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【チョーキング】期待が強すぎると,いつもの力が出しにくくなることがある



チョーキング

日本代表の試合を見ながら,
胸が熱くなった先生も
多かったのではないでしょうか

強い相手に向かっていく姿
最後まで走り続ける姿
仲間を信じてボールをつなぐ姿
失点しても,顔を上げようとする姿

結果だけを見れば,悔しさが残ります

でも,あの時間には,
子どもたちに伝えたいものがたくさんありました

挑戦すること
期待を背負うこと
大きな舞台に立つこと
その中で,自分たちらしく戦おうとすること
子どもたちではなく,
大人のガチンコのチャレンジでした

日本代表には,まず感謝を伝えたいです

わくわく,どきどき,
心が動く試合を見せてくれてありがとう
あきらめない姿を見せてくれてありがとう
悔しさも含めて,学びになる時間をくれてありがとう

そして,日本だけではなく,
他国の試合のダイジェストを見ながら,
学校の子どもたちの姿も重なることがあります

本番になると固まる子
練習ではできていたのに,発表で言葉が出なくなる子
テストになると,いつもの力が出せない子
先生や友だちの期待を感じるほど,動きがかたくなる子

力がないわけではありません

やる気がないわけでもありません

期待やプレッシャーが大きくなりすぎると,
いつもの力が出しにくくなることがあります

この現象を考える言葉が,チョーキングです

意味

チョーキングとは,
大事な場面で強いプレッシャーがかかり,
普段ならできることができなくなる現象です

スポーツでよく使われる言葉ですが,
学校にも同じような場面があります

練習では読めるのに,本番の音読でつまる
ノートでは解けるのに,テストで頭が真っ白になる
友だち同士なら話せるのに,全体発表では声が出ない
先生に見られていると思うと,手が止まる
期待されていると感じるほど,失敗が怖くなる

こうした姿は,
「本番に弱い」
「気持ちが弱い」
「もっと自信を持てばいい」
だけでは片づけられません

プレッシャーが高まると,
人は自分の動きや考えを意識しすぎることがあります

いつもなら自然にできていることを,
「失敗しないように」
「ちゃんとやらないと」
「見られている」
と考えすぎることで,かえってぎこちなくなるのです

提唱者・理論の背景

チョーキングは,
英語では choking under pressure と呼ばれます

スポーツ心理学や認知心理学の中で,
大きなプレッシャーのもとで
パフォーマンスが低下する現象として
研究されてきました

Sian L Beilock らは,
プレッシャーの中で人が
自分の動作や手順を意識しすぎることが,
熟達したパフォーマンスを妨げる場合があると
説明しています

また,Roy Baumeister は,
プレッシャー下でのパフォーマンス低下について,
自己意識や注意の向け方との関係を論じました

ここに,
ピグマリオン効果を重ねて考えることもできます

ピグマリオン効果とは,
教師や大人の期待が,
子どもの成長や行動に影響する可能性を示した
考え方です

Robert Rosenthal と Lenore Jacobson の研究を
きっかけに,教師期待の影響が広く知られるように
なりました

ただし,ここで大切なのは,
「期待は必ずよい結果を生む」
と単純に考えないことです

期待は,子どもの背中を押すことがあります

でも,期待が強すぎたり,
結果だけに向けられたりすると,
子どもにとってはプレッシャーになります

つまり,期待は力にもなるし,圧にもなるのです

学校で大切なのは,
子どもに期待しないことではありません

期待を,結果への圧ではなく,
挑戦を支える関わりとして届けることです

Brazil 2-1 Japan, World Cup 2026
https://www.aljazeera.com/sports/2026/6/29/martinelli-scores-late-as-brazil-beat-japan-2-1-enter-world-cup-last-16

学校での事例

ある子は,体育のマット運動で,
練習のときには前転ができていました

でも,みんなの前で発表する時間になると,
急に体が固くなりました

手をつく位置がずれる
勢いがなくなる
途中で止まる
終わったあとに,
「もういや」
と言う

先生は,
「練習ではできていたのに」
と思いました

そして,つい
「大丈夫,あなたならできる」
と強く励ましたくなりました

もちろん,その言葉には期待があります

でも,その子には,
「できなかったらどうしよう」
「みんなに見られている」
「先生ができると思っているのに,
 失敗したらどうしよう」
という不安が大きくなっていました

そこで先生は,声かけを変えました

「成功させることより,まず一つ目の手の位置だけ
 意識しよう」
「みんなの前でなく,先生の横で一回やってみよう」
「できるかどうかより,前より試そうとしたところを
 見ているよ」

その子は,少しずつ動けるようになりました

期待をなくしたのではありません

期待の届け方を,結果への圧から,
挑戦を支える言葉に変えたのです

日本代表から学べること

日本代表の試合を見ていると,
期待の大きさを感じます

勝ってほしい
歴史を変えてほしい
世界を驚かせてほしい
ここまで来たなら,もっと先へ進んでほしい

応援する側の私たちは,そう願います

その期待は,きっと選手たちの力にもなったはずです

同時に,世界の舞台でその期待を背負う重さは,
想像を超えるものだったと思います

だからこそ,結果だけで語りたくありません

あの場に立ったこと
強い相手に向かったこと
最後まで走ったこと
悔しさを引き受けたこと
次の世代に何かを残したこと

出場されるまでの努力の全て……

これら全てに,感謝したいです

兵庫県尼崎出身の堂安律選手の言葉も,
頼もしいです

子どもたちにも,こう伝えたいです

期待されることは,うれしいことでもある
でも,しんどいことでもある
失敗したから,挑戦が消えるわけではない
悔しさは,次の物語につながる
大事なのは,結果だけではなく,その場に向かうまでの歩みと,そこから何を持ち帰るか

日本代表の姿は,そんなことを教えてくれました

チョーキング

気をつけたいこと

チョーキングを学校で考えるとき,
「プレッシャーをなくせばよい」
と考えすぎないことも大切です

子どもには,少し緊張する場面も必要です

発表する
試合に出る
テストを受ける
作品を見せる
自分の考えを伝える

こうした経験は,子どもを育てます

ただし,緊張が大きすぎると,力を出す前に
心と体が固まります

ましてや,
準備の段階で不必要なプレッシャーをかけたり,
ひとつひとつの失敗に見えるような事柄に,
批判したりすることは,
あってはならないのです

だから,先生ができることは,
プレッシャーをゼロにすることではなく,
その子に合った大きさに調整することです

いきなり全体発表ではなく,ペアで話す
一発勝負ではなく,やり直しの機会をつくる
結果だけでなく,準備や工夫を認める
「失敗しても関係は切れない」と伝える
期待をかける子とかけない子を分けない

また,ピグマリオン効果を意識するときにも
注意が必要です

「期待すれば伸びる」
とだけ考えると,期待できる子だけを
強く励ますことになります

大切なのは,すべての子に,その子に合った
期待を届けることです

先生への言い換え

「練習ではできたでしょ」ではなく,
「本番は緊張が大きくなるよね,まず一つだけ
 意識しよう」

「あなたならできる」だけでなく,
「うまくいかなくても,挑戦したところを一緒に
 見ていくよ」

「失敗しないように」ではなく,
「試して,そこから次を考えよう」

「期待しているよ」だけでなく,
「結果だけじゃなく,向かっていく姿も見ているよ」

こう言い換えると,期待は子どもを追い詰める圧では
なく,安心して挑戦するための支えになります

明日からの小さな問い

この子は,期待を力にできているだろうか,
それとも期待が圧になっているだろうか

先生の期待は,結果に向かっているだろうか,
それとも挑戦の過程を支えているだろうか

子どもが本番で固まったとき,先生は
「力がない」
ではなく,
「プレッシャーの中で
 力を出しにくくなっているのかもしれない」
と見られているだろうか

参考にしたいキーワード・リンク

チョーキング
Choking under pressure
プレッシャー
本番
緊張
自己意識
パフォーマンス
ピグマリオン効果
教師期待
挑戦を支える期待
日本代表
感謝

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