「彼女がいないんじゃない、でき続けているところなんだ」とその男は言った
彼女が云々、という話をしていたときに、友人がまじめな顔で言ったことがあります。いないんじゃなくて、できる過程の途中にいるだけだ、と。彼女ができ続けている状態なんだ、と。ばかばかしくて笑ってしまったんですが、なぜかずっと引っかかっています。
IT系ベンチャーでPdM・事業責任者をやってきた経験からの話をしています。ひとつの見方として読んでもらえるとうれしいです。
ばかばかしいのに無視できない
どう聞いても負け惜しみなんですよね。できていないものはできていない。
ただ、結果が出ていない状態を失敗と見るか、まだ途中と見るかで、次にやることは変わります。失敗だと思えば引き上げるし、途中だと思えば続けられる。同じ現実を見ているのに、次にやることが逆になる。

あいつが正しかったのかどうかは知りません。ただ、あの心構えがどう作用するのかは、最近ちょっとわかってきた気がします。
世界が決めてくれないもの
仕事で決めなきゃいけないことには、二種類ある気がしています。
ひとつは、情報を集めれば答えが出るもの。データを揃えて選択肢を並べれば、誰がやってもだいたい同じ結論になるやつです。これは頭の作業で、時間をかければかけるほど精度が上がる。
もうひとつは、どれだけ調べても足りない部分が残るもの。前例がないとか、やってみないとわからないとか。それでも方向は決めないといけない。世界の側が確定させてくれないものを、自分の責任で確定したことにする、みたいな作業です。

前者を判断と呼ぶなら、後者は決断でしょうか。で、仕事で本当にしんどいのはだいたい後者のほう。
AとBで一週間悩む
僕は頭でっかちなので、AかBかで平気で一週間くらい悩みます(そして大抵その一週間に価値はない)。
ただ最近思うのは、そこまで悩めているということは、両方それなりに筋が通っているということなんですよねえ。片方が明らかに筋悪なら三分で決まります。うんうん唸っているというのは、拮抗している証拠でしかない。

拮抗しているなら、期待値もそこまで変わらないはずです。だとすると、どちらを選ぶかより、選んだあとにどれだけ体重をかけられるかのほうが結果を分けます。 選択の巧拙で差がつくと思っているうちは、たぶん悩み続けることになる。
理由はあとから作っていい
そう考えると、決断というのは選ぶ行為ではなく、体重を載せる行為なのかなと。
選んだ瞬間には根拠が足りていません。足りていたら判断で済むので。だから、自分がそこに体重をかけられる理由を、無理やりにでも作ることになります。この案のほうが筋がいい、いま動くべき理由がある、失敗しても次に活きる。なんでもいいんですが、とにかく自分が納得できる形にしてしまう。

自分を騙しているようで、あんまり気持ちのいい作業ではありません。ただ、理由がないまま走り出すと、途中で揺れたときに戻る場所がなくなります。
それに、誰かが強く押してきたときにも、そのまますっと譲ってしまう。ここが厄介で、譲って決まったことには自分の体重が乗っていないので、あとから自分でも守らなくなるんですよね。押し切られた側であると同時に、畳めないものを一緒に作る側にも回ってしまう。
ちゃんとした根拠に支えられた自信は、その根拠が崩れたときに一緒に倒れます。無理やり作ったほうは、もともと大した根拠じゃないので、崩れてもまた作ればいい。折れにくいのは案外こっちだったりする。
ただし期限は切っておく
とはいえ、信じて進むのは期限つきにしたほうがいいと思っています。
前に書いたんですが、売上と負担が釣り合っている案件は、はっきり失敗していないぶん誰も畳めなくて、じわじわリソースを持っていきます。まだ途中だと思えるから続けられるわけですが、同じ理屈で、畳むべきものまで畳めなくなる。
なので走り出す前に、いつ見直すかだけ決めておく。三か月なのか、この施策が一巡するまでなのか。そこまでは疑わずに進んで、来たら一度立ち止まる。決めるときに、ここまでセットにしておくと動きやすい気がします。

冒頭の友人には、たぶん見直しの日は設定されていませんでした。
おわりに、というほどでもないですが
あれが負け惜しみだったことは疑いの余地がないです(改めて言うのも野暮ですが)。ただ、まだ終わっていないと自分に言い張れる人のほうが、次の一手を打てるのは確かだと思います。根拠がなくても、いや、根拠がないからこそ。
僕みたいに考えすぎて動けなくなるタイプには、けっこう効く心構えです。悩んでいる時間はだいたい無駄で、その時間で一回動いたほうが情報が増える。わかってはいるんですが、まあ、また来週も悩んでいる気はします。

ちなみにこの「決めて体重を載せる」は、弱い力の話ともつながっています。相手にじわじわ効かせる手は時間がかかるので、そのあいだ自分がぐらついていると、渡す話が毎回変わって、相手からは何がしたいのかわからなくなる。自分の中に固定点があるから、遅い手が使えるわけで。
※この手の話は弱い力で動かすマネジメントにまとめています。
