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同じドイツでもこんなに違う ― ラインガウとモーゼル、地形から読み解く二大銘醸地

今回は教本の「ドイツの二大銘醸地」の章から。

ラインガウとモーゼルは、どちらもリースリングの銘醸地として並び称されるけれど、実際にどう違うのか、文章を読んだだけだと今ひとつ地形がイメージできなかったので、自分なりに図にしながら整理してみます。


位置関係、地形、生育環境について

文字を読んでも理解ができなかったので、Claudeに図を作ってもらった。

Claudeで作成
  • ラインガウ:フランクフルトの西、ライン川沿い。北側にタウヌス山地があり、これが北風を遮っている。また、南向き30kmの一枚斜面になっているおかげで、日照と熱を最大限に集めることができる。

  • モーゼル:ラインガウよりさらに西、ルクセンブルクとの国境に近いあたり。モーゼル川沿いに畑が広がり、周囲はアイフェル・フンスリュックといった別の山地に囲まれている(タウヌス山地とはつながっていない)。ラインガウと比べると、南向きの斜面そのものは少ない。ただ、急斜面と黒い岩という2つの仕組みで、その分の日照・熱を補っている。

それぞれどんなふうなワインになるのでしょうか?
上の2つの文章を読むと、ラインガウの方が日照を集めてそうなので、光合成が活発に起こり、結果的に糖度の高いリースリングが育ちそうです。では実際にそうなのか、教本の記述で確認してみます。

地形の違いがワインのスタイルにどう繋がるのか

改めて、教本にあった一文を読み直してみます。

「(ラインガウは)モーゼルと比べると、ぶどうの熟度が高く、酸が鋭すぎないため、近年は甘口よりも辛口スタイルが増えてきています」

「ゼロからスタート!ソムリエ試験 1冊目の教科書」

正解のようです。ぶどうの熟度が高い=糖度が高いので。
そして以前の記事(ドイツワイン法は、なぜ「糖度」から「土地」へ向かったのか)でも書きましたが、地球温暖化によってドイツでもぶどうが熟しやすくなっており、糖度が上がりやすくなっています。

また、健康志向の高まりなどから、甘口ワインが敬遠されやすくなっている風潮を踏まえて、このような辛口スタイルが増えているのです。

ワインのスタイルは、2つの銘醸地で下記のように異なります。

  • ラインガウ:力強く、小花の香りはやや控えめ。近年は辛口が主流

  • 華奢で繊細。白い花や柑橘の香りがきれいに出やすく、やや甘口


なぜモーゼルの方が、花の香りがはっきりするのか

ここでもう一つ疑問が浮かびました。小花の香りが、ラインガウではあまりしないのに、モーゼルでは世界一はっきり香るのはなぜなんだろう、と。同じ品種なのに、香りの強さまで変わってしまうのが不思議です。教本にはこの点についての説明はなかったので、自分なりに調べてみたいと思います。


そもそも「小花の香り」って何?

考える前に、まず「小花の香り」というテイスティング表現そのものが何を指しているのか、自分でも曖昧だったので調べてみました。

ワインの世界で「白い花」「小花」と表現されるのは、ジャスミン・アカシア・リンデン(菩提樹)・スイカズラ(ハニーサックル)といった、白くて香りの強い花々のニュアンスのことを指すようです。ぶどうそのものが花のような匂いを持っているわけではなく、こうした具体的な花の記憶と結びつけて表現されている、ということのようです。


なぜ熟度によって香りが変わるのか

調べてみると、この「白い花」の香りのもとになっているのは、リナロールやゲラニオールといったテルペン系の香気成分でした。リースリングはこうした香気成分をもともと前駆体として豊富に含む、アロマティック品種と呼ばれるタイプのぶどうです。発酵や熟成の過程でそれが香りとして感じられる形に変わると、花や柑橘の印象がはっきりします。

IVES(国際ブドウ・ワイン学術ネットワーク)が発表している研究によると、夜間の気温が高いほど、リナロールなどのテルペン濃度が下がることが確認されているそうです。逆に言えば、夜の気温が低く保たれる冷涼な産地ほど、こうしたテルペン系の香り成分が失われずに残りやすい、ということになります。

これをラインガウとモーゼルに当てはめると、かなり辻褄が合う気がします。ラインガウは日照に恵まれて熟度が高くなりやすく、気温も相対的に高いぶん、花の香りの成分が失われやすい。逆にモーゼルは酸が高く、夜間も含めて涼しい環境が保たれる分、テルペン系の香り成分がそのまま残りやすい。だからモーゼルの方が、小花の香りがはっきり出るのではないか、ということのようです。

教本に直接この理由が書かれていたわけではなく、自分で調べて組み立てた説明ではありますが、「気温が高いとテルペンが減る」という研究結果に基づいているので、単なる思いつきよりは根拠のある話だと考えています。

まとめ

  • ラインガウは、東西に流れる川のおかげで南向きの斜面がまとまり、力強く辛口寄りのワインになりやすい

  • モーゼルは、川が蛇行する分を急斜面と粘板岩の蓄熱で補い、華奢で甘口寄りのワインになりやすい

  • 近年の辛口化には、気候変動や消費者の健康志向の高まりが影響している

  • モーゼルの花の香りが強いのは、夜間も涼しい環境でテルペン系の香り成分(リナロール・ゲラニオールなど)が保たれやすいからではないか(推察)

飲み比べワインリストに、ラインガウとモーゼルのリースリング飲み比べも入れておきました✅

次回は、ドイツの他の3つの注目産地について勉強していきます!

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