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【あなたに会えて幸せ】/第5章第28話「由比ヶ浜の風と九人の笑顔」

かねてから、結婚式準備を進めていた。
トモキも私も、祖父母が他界している。
私たち3人とお互いの両親だけのささやかな結婚式にしよう。

と、思ったけど、招待したい人がいた!

友達がいない私だったけれど、唯一養護学校時代の親友《さわ(茶話)》を誘ったら、参列してくれることになった。
5年ぶりにさわに電話。

「さわ? 私、ミクよ」
「あーーー、ミク!
 どうしてたのよ、今まで。
 卒業したら、LINEアカウントはなくなってるし、《現在使われていません》だし。
 寂しかったよ」
「本当にゴメンね。会って伝えたいの」

はるの世話は、トモキに任せ、
次の日、鎌倉の由比ヶ浜で、さわに会った。

午前十時、駅から潮の匂いに導かれて歩を進めると、朝の光を浴びて白くきらめく由比ヶ浜の海が広がっていた。
かつて鎌倉幕府の武士たちが武技を競い、幾多の合戦が繰り広げられた歴史の表舞台に、爽快な南風が吹き抜けていく。
激動の歴史を底で支えてきた浜辺の風は、驚くほど優しく、私の車椅子の背中をそっと押して髪を揺らした。

車椅子のひじ掛けに置いた私の手に、五年ぶりの親友の懐かしい声が、あたたかな風とともに重なった。

「5年ぶりね、本当にゴメンね」
「いいの。こうして再会できたから」
「実はね。結婚して子どもがひとり」
「何それ~! めちゃくちゃ幸せ!」
「これから、私の家に来てって言ったら」
「もちろん行くよ。ミクの旦那さんとおこちゃま。会いたい」
「ありがとう!
 車輪のロックを解除する瞬間が、楽しいよね。さぁ、発進!」

カチャン、カチャン。

笑いながら、私たちはロックを解除した。

さわを家に招き、トモキと遥を紹介した。
結婚式にも心良く参列してくれることになった。

トモキが事故で車椅子生活になったら、
それまでの友達がひとり去りふたり去り、
今も交流が続いているのは、ひとりだけだと言う。
その友達を招待することになった。
名前は、《海斗》さん。
小学校からの水泳のライバル。

私・トモキ・はる・お互いの両親・さわ・海斗さん。
9人だけの小さな結婚式、披露宴。

はるの首が据わった4月に、私たちは挙式。

式場との打ち合わせ、というか、私たちの要望は、
・新婦入場は、赤ちゃんを抱っこして車椅子自操。新婦の父が並んで歩く
・新郎新婦ともに車椅子。牧師さんの祭壇を無くし、牧師さんに椅子に座っていただけますか?
・式の最中、授乳やオムツ替えがあるかも。
・新郎新婦/両親/親友、合わせて9人の披露宴。
 テーブル2つ。
 懇親会のような宴にするので、料理は簡単なもので良い。司会者・お色直し・ケーキ入刀など不要。
・披露宴の最中、授乳やオムツ替えがあるかも。

要望は、全て聞き届けてもらえた。
披露宴の規模の割には、料金が高かったけど。

さぁ!
いよいよ結婚式だ!



第29話に続く


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