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第14回 続・放置プレイの中年社長、M&A後の「ヒマとの仁義なき戦い」

M&Aから、気がつけばもう半年以上がが過ぎようとしている。

M&A直後の俺といえば──圧倒的なヒマと戦っていた。

ヒマって言っても「なんか予定がなくて暇だな〜」みたいなかわいいもんじゃなかった。
もう“ヒマ”という名の重量級ボクサーに、延々ボディを打たれてるレベルのヒマ。
「おい、俺…生きてるか…?」って自分の腹をさすりながらつぶやく毎日だった。


じゃあ今はどうなのか?


求められることは増えた。
会議も増えた。顔見知りも増えた。
「お疲れさまです!」って言ってくれる人も増えた。

「これ助けて欲しいです!」なんて依頼だって沢山来るんだぞ。

でもね、なぜか“ヒマ”は減らない。

不思議なことに「求められてるのに、放置されてる感」はバチバチにある。


コミュニケーションお化けの副作用

そもそも今、俺が社内で“求められてる”っていうのは、
俺の「コミュニケーションお化け力」によるものだ。

いろんな部署の人と仲良くなる。
M&Aでグループインした他社の経営者とも仲良くなる。
気がついたら、社内ではやたら顔だけ広いオジサンになっていた。

俺個人としての仕事は増えるが
俺の会社自体は何も改善ができていない。

市場は荒れたまま。
打ち手もこれと言った介入がないまま半年がすぎている状態だ。

そう──
肝心の「買い手のトップ(ボス)」とは、まったくと言っていいほど話す機会がない

いやいやいや。
それ、肝心のコミュニケーション先そこじゃない?

俺、現場で人気者にはなったけど、買手トップとは「月イチどころか2ヶ月に1回、ファンミーティングレベル」。

ボードメンバーというのは存在していないために
基本的には意思決定はその名の通りボスに一本化

だから会えなければ、コミュニケーションがなければ進められない。


放置プレイの構造


だから、俺の元いた会社の社員たちは、俺以上にヒマだ。
朝、パソコンを立ち上げて、Slackを開き、
「あれ?今日、誰からも何も指示来てなくね?」
……そしてそのまま1日が終わる。

仕入れがない分開店休業状態に近い。

これ、別に社員が悪いわけじゃない。
構造の問題だ。

「モチベーションが下がる。」この言葉は嫌いだったが
今なら少しその気持ちがわかる(笑)

社員にはかなり申し訳ない気持ちになる。

M&Aが終わると、俺の様なオーナー経営者は意思決定者ではなくなる。

今まで好き勝手決めてきたけど買収後は
なんと言っても買い手の意思を待つ必要がある。

ゆえに意思決定のスピードは鈍る。
買い手の組織の優先順位に自社が入っていなければ、当然「何も起きない」。

未確認生物と同じくらいボス会えないんだ(笑)
意思決定もなにもない。
そりゃ暇にもなるよね。


仲間はみんな放置されていた


俺が買収された以降に買収された元経営者仲間と繋がることができた。
M&A後に仲良くなったんだが、ある日、ぽろっと言った。

「いや、もう退職するつもりです。」

早い。早すぎる。
元経営者なのに半年以内で退職するという。
でも正直、驚きはなかった。

というのも──
俺が仲良くなれた、買収された会社は俺を含めて5社あるが、
全員口をそろえてこう言う。

「いや〜、うちも放置されてんだよねぇ」

そう。もはや放置は“特例”ではなく“仕様”だった。


ちなみに譲渡金はちゃんと入っている


これがまた不思議な話で、譲渡金はちゃんと全員入金されている。
諸々の手続きも終わっている。
個人保証も外れている。

法律的にも全員自分の会社じゃなくなっているから
いわゆるM&A詐欺案件ではない(笑)
たぶん(笑)

むしろ読み手の方で思いつく事があれば教えて欲しいくらいだ。
もしかしたら半年後に詐欺にあいました!ってnoteをあげているかもしれない(笑)

つまり、売り手としての目的は達成されている人が多い。
“ハッピーM&A”のはずなのに、なぜか全員どこか虚無顔。

これはまるで、ディズニーランドに行ったのに入園してから3時間、
誰もアトラクションに誘ってくれず、ポップコーンだけ食ってる状態だ。

ポップコーン食べてたら、同じ境遇の仲間がいて
みんなで悩みながらポップコーン食べてる様な光景だ。


ふと湧き上がる疑問

このとき俺の脳裏によぎった。

「……なんで買収したんやろ」

いやマジで。
みんな放置。ボスも特に絡んでこない。
シナジーもあるが、構造的にではなく個人的にって感じだ。

もしかして、コレ、俺、間違えてオブジェ的に買われたんじゃないか?
社内の壁に飾る「買収済み」みたいなインテリア扱いなんじゃないか?

ボスには悪意がない。これも多分間違いない。

ボスが悪い人ってわけじゃないんだ。
2ヶ月に1回くらい会うと「お、元気?」って笑顔で話してくれる。
すごくいい人なんだ。

なりたい姿を熱く語ってくれる。
もちろん俺の事業の話もしてくれる。

ただし──
意思決定に関わる事業の相談をしても、だいたい微笑みでスルーされる。

右か左かを聞いても、意思決定はもらえない。

なぜか?
ボスもその領域に知見がないからだ。

つまり、こっちも困ってるけど、向こうも困っている。
まさに「シン・放置プレイ」。

こうなると各社放置になる。

かと言って脛に傷がある元経営者たちだ。
権限委譲させることもまた不安なのでことがすすまん。


M&Aのリアルってこういうこと

M&Aってニュースで見るとすごく華やかに見える。
「買収!」「グループ入り!」「シナジー!」みたいな単語が並んで。

勝手に明るい未来を想像していたりして。
それこそ、YahooとZOZOTOWNみたいな超シナジーを思い描いていた。

でも現場の実態は──
放置。
待機。
放置。
ちょっと会議。
そしてまた放置。

シナジー?なにそれ美味しいの?状態。


俺は別にネガティブじゃない

この話をすると「M&Aって地獄なんですか?」と聞かれるけど、
そういう話ではない。

俺はM&Aしたこと自体に後悔はない。
むしろ人生の選択肢が広がったし、
ある意味「会社に縛られない」自由を手に入れた。

なんだかんだで社員が救われているのは間違いない。
市場は悪化し続けて、倒産やM&Aが目立つ様になるくらいだから。
これはマジでタイミングが良かったと思う。
ただ買い手には本当に申し訳ないタイミングでもあった。

ただ、M&Aしたからといって“爆速で物事が動く”わけではない
むしろ“爆速で放置される”可能性もある。


俺の結論

M&A後の世界を一言でいうとこうだ。

「ディズニーのチケットを買ったのに、誰も誘ってくれない。けどパレードだけはやってる。」

この状況をどう楽しむかは、売り手次第。

積極的に仕事を拾って、自分で動いて、勝手に物語をつくるか。
それとも、ポップコーン片手にベンチでパレードを眺めるか。

俺は前者を選んだ。
この半年でそれなりに現場の信頼も築けた。
でも、やっぱりふと夜に思う。

「なぜ俺は、放置プレイの中でこんなに元気に生きてるんだろう」と。

・M&Aしたら放置プレイになる可能性がある
・ボスと話す機会は激減する
・シナジーは“勝手には”生まれない
・放置は悪意ではなく“構造”
・放置されても楽しめる人が、M&A後の世界を生き抜く

俺は、今日もパレードを横目に見ながら、なんとも言えない気分で仕事している。

いや、ほんとにね。

俺の旅は終わらない。

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