生きていく上で不利なオスを選ぶメス
グッピーのメスは華やかなオスを好むので、華やかなオスほど子供をたくさん残すことができる。そのため、華やかなオスが増えてきたという興味深い論文がある。
精子と卵の受精する数が異なることによって起きる自然淘汰を、性淘汰という。グッピーのように、異性に対する好みによってある形質が進化するのは、典型的な性淘汰だ。
グッピーのメスがなぜ華やかなオスを好むのかは、よくわからない。華やかなオスは地味なオスよりも捕食者(グッピーを食べる魚)に見つかりやすいので、生きていく上では不利なはずだ。不利なオスを選ぶようなメスが、どうして進化したのだろうか。
グッピーの棲んでいる熱帯雨林には、オレンジ色など華やかな色の果物が多い。そして、こういう果物は、しばしば渓流に落ちてくる。そのとき、華やかな色を好むグッピーは、真っ先に果物に近づいて、たくさん食べることができる。つまり、華やかな色を好むグッピーは、食べることに関しては有利になる。
そして、華やかな色の果物を好むグッピーのメスは、華やかな色のオスも好む傾向がある(これは実験によって確かめられているそうだ)。
つまり、華やかな色を好むグッピーは、「食べること」に関しては有利だが、「オス選び」に関しては不利なのだ。それとは反対に、華やかな色を好まないグッピーは、「食べること」に関しては不利だが、「オス選び」に関しては有利になる。

カナダ生まれの進化生物学者、ジョン・エンドラー(1947~)は、このグッピーの進化について、いくつもの有名な研究を行った。
例えば、滝の上流と下流のグッピーを観察すると、明らかな違いがある。上流のグッピーのオスは華やかで、下流のグッピーのオスは地味なのだ。
また、滝の上流と下流におけるグッピーの捕食者の数にも違いがある。滝の上流には捕食者が少なく、下流には多い。
つまり、「グッピーのオスの華やかさ」と「捕食者の少なさ」の間には、相関関係がある。
華やかなグッピーは捕食者に見つかりやすい。だから、捕食者が多ければ、華やかなグッピーは減るはずだ。いっぽう、捕食者が少なければ、華やかなグッピーは増えることになる。
こんな興味深い事実が書かれているのが、更科 功 氏の「未来の進化論 - わたしたちはどこへいくのか」だ。
これを人間にあてはめてみるとどうなるか。
ラッキーなことに人間には捕食者である敵がいない。食べられてしまうことがないので、目立つ男女は生き延びて子供をたくさん作ることができる。
けれど複雑なことに経済力などの他の要素が絡んでくる。
一説によると、仕事ができて経済力のある人間のメスは、不甲斐ない、けれど見栄えのいいオスを選ぶ傾向が高いそうだ。
人間のオスとメスの進化については、まだまだ謎が多いようだ。
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