切断の設計#5|すべての仕組みは腐敗する。だから「終わり」を刻印せよ
シリーズの最後に、業務設計者が持つべき最も重要な視点をお伝えします。
それは、「すべての仕組みは、生まれた瞬間から腐敗に向かっている」という冷徹な事実です。
今の私たちにとっての「最適解」も、1年後には「時代遅れ」になり、3年後には「足かせ(ゾンビ)」になります。
環境が変われば、正解も変わる。これは避けられない自然の摂理です。
だからこそ、私たちは「永遠に使える完成品」を目指してはいけません。
むしろ、「いつか壊されること」を前提に作る必要があります。
賞味期限を設計に埋め込む
スーパーで牛乳を買うとき、私たちは賞味期限を見ます。
しかし、業務マニュアルや会議体を作る時、そこに「賞味期限」を書く人はほとんどいません。
「いつまでやるか」「どのような条件になったら見直すか」という「終わりのトリガー」が定義されていないのです。
設計の段階で、あらかじめ「死」を刻印しておくこと。
「この運用ルールは、半年後に必ず見直す」
「この会議は、プロジェクトフェーズが変わったら解散する」
そうやって、最初から「更新(アップデート)の余地」を構造に組み込んでおくのです。
それは、未来の自分たちへのギフトになります。
「ああ、これは期限切れだから捨てていいんだ」と、後継者たちが罪悪感なく捨てられるように。
組織に「美しい代謝」を取り戻す
作る人(Bind)と、壊す人(Unbind)は、同じでなければなりません。
呼吸が、吸うことと吐くことのセットであるように。
組織が生き続けるためには、生成と消滅を繰り返す「代謝(メタボリズム)」が必要です。
業務設計者とは、固定化された「システム」を作る人ではありません。
変わり続ける現実と、変わり続ける人との間で、常に最適解を揺らぎながら探し続ける、「循環」のエンジニアです。
• 慣性に気づき(#1)
• 剪定の視座を持ち(#2)
• 滑らかに移行させ(#3)
• 過去を丁寧に看取り(#4)
• そしてまた、終わりを前提とした新しい仕組みを作る(#5)。
このサイクルが回り始めた時、あなたの組織は「しくみのスキマ」に足を取られることなく、しなやかに未来へと歩み続けることができるはずです。
切断とは、終わりではありません。
それは、次の始まりを迎えるための、最も創造的な準備なのです。
(業務設計者としての問い)
あなたが今日作ったその仕組みには、いつかそれを「壊す」ための鍵が置かれていますか?
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