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教育探究ひろば 参加者の声 vol. 7 一人では見えない景色を、みんなでつくる―言葉に立ち止まる力を育てる国語授業と、対話の場づくり―にくきゅうさん(公立中学校国語科教員)

キーワード:国語教育/ことば/授業づくり/選択肢の設計/教師の対話

今回は、公立中学校国語科教員であり、教育探究ひろば運営メンバーのにくきゅうさんへのインタビューです。 授業実践の核となる考え方や、教師同士の対話の場づくりへの思いなどについて語っていただきました。

批評研究から始まった、国語教育への問い

―これまでのご経歴と、現在取り組まれていることを教えてください。

大学院では、国語の「批評」について研究していました。研究のきっかけは、PISA調査における「熟考・評価」の力に関する結果でした。日本の生徒は「熟考・評価」の力が十分ではないという結果が出ており、それを受けて学習指導要領に「批評」が位置づけられました。しかし、その「批評」という言葉の意味が曖昧ではないかという疑問を持ったことが研究の出発点でした。
大学院修了後は、公立中学校に4年間、その後大学附属中学校で6年間勤務しました。附属中学校では研究推進委員を務めたことに加え、県の国語教育について考える仕事にも携わり、先生方とともに授業の在り方を考え、議論してきました。
現在は公立中学校に勤務しながら、市の国語教育研究会や教育研究所の研究員として活動しています。

子どもが「言葉に立ち止まれる」授業を目指して

―国語の授業を通して子どもたちがどんな姿になることを目指していますか。

子どもたちが「言葉に立ち止まれる人」になることです。日常の言葉の意味に立ち止まり、それについて自分なりに考えたり、目の前の人にどう言えば伝わるのかを考えたりすることも、賢さの一つだと思います。そうした姿勢を育てたいと考えています。

そのような姿勢を育てるため、授業では生徒の身近な言語文化をできるだけ取り入れることを意識しています。学校で学ぶ古典は、日常から遠い存在に思えますが、実は現代の言語文化の中にも受け継がれています。例えば、最近のJPOPの歌詞の中には俳句をもとにした表現が使われていることがあります。こどもたちは、なぜその俳句がその曲に使われているのかを考えることで、言葉に立ち止まり、言語文化のつながりに気づくことができます。

子どもが選ぶことで生まれる学び

―授業ではどのような実践に取り組まれていますか。

私は授業の中で、子どもが選択できる余地をつくることを意識しています。
附属中学校に勤務していた頃は、単元学習の中で「切実な課題設定」を行う授業づくりが重視されていました。しかし実際には、その課題設定を行うことが難しいと感じることも多くありました。教材が1つしかない場合、それが合う生徒もいれば合わない生徒もいます。子どもたちの意欲を大切にするのであれば、教材にも多様な選択肢があってよいのではないかと考えるようになりました。

ただし、自由にするだけでは授業として成立しません。教師が育てたい力とずれないように、どのように選択肢を設計するかを考えることが重要になります。この「選択肢の設計」は、現在も私の授業実践の中心にあるテーマです。

授業の展開の仕方としては、大きく3つほどのパターンがあります。

1つ目は、教師がいくつかの教材を提示し、その中から生徒が選ぶ方法です。短歌や俳句の授業では、この形が取り入れやすいです。

2つ目は、生徒自身が教材を持ち寄る形です。例えば表現技法の授業では、「この一行がすごい」というテーマで好きな歌詞を持ってきてもらい、そこに使われている表現技法を自分の言葉で解説します。

3つ目は、教科書で必ず扱う作品を別の角度から捉え直す方法です。例えば「走れメロス」であれば、「この物語の主題歌を選ぶとしたらどの曲がふさわしいか」といった問いを立てます。物語の主題を考えながら曲を選ぶことで、作品理解を深めていきます。

対話から広がった学び

―教育探究ひろばを知ったきっかけは何でしたか。

教育探究ひろばの存在は、以前からSNSを通して知っていました。参加してみたいと思いながらも緊張してなかなか参加できず、最初に参加したのは仙波歩先生の、国語教育をテーマとした回でした。読みの方略について関心があったこともあり、思い切って参加しました。

その後、ひろばの運営メンバーであるリュシスさんと交流するようになり、リュシスさんが企画している博士論文を読む会にも参加させていただくようになりました。

特に印象に残っている対話会は、「教師のねがい」をテーマにした回です。その2週前の回では「良い授業・うまい授業とは何か」について議論され、1週前の回では「職場の同僚性」についての話がありました。そうしたテーマが「教師のねがい」という話題につながり、授業や仕事に対する願いが異なる教師同士がどのように協力できるのかという問いを考えるようになりました。複数回参加することで、対話のテーマが自分の中でつながっていく感覚がありました。

教師同士の対話をどう生むか

―教育探究ひろばで得たことは、ご自身の実践にどう繋がっていますか。

教師同士の対話の場をどうつくるかという点で、探究ひろばでの対話の経験がヒントになっていると感じています。

現在、市の研究推進委員長として研究の方針を考えたり、通信を作成して市内の学校に共有したりしていますが、実際には研究の意図が伝わらないことも少なくありません。各学校でプリントが配布されていなかったり、アンケートの回答が集まらなかったりすることもあり、現場で研究を進める難しさを感じています。

附属中学校で研究に関わっていたときも、トップダウンの形で進めた時期にはうまくいかなかった経験があります。研究部の先生たちとそうでない先生たちの問題意識がかみ合わず、結果として私が担当していた部会は「研究のための研究」になってしまいました。最後の1年はワークショップ形式に変更し、先生方が課題に感じていることからテーマを設定し、先生方が書いたり話したりする時間を増やしたことで、少しずつ状況が変わっていきました。

どうすれば教師同士が同じ方向を向いて対話できる場をつくれるのか。どうすれば皆で授業づくりを進められるのか。そうした問いは、今も自分の中にあります。

正直に言えば、一人で研究を続ける方が楽です。しかし、それでは学校全体が変わったり、地域全体で「みんなで頑張った」という実感を持つことは難しいと感じています。だからこそ、どうすれば共通の言葉が生まれるのか、どうすれば価値観を出し合いながら一つの方向性をつくることができるのかを考え続けています。

その背景には、初任の学級経営を一人で抱え込もうとしすぎて、疲弊してしまった経験があります。当時は「自分で何とかしなければ」と思い込み、周囲に頼ることができませんでした。その経験があるからこそ、今は人とつながりながら教育をつくっていくことを大切にしています。

点と点がつながり、星座になる

ー教育探究ひろばに今後期待することは何ですか。

教育探究ひろばには、これからも「ひろば」であり続けてほしいと思っています。普段はそれぞれの立場で働いている人たちが、肩書きを脱ぎ捨ててふらっと立ち寄れる場所。公園のように、座り心地のよいベンチや日当たりのよい場所があるような、そんな場であってほしいと感じています。
教育団体の中には、「この方法を皆で実践しましょう」といった形で活動しているところも多いと思います。しかし探究ひろばは、1つの方法を広める団体ではありません。さまざまな立場の人が集まり、多様な視点から教育について語り合える場所です。

自分にはない視点に出会える、とても貴重な場だと思います。ぜひ参加してみてください。そして一度だけでなく、複数回参加してみることをおすすめします。異なるテーマの対話に参加していくうちに、最初はバラバラに見えていた問いが自分の中でつながり始めます。

点と点がつながり、やがて星座のように見えてくる。そんな学びの体験が、この場にはあると思います。

編集後記

今回のにくきゅうさんのお話からは、ねがいや問題意識の異なる教師同士が協力してよりよい教育をつくっていくための対話の場づくりの難しさや、その中での葛藤が伝わってきました。
教育探究ひろばでは、自分の専門分野にとどまらずさまざまなテーマについて対話を重ねることで、お互いの考え方の違いや良さを知り合い、新たなつながりが生まれていくのではないかと感じています。
これからも、そのような出会いや対話が生まれる「ひろば」を続けていきたいと思います。

(取材・文 副島知子)





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