の“Blueprint 2.0”というローカルプロジェクトがあって、意味は設計図のその先へ、みたいな感じだったけれど、日本人には“図面”と呼ばれていました。
始まった当初からめんどくさい感があったな。青写真あるいは、設計図って翻訳されてたらイメージが違ったかも。

「来週の図面アップデートある?進捗ないのにマンスリーで会議する意味あるんだか」
「図面ってなんだかね。設計図だったらクリエイティブなあだ名だったのに」
「図面って、もう葬られる予感しかない」

しばらくして、図面は消失しました。

オムニチャネル前夜の“動かないプロジェクト”

10年ちょっとくらい前、ブランドでECサイトが整備され、ラグジュアリーでもオムニチャネルが意識され始めたころ。
彼女の会社には“Digital Compass”、私の会社には“Synergy Engine”という名の動かないプロジェクトがありました。

彼女のデジタルコンパスは、HQとジャパン社ヘッドのECへの期待値と意見が違いすぎて、方向を失って形骸化。
私のシナジーエンジンは、HQ主導だったけど、日本の担当者のぬらりぬらりとした怠慢により、なんのシナジーも生み出さないエンジンとして亡き物に。
あとには、機能しないオムニチャネルらしきものが残りました。

コロナ禍に、シナジーエンジンが思い出されたけれど、担当者の彼が解雇されていたので、なかったことになりました。掘り返すには、闇が深すぎて。It’s too dark.

転職あるある:評価制度と経費精算

HR系評価制度は、名前は違えど系統が似てます。コンピテンシーは同じ(に見える。違うかもしれない)。
女子「とりあえず、adaptability 高めで、innovation苦手って評価をどこの会社でもしてる」
私「わかる。私もcollaboration のスコアを高くしてる」
女子「私、前職のをコピペしてるよ。問題なし」
私「わかる。会社は変わっても、私は同じだもんね。ちなみにゴール設定は、採用されたときのJDからコピペして編集してる。できないことは削除して」
女子「それいいね。使えるものはなんでもコピペ。和訳でなんとかする」

「転職すると前の会社と混同しがち。仕組みも似ているんだけど、操作性が異なって勝手にストレスを感じてるの」
「わかるー微妙に似てるのがなんかムカつくんだよね。あの変な日本語にもイライラ」
「かといって、英語だと、実際わからないし」「そうなのよ、どっちもわからない」

経費システムは同じものを使っていることも。「SAP Concur使ってる?」
「私も使ったことある。慣れたら便利だよね」
「でも、スマホでレシート添付しても読み取らなくてイライラしない?」
「差し戻されると心が荒むよ」「〆日に間に合わないと落ち込むし、財政が厳しくなる」
「部下の経費の承認は、内容なんてみないで、即承認するよね、たまるから。私のせいで支払いを遅らせたくないし」
「交際費使ってなければ、とりあえずメクラ判だよね。新卒の頃のおじさん上司がやってたことを、アラフィフになってから再現してるみたい」

経費精算は“名もなき家事”みたいな存在です。めんどくさいけど、業務時間にやる仕事じゃない。残業してまでする仕事でもない。でもやらないと自腹。
わかるわ、その価値観と、ふたりでわかりみの嵐です。

戦闘モードのローカル企画「KILLING ◯◯」

話題はプロジェクト名に戻ります。
コンペティターブランドを徹底的にマークする日本ローカルのプロジェクトがあって、「killing ◯◯」というおそろしい名前がありました。

もとは「Counter-Strike ◯◯」だったのが、外国人社長が、

「生ぬるい!反撃だけじゃなく殺せ!Just do it!やれ!

Don’t just counter them! We need to absolutely crush the competition and take over their market share. Kill them!」

と、会議室で真っ赤な顔で叫んで、KILLING ◯◯に。
社長の絶叫を意訳すると、
反撃するだけじゃなくて、コンペティターを完膚なきまで叩きのめして、マーケットシェアを奪い取れ。殺せ!殺れ!

こわ。狂ってる。社長が狂人2.0に進化した。

それ以来、資料もミーティング名もKILLING。
ただしオフィス限定のプロジェクト、ブティックには徹底的に伏せられました。取引先に知られたら事故が起きる名前だから。ちょっとだけコンプライアンスに配慮してる。

日常に浸透する kill の嵐

オフィスの日本語会話でも「殺す」が日常語に。

「今週も◯◯を殺せてない。むしろ殺されてる」
「どんなかんじに殺された?」
「◯◯でインバウンドの爆買いと、顧客のオーダーの計上で瞬殺で殺された」
「殺され慣れてきたね。もう殺されのプロ」
「毎週、いろんなやり方で殺されてるけど、月曜日の朝にオフィスで一番殺されてるわ。磔の刑みたいな感じ。あるいは撲殺」
「心で花を手向けるわ」

そんなある日、本社の偉いビジターがオフィスにやってきました。ふと、コピー機の横の裏紙になった資料を手に取ると、タイトルが KILLING ◯◯。
中身もオブジェクティブの Kill the competition に始まり kill が乱舞。
ビジターは激怒。

「ラグジュアリーなブランドが、こんなけしからん名前をつけるとは何事だ!」
「世界最高峰レベルなのにこんなことするのか!」
「殺せ!ってハラスメントだろ!!」
「おまえは、コンプライアンスって知ってるのか!!!」

外出していた社長は呼び戻され、事情を説明し、だいぶ叱責されたそう。たぶん殺されかけた。
この件は本国にも広まり、社長はミラノでもたっぷり怒られて、マフィアみたいな本社社長に半殺しにされた模様。
でしょうね。パワハラ、モラハラ、コンプラ違反の全部盛りみたいな感じだものね。

名コピーだったのかもしれないけれど

私「本国から詰められまくってる外国人社長が付けそうなプロジェクト名でしょ」
友人「わかるー社長が本社から詰められて殺されかけてたんでしょ。
でも、それくらい簡単な言葉がわかりやすくてみんな理解するよね。
正直、外国人上司が早口の英語で怒ってても、聞き取れなくてボーっとする時あるし」
私「まことに残念だけど、早口は聞き取れない。4 letter word をめちゃ言ってるなーとか俯瞰しちゃう」
友人「No excuses! や Just do it! くらいわかりやすくないと伝わらないかも。Killing は日本人にも伝わる。名コピーだ」

ネイティブではない言語でプロジェクトやスローガンを浸透させるのは難しい。みんな趣向を凝らしてる。
KILLING はオブジェクティブのキモ、一丁目一番地を表していました。名作だったのかもしれません。

でも、もういいかな。
次は平和な名作を期待したいと思います。

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