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終わる人海戦術と、新しい配置#1|人を増やすのをやめる日

現場のリーダーや管理職が集まる会議で、毎月のように繰り返される会話があります。

「また人が辞めてしまった。現場が回らないから、すぐに求人を出して補充してほしい」 「しかし、今の時給や条件では、なかなか応募が集まりません」 「そこをなんとか、予算内でやりくりできないか。派遣会社にももっと声をかけてみてくれ」

こうしたやり取りは、決して特定の企業だけの問題ではありません。 どの職場でも、人が足りなくなれば「新しい人を雇って穴を埋める」という解決策が、ごく当たり前のように選ばれています。

ですが、採用担当者がどれだけ募集の文章を工夫しても、現場のリーダーが面接に時間を割いても、人は一向に集まらない。あるいは、ようやく採用できてもすぐに辞めてしまう。

この苦しい状況に直面したとき、私たちはつい「採用のやり方が悪いのではないか」「うちの会社には魅力がないのだろうか」と、自分たちを責めてしまいがちです。

しかし、業務設計者の視点から見ると、これは努力不足や魅力の問題ではありません。 これまで私たちが当然のように信じてきた「人を集めて解決する」という仕組みの前提そのものが、社会の構造変化によって完全に崩れ去ってしまったという事実の表れなのです。

これまで、多くの組織は「人を自社で抱え込み、多くの人数を配置する」ことで業務を回してきました。 このやり方が成立していたのは、「比較的安価に、多くの労働力を確保できる」という前提があったからです。 しかし、最低賃金が上昇し続け、さらには外国人労働者の受け入れ制度も「育成就労」へと移行するなど、外部環境は大きく変わりました。 「安く、たくさん人を囲い込める」という、かつての常識はすでに終わっているのです。

それにもかかわらず、私たちは問題が起きるたびに、無意識のうちに「人を足す」ことで解決しようとしてしまいます。 業務量が増えたから人を足す。新しいツールを導入したから、その管理のための人を足す。 これは、私たちの思考の土台にある仕組み(OS)が、「人海戦術」という過去の成功体験から抜け出せていないことを意味しています。

人が来ないという現象は、採用という機能のエラーではありません。 「人を増やして対応する」という組織の設計自体が、限界を迎えているという静かな警告です。

ですから、私たちがまず直視しなければならないのは、この現実をシステムのバグや一時的な不調として扱うのをやめることです。 社会の構造が変わった以上、私たちも組織の形を変えなければなりません。

そのためには、まず第一歩として「人を増やすことで解決する」という選択肢を、一度テーブルから下ろす必要があります。 それは、現場を見捨てることでも、成長を諦めることでもありません。 これまで自社で抱え込んでいた業務の境界線を引き直し、本当に自社でやるべきことと、外部に任せるべきことを整理し直すための、重要な「引き算」の始まりなのです。

人を増やすことをやめたとき、初めて私たちは「今あるリソースをどう配置し直すか」、そして「外部の力とどう滑らかに繋がっていくか」という、新しい問いに向き合うことができます。

次回は、この「外部とのつながり方」について。 すべてを自社で抱え込むのをやめ、専門業務を外部に委ねる際に生じる現場の痛みと、それをどう乗り越えていくかという構造について、少し長く、丁寧に掘り下げてみたいと思います。


読後の処方箋(関連記事のご案内)

記事を読み終えて、もし心に何かが引っかかったなら。 その違和感の正体に合わせて、次に読むべき記事をいくつか置いておきます。

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