完全栄養スープが変える介護食の現場、32種類の栄養素×嚥下配慮で「1杯で足りる」時代へ
「温かいものを出したい」という現場の声に、フードテックが答えた:LacuS『Me SOUP』と口腔・栄養・リハ一体政策の接点
新潟発フードテック企業LacuSが発売した完全栄養スープ「Me SOUP」を切り口に、介護現場が長年抱える低栄養・嚥下対応・オペレーション負荷という三つの課題を整理します。2024年度の介護報酬改定・診療報酬改定で明確に方向づけられた「口腔・栄養・リハ一体的取組」との接続を読み解きながら、この商品がなぜ"今"登場したのかを多面的に検証します。介護・医療・福祉に関わるすべての方に、食支援の新しい選択肢と制度的背景を届けます。

「何か食べさせてあげたいけど、あの人、もうあまり食べられなくて」
在宅介護をしている家族から、こんな言葉を聞いたことがあります。訪問の場面でも、施設のフロアでも、食事まわりの悩みは尽きません。栄養は大事とわかっている。でも、何を、どう出せばいいのかが見えない。飲み込みが心配、調理する時間がない、本人が「もういい」と言う——そんな複数の問題が重なり合うから、食支援は簡単には解決しないのです。
そこに、ひとつの商品が出てきました。新潟市に本社を置くフードテック企業、株式会社LacuSが発売した粉末タイプの完全栄養スープ「Me SOUP(ミースープ)【とうもろこしのポタージュ】」です。お湯に溶かすだけ、常温保存可能、1食で32種類の栄養素を摂取でき、嚥下に配慮したなめらかなとろみが特徴とされています。累計6万個を突破したとされる同社の「完全栄養アイス」に続く第2弾です。
商品そのものの話は後ほど丁寧に掘り下げますが、まず一歩引いて見てみると、この商品が出てきた背景には、制度のほうでもかなり大きな動きがあります。2024年度の介護報酬・診療報酬の同時改定で、「リハビリテーション・栄養・口腔の一体的取組」が明確に政策の中枢に据えられた事実です。食べること、口を動かすこと、身体を動かすこと——この三つをバラバラに管理するのではなく、つながった回路として見る発想が、制度の側から強く後押しされるようになっています。
商品と制度、この二つの流れを重ねて読むと、「Me SOUPはなぜ今なのか」という問いへの答えが自然に浮かび上がってきます。
介護現場の食支援、実態はどこにあるか
高齢者の低栄養は、見かけよりずっと深刻な問題です。厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和元年)によると、65歳以上の低栄養傾向(BMI20以下)の割合は男性12.4%、女性20.7%に上ります。要介護状態にある高齢者ではこの比率がさらに高まることが知られており、低栄養は筋力低下、免疫機能の低下、褥瘡リスクの上昇、感染症への脆弱性などと直結します。
栄養が足りていないと、リハビリの効果も出にくくなります。筋肉はたんぱく質と活動の組み合わせで維持されるものですが、食べる量が落ちれば、どれだけ丁寧にリハビリを行っても回復力の基盤が揺らぎます。この事実は現場でも共有されていますが、「じゃあどうするか」という具体策は、案外整理されていないことが多い。
一方で、介護現場のオペレーション事情も直視しておく必要があります。令和7年10月時点の介護関係職種の有効求人倍率は4.07倍と全職業平均を大きく上回っており(社会保障審議会介護保険部会意見書、令和7年12月)、人手不足は慢性化しています。同意見書では、2022年度に215万人だった介護職員数に対して、2040年度までに約57万人の追加確保が必要とも推計されています。現場で丁寧な食事支援を継続するためには、手間を増やさずに栄養介入できる仕組みが求められています。
こうした構造の中で、「温かくて、飲み込みやすくて、準備が簡単な食品」はどこにあるか、と問えば、実はその選択肢が極めて限られていたことがわかります。高齢者向けの食品市場には多くの製品が存在しますが、温めることができる・嚥下に配慮した粘度・栄養バランスが設計されている・常温保存可能という条件が揃う商品は多くありませんでした。Me SOUPはその空白を意識して開発されたと見るのが自然です。
今回概要まとめ図
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