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管理職の「罰ゲーム化」— その正体は、構造の“しわ寄せ”を身体で受け止めているからかもしれない

ここ数年、「管理職にはなりたくない」という言葉を、若手だけでなく中堅層からも耳にするようになりました。
責任は重くなるのに、権限は限定的。
部下のケア、コンプライアンス、ハラスメント対策、そして経営層からの高い目標達成要求。
そのすべてが、中間管理職という一点に降り注いでいるように見えます。

世間ではこれを「管理職の罰ゲーム化」と呼びます。
けれど、彼らが恐れているのは、責任そのものでしょうか。
いいえ、おそらく違います。

彼らが直感的に感じているのは、
「今の構造のまま、あの椅子に座ったら、自分が磨り減ってしまう」
という、生存本能に近い危機感なのかもしれません。

今日は、この現象を個人の問題ではなく、「しくみの欠陥」として、少し違う角度から覗き込んでみたいと思います。

構造の「断絶」を、個人の「身体」で埋めている

業務設計者の視点で組織を見たとき、中間管理職は最も過酷な「結節点(ハブ)」に配置されています。

上流には、経営層が語る「抽象度の高い戦略(理想)」があります。
下流には、現場が直面している「解像度の高い現実(具体)」があります。

本来、この「理想」と「現実」の間には、大きな“断絶”があります。
使われる言葉も、流れている時間軸も、見ている景色も全く違う。

この断絶を繋ぐためには、高度な「翻訳」が必要です。
しかし、今の多くの組織では、この翻訳を支援する「しくみ」が存在しません。

その結果、何が起きているか。

管理職が、自分自身の時間と精神をすり減らしながら、その「断絶」を埋めるための“人柱”になっているのです。

経営からの「いい感じで頼む」という曖昧な指示を、現場が動けるレベルまで噛み砕く。
現場からの「システムが使いにくい」「人が足りない」という悲鳴を、経営に伝わるロジックに変換する。

この膨大な「翻訳コスト」と「摩擦熱」が、管理職の業務時間の大半を奪っています。
これが「罰ゲーム」の正体ではないでしょうか。

彼らは能力が足りないのではなく、
「翻訳機を持たずに、通訳をさせられている」
のです。

「頑張れ」と言う前に、荷物を点検する

もしあなたが、「あの人は管理職としてもっとしっかりすべきだ」と感じていたり、
あるいはあなた自身が「もっと頑張らなくては」と追い詰められていたりするなら、
一度立ち止まってください。

必要なのは、個人のスキルアップや精神力ではありません。
彼らが背負っている荷物を「構造的に」下ろすことです。

たとえば、情報の通り道を一本化しすぎていませんか?

ハブ(結節点)である管理職に
すべての承認、すべての報告、すべての調整を集めれば、
効率的に見えるかもしれません。

しかし、ハブがパンクしてしまえば、
組織全体の血流が止まります。

あえて管理職を通さない「バイパス(情報の抜け道)」を設計したり、
翻訳が必要ないレベルまで業務を標準化したりすること。

それは、決して管理職の権限を奪うことではなく、
彼らを「人間にはどうにもできない構造的負荷」から守るための設計です。

結びに:個人のせいにするのを、やめてみる

「管理職になりたい人がいない」という現象は、組織からのSOSです。
それは、「今の構造はもう持続可能ではない」という、
現場からの静かな、しかし強烈なメッセージです。

この問題に向き合うことは、誰かを責めることではありません。

「なぜ、優秀なあの人が動けなくなってしまうのか?」
「なぜ、ここで熱が滞ってしまうのか?」

その背後にある構造を、静かに見つめ直すことです。

管理職の椅子が「罰ゲーム」ではなく、
組織の未来を描くための「特等席」に戻るまで。

しくみのスキマを埋める設計は、まだ始まったばかりです。

🍵 もっと深く「スキマ」を覗きたい方へ

現象の裏にある構造を理解し、根本から解決したいと願う方へ。
以下の記事も、思考の補助線になるかもしれません。

■ なぜ管理職に負荷が集中するのか?その構造を知る

#しくみのスキマ |ハブとスポークでしくみを動かす

(管理職が「ハブ」になりすぎている現状を、どう分散させるかのヒントがあります)

■ 「翻訳」という重労働の本質

#業務設計者論 |翻訳者はしくみの言葉を編む

(現場と経営の間に立つことの難しさと、その価値についての考察です)

■ そもそも「業務設計者」とはどういう視点か

#業務設計者論 |しくみの狭間に立つ設計者のまなざし

(業務と人の間にある「スキマ」をどう捉えるか、その基本思想です)

■ 組織の熱がどこで止まっているかを知る

→ 動くしくみ、止まるしくみ#1|熱はあるのに、流れないしくみ

(個人のやる気の問題ではなく、構造的な「熱伝導」の不全として捉え直し)

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