景色の向こう側にある物語を探して。①特急ひだで高山へ
はじめに
私は、旅先の景色を見るだけではなく、
「なぜ、この場所にこの文化が生まれたのか」
「そこにはどんな人々の想いがあったのか」
を知ることが好きです。
車を持たない私にとって、旅の計画はいつも「どうやってその場所へ行くか」を考えるところから始まります。
でも、時間をかけてたどり着いた先で出会う景色や、その土地で受け継がれてきた食文化、そこで暮らしてきた人々の歴史は、きっと移動の大変さ以上の感動を与えてくれる。
そんなことを、これまでの旅で何度も感じてきました。
今回向かったのは、岐阜と富山。
きっかけは、「前回やり残したこと」と「ずっと憧れていた場所」でした。
岐阜の飛騨高山では、推しカラーで作るオリジナルさるぼぼ作り体験。
もう一度味わいたかった郷土料理「漬物ステーキ」。
そして、世界遺産検定2級を取得してから、いつか自分の目で見たいと思っていた白川郷の景色。
富山では、WEST.の濵田崇裕くんが『朝だ!生です旅サラダ』で食べていた白えびを食べること。
ずっと行きたいと思っていた、富山ガラス美術館。
日本唯一の「水のエレベーター」を体験できる富岩運河クルーズ。
そして、海の幸と日本酒のペアリングを楽しむこと。
旅の前は、そんな「行きたい場所」「食べたいもの」を楽しみにしていました。
でも、旅を終えて一番心に残ったのは、予定していた観光地だけではありませんでした。
クルーズのガイドさんから聞いた、ひとりの女性の物語。
偶然知った富山の歴史。
長い年月をかけて受け継がれてきた食文化。
目の前に広がる景色には、必ずそこに生まれた理由があります。
そんな「景色の向こう側」にある物語を探しながら巡った、岐阜・富山2泊3日の旅。
今回は、旅を一日ごとに全3回に分けてお届けします。
1日目は、特急ひだに乗って高山へ。
2日目は、白川郷を経て富山へ。
3日目は、富岩運河クルーズと岩瀬を巡ります。
それでは、まずは大阪駅から高山へ。
約4時間15分の列車旅とともに、岐阜・富山2泊3日の旅を始めます。
一日目:高山
大阪駅から高山へ直通!特急ひだで旅のはじまり
今回の旅は、大阪駅11番ホームから始まりました。
普段は新幹線(新大阪駅)や飛行機(伊丹空港)を利用することが多い私にとって、大阪駅から旅立つのは少し新鮮です。
11番ホームを利用するのは、2023年10月以来。
発車を待ちながら、「ここからどんな旅が始まるんだろう」と、自然と気持ちが高まっていきました。
大阪から高山へ向かうルートといえば、新大阪から新幹線で名古屋まで行き、そこから特急ひだに乗り換えるのが一般的です。
でも実は、大阪駅から高山駅まで乗り換えなしで行ける「特急ひだ」が1日1本運行しています。
平日は7:58発・12:14着、土日祝は8:02発・12:14着。(2026年7月現在)
所要時間は新幹線ルートより約30分長くなりますが、その分運賃は少し抑えられます。
何より乗り換えがないので、大きな荷物を持って移動する旅行ではとても快適でした。


車内は東海道新幹線の色違いのような座席で、各席にはコンセントも完備。
約4時間15分という長旅でも、スマートフォンの充電を気にせず過ごせるのは嬉しいポイントです。
私が乗車した日は平日でしたが、指定席車両は満席。
自由席に座れず、デッキで過ごす方も多く見かけました。
海外からの旅行者の姿も目立ち、飛騨・高山エリアの人気の高さを実感します。
旅行シーズンに利用するなら、指定席は早めに予約しておくのがおすすめです。

長い乗車時間のお供に選んだBGMは、WEST.のアルバム『唯一無二』。
旅をテーマにしたアルバムなので、「今日の旅にはこれしかない!」と迷わず再生しました。
車窓を流れる景色を眺めながら聴いていると、かなりテンションが上がります。
「この選曲、大正解やったな!」
まだ目的地にも着いていないのに、そんなことを思いながら、ひとり満足していました。
そして、この列車でぜひ楽しんでほしいのが車窓の景色です。

岐阜駅を出てしばらくすると、列車は飛騨川沿いを走る区間へ。
エメラルドグリーンに輝く川と、荒々しい岩肌が織りなす景色は本当に美しく、気づけば何度も窓の外へ目を向けていました。
この景色を見た瞬間、
「A席を予約して本当によかった!」
と心から実感。
特急ひだに乗るなら、ぜひ景色が楽しめる、進行方向右側の窓際A席をおすすめします。
約4時間15分という長い移動時間も、美しい景色とお気に入りの音楽のおかげで、あっという間。
目的地へ向かう時間さえ、旅の思い出になりました。
そして、この先には、ずっと訪れたかった高山、白川郷、富山が待っています。
「どんな景色に出会えるんだろう。」
「その景色には、どんな物語が隠れているんだろう。」
そんな期待を胸に、列車は飛騨の山あいを走り続けました。
幼い頃の思い出の味をたどって、本場の高山ラーメンへ
高山駅に到着したら、まずは本日宿泊するカントリーホテル高山へスーツケースを預け、お待ちかねの昼食へ向かいます。
高山に来たら、「本場の高山ラーメンを食べる」。
それは今回の旅で、最初から決めていたことでした。
実は私にとって、高山ラーメンは少し特別な存在です。
子どもの頃、家の近くにあったイトーヨーカドーのレストラン街に、高山ラーメンのお店がありました。
家族で買い物に行くたびによく食べていて、幼い私にとっては「ラーメンといえばこの味」と思うほど、思い出に残っています。
けれど、イトーヨーカドーの閉店とともに、そのお店もなくなってしまいました。
もう、あのラーメンを食べることはできません。
だから今回の旅では、「本場の高山ラーメンはどんな味なんだろう?」そして、「子どもの頃に食べていた味と、どこか重なるんだろうか?」
そんな小さな答え合わせも、この旅の楽しみのひとつでした。

今回訪れたのは、「まさごそば」。
高山ラーメン発祥の店とも言われている老舗です。
このあとは食べ歩きも楽しみたかったので、注文したのは500円の小サイズ。
「少しずつ、いろいろ食べたい」という人や小食の方には、ちょうどいい量だと思います。

運ばれてきたラーメンは、見た目は醤油の色が濃く、「しっかりした味なのかな?」という印象。
ところが、ひと口スープを飲んでみると、その印象はいい意味で裏切られました。
驚くほどあっさりとしていて、どこかほっとする優しい味。
思わず、「飲んだ後に食べたくなるラーメンだな」と感じました。
トロトロに煮込まれたチャーシューに、シャキシャキ食感のメンマ。
シンプルだからこそ、一つひとつの具材のおいしさが際立ち、最後まで飽きずに食べることができます。
思い出の味とは少し違っていました。
でも、それで少し残念だったわけではありません。
「これが、本場の高山ラーメンなんだ。」
そう感じられたことが、なんだか嬉しかったんです。
旅先で名物を味わう楽しさは、その土地の味を知ることだけではありません。
昔の記憶をたどったり、自分の思い出と重ね合わせたり。
そんな"自分だけの物語"が生まれるのも、旅の魅力なのだと思います。
推しカラーで世界に一つだけ!オリジナルさるぼぼ作り体験
高山でどうしても体験したかったことのひとつが、ガイドブックで見つけた「さるぼぼ作り」。
「さるぼぼ」とは、飛騨地方の方言で「猿の赤ちゃん」という意味。
昔から、無病息災や良縁を願うお守りとして、地元の人々に大切にされてきた存在です。
今回訪れたのは、飛騨高山の伝統文化を体験できるひだ高山まちの体験交流館。
ここでは、本体・腹当て・ちゃんちゃんこ・飾り紐を好きな色で選び、自分だけのオリジナルさるぼぼを作ることができます。
実は、最初は布タイプのさるぼぼを作ろうと思っていました。
ところが、はまちゃんのメンバーカラーの本体紫色が見当たらない……。
「それなら、ウッドタイプしかない!」
ということで、本体は迷うことなくウッドタイプに決定。
さらに、腹当てやちゃんちゃんこの色も「WEST.の推しメンバーカラーで統一する」と最初から決めていたため、選択はほぼ即決でした(笑)

あまりの決断の速さに、作り方を教えてくださった係の方にも驚かれるほどでした。
作り方はとても簡単で、腹当てに好きな文字やイラストを描き、選んだパーツを本体にボンドで貼り付けていくだけ。
10分ほどで完成しました(笑)

完成した私のさるぼぼは、こだわりを詰め込んだ特別仕様。
本体はもちろん、はまちゃんの紫。
ちゃんちゃんこは、のんちゃんのピンク。
腹当ては、流星くんの青。
そして、写真には写っていませんが裏側の飾り紐には、しげちゃんの赤を忍ばせました。
自分の好きなものと、高山で出会った伝統文化を組み合わせた、世界にひとつだけのさるぼぼ。
旅の思い出として持ち帰れるのはもちろん、ふと目にするたびに、高山で過ごした時間や景色を思い出せる、特別なお土産になりました。
色の組み合わせは自由なので、家族や友人への贈り物として作るのもおすすめ。
好きな色で作るのもよし、大切な人を思い浮かべながら作るのもよし。
そして私のように、推しカラーを詰め込んだオタク仕様にするのもよし!(笑)
高山でしか作れない、自分だけの思い出を形に残せる体験です。
古い町並みを歩きながら、日本酒と飛騨牛を満喫!
さるぼぼ作りを楽しんだ後は、高山の古い町並みをのんびり散策。
高山の古い町並みが今も美しく残っているのには理由があります。
江戸時代、高山は幕府の直轄地(天領)として栄え、商人町として発展しました。
町家が立ち並ぶ「三町伝統的建造物群保存地区」には、その頃の面影が今も大切に受け継がれています。
だからこそ、歩いているだけで江戸時代へタイムスリップしたような気分を味わえるのです。

格子戸の美しい町家が並び、歩いているだけで自然と旅気分が高まります。
風情ある通りには、お土産屋さんや酒蔵、食べ歩きグルメのお店がコンパクトに集まっているため、目的を決めすぎず、気になるお店にふらっと立ち寄る散策がおすすめ。
高山ならではの景色を眺めながら、のんびり歩く時間そのものが、この町の大きな魅力です。
お酒好きならぜひ体験してほしいのが、酒蔵での日本酒の試飲。
飛騨地方は、清らかな水と寒冷な気候を活かした酒造りが盛んな地域。
歴史ある酒蔵が町の中に残っており、散策しながら日本酒文化に触れることができます。
今回は原田酒造場と船坂酒造店の2軒を訪れました。


華やかな香りと、丁寧に造られた日本酒ならではの味わいを楽しめました。

一方、船坂酒造店には、コインを使って好きなお酒を選べる試飲コーナーがあります。
気になる銘柄を少しずつ飲み比べられるシステムになっており、日本酒好きにはたまらない空間。
甘口から辛口まで、さまざまな味わいを少量ずつ試せるので、自分好みのお酒を探す楽しさがあります。
思わず「ここ、日本酒のテーマパークや!」と言いたくなるほど、ワクワクする時間でした。
日本酒を楽しんだ後は、もうひとつのお楽しみ。
飛騨牛のバラ串をいただきました。

一口食べると、お肉は驚くほど柔らかく、噛むほどに飛騨牛ならではの濃厚な旨みが口いっぱいに広がります。
そして、特に印象に残ったのが添えられていた山椒塩。
爽やかな香りとほどよい刺激が、お肉の甘みや旨みをさらに引き立ててくれます。
山椒好きの私にとっては、まさに最高の組み合わせでした。
高山の魅力は、歴史ある町並みを歩きながら、地元のお酒を味わい、ご当地グルメを少しずつ楽しめるところ。
観光地をただ巡るだけではなく、その土地の文化や味を五感で感じられるのが、高山散策の醍醐味です。
時間に余裕を持って歩けば、きっと自分だけの高山の楽しみ方に出会えると思います。
地元で愛される居酒屋で、郷土料理を味わう
高山で過ごす1日目の締めくくりに選んだのは、地元の人に長く愛されている居酒屋「樽平」。
店内に入ると、お母さんと娘さんのお二人が温かく迎えてくださいました。
どこか実家に帰ってきたような、ほっとする雰囲気。
店内では大相撲中継が流れていて、その光景を眺めていると、子どもの頃に祖母と一緒にテレビで相撲を見ていた時間を思い出しました。
当時は、若貴ブーム真っ只中。
外国出身力士といえば、ハワイ出身の曙、武蔵丸、小錦が活躍していた時代でした。
お店のお母さんとも自然と相撲談義に。
「昔はこうだったよね」「今は本当に時代が変わったね」と、世代を越えて盛り上がる時間は、まるで昔から知っている人と話しているような温かさがありました。
旅先で出会った方と、共通の話題で会話が弾む。
そんな何気ない交流も、旅の大きな楽しみのひとつだと感じました。

最初の一皿から、家庭的で優しい味わいに癒やされます。
そして、このお店は日本酒好きにもぜひおすすめしたい一軒です。

地元・飛騨の地酒を中心に、秋田のお酒など種類豊富な日本酒が揃っています。
飲み比べメニューも充実していて、料理に合わせながら少しずつ違う味わいを楽しめるのも魅力。
その土地で造られたお酒を、その土地の料理と一緒に味わう。
これこそ、旅先でしかできない楽しみ方だと思います。
この日の目的は、もちろん飛騨地方の郷土料理「漬物ステーキ」。

前回岐阜で食べた漬物ステーキは、お店の看板メニューらしい完成された一皿でしたが、こちらはまた違った魅力がありました。
白菜の漬物だけではなく、しめじやちくわも入っていて、「家にある材料で作りました」というような家庭的な味わい。
同じ郷土料理でも、お店によってここまで個性が違うのかと驚かされました。
そして、この日一番心を掴まれた料理が焼きナスでした。

目の前で焼いてくださるナスから、じゅわっと香ばしい香りが広がります。
「これは絶対においしい」
そう確信するほどの、食欲をそそる香りでした。
そして、ひと口食べて納得。
とろとろになるまで焼かれたナスに、たっぷりとのったネギ味噌が相性抜群。
ナス本来の甘みと味噌のコクが口いっぱいに広がり、思わず「今まで食べた焼きナスで一番おいしい」と感じるほどでした。
旅先では、つい有名な名物料理を探してしまいがち。
でも、こうした何気ない一品に感動できるのも、地元の人が通うお店だからこその魅力です。
高山で夜ご飯のお店を探すなら、ぜひ地元で長く愛されている居酒屋へ。
料理のおいしさだけではなく、お店の方との会話や温かな空気感も含めて、その土地で過ごした大切な旅の思い出になるはずです。
2日目は、こんな旅。
高山を後にして、2日目はいよいよ念願の白川郷へ。
世界遺産の合掌造り集落を歩きながら、自分の目で見てみたかった景色を楽しみます。
そして次に富山へ。
ずっと訪れたかった富山ガラス美術館では、ガラスが織りなす幻想的な世界に出会いました。
岐阜から富山へ、景色が大きく変わる2日目。
どんな一日になったのか、ぜひこちらからご覧ください。
