【あなたに会えて幸せ】/第5章第29話「誓いのキスと小さなくしゃみ」
結婚式は、4月10日。
幸い、良いお天気。
ポカポカ暖かく、遥を連れて出かけるには、程良かった。
式場へは、ストレス無く行けた。
親友茶話も大丈夫だろう。
新郎新婦それぞれの控室で準備。
私のウェディングドレスには、面白い仕掛けがある。
準備が済み、私は遥を胸に抱いた。
コアラ抱き。
その時!
プーンと嫌な臭いが鼻をつく。
(うわ~!
婚約者入場の前に、うん○!)
隣で父が
「あちゃー」
私は、手早く取り替えて自分の手も除菌シートで拭いた。
「実はな、俺もやられたんだ。
あとで話すよ、さぁ行こう!」
「うん!」
私たちは、扉の向こうへ。
タキシード姿のトモキが待つ祭壇へ。
静かに進んだ。
パイプオルガンの厳粛な響き。
私は自分で車椅子を漕ぎ、
肩には、父の優しい手。
祭壇に到着。
父とトモキが、お互いに黙礼。
父は振り返り席についた。
讃美歌312番を歌う。
慈しみ深き、友なるイエスは~
そのあと、牧師さんが聖書を朗読。
車椅子の私たちに合わせ、椅子に腰掛けて。
教会初らしい。
「健やかなるときも、病めるときも、互いに愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
同じ高さで向き合う牧師さんの問いかけに、トモキと私は声を揃えて、力強く答えます。
――「誓います」。
そして、指輪の交換。
ここまでは、トラブルなく進行した。
さぁ、問題は「誓いのキス」。
遥を抱いたまま、上手くできるかな?
家で散々練習したのよ。
車椅子2台、並べて参列者を向いて、
胸元の遥を真ん中に、トモキも手を添える。
触れ合う唇の温もり。
その時、
「クシュン!」
遥が小さなくしゃみをした。
静かなチャペルに響いたその愛らしい音に、トモキも私も、お互い顔を見合わせて思わず吹き出してしまった。
第30話に続く
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