見出し画像

摩訶止観。その言葉を知ったのは還暦の頃。向きが変わりはじめた。⑥

古都に住むということは古刹のそばで生きるということ。いやでも仏教文化のただなかに。訳のわからなさもあるけど、目を見開くほど揺さぶられることもある。惹きつける何かが次から次へと。良き仏典を探すように、やみくもに足を向け、あてもなく触手を伸ばしていました。仏教って、なんだろうという素朴な問いは尽きません。

そんななか摩訶止観という言葉に遭遇しました。心を静め、ありのままを観る瞑想のカリキュラム。理詰めだけど理に落ちていない。窒息しそうな現代など物ともせず、心身の静寂と同時に活力を注ぎ込んでくれる。余りのありようにしばらく呆然。自分が備えるべき言葉はこれだと知りました。

摩訶止観を意識し深く呼吸を繰り返していると、その文脈で意味を持つようになり、少しづつ自分が変化していく。天台の智顗が書き起こした瞑想の手順と在り方。私の心の真ん中にこの言葉を据え、あますところなく自由に生きてゆくことにしました。

時計を外して歩くようになりました。私はどこへ向かっているのかと考えているうちに、むさ苦しい現代が遠のいていきます。濁ったもやもやが手放されていきます。世界の見方も変わっていきました。原始林を渡ってくる風は無垢の匂いがします。私がいる場所はここだと思う自分がいました。

いいなと思ったら応援しよう!