父を亡くして学んだ「食べること」の意味|急性期病院での葛藤と使命
1. 療養型病院での現実
父を亡くした経験をきっかけに管理栄養士を志し、専門学校を経て療養型病院に勤務しました。
※療養型病院とは、急性期の治療を終えても長期に療養が必要な患者さんが過ごす場所です。
3年の実務経験を積んで管理栄養士資格を取得しましたが、資格を取っても業務内容は変わらず、給食管理に追われる毎日。現場の役割は簡単には変わらない現実を知りました。

「もっと患者さんの栄養に直接関わりたい」
その思いから、私は転職を決意しました。
▼これまでのストーリーはこちらです
2. 栄養士としての転機——特定保健指導との出会い
栄養指導や栄養管理に携われる病院を探しましたが、応募のたびに突きつけられたのは「栄養指導経験が必須」という条件。療養型病院で給食管理しか経験のない私には、その壁が大きく立ちはだかりました。
そんなときに出会ったのが「特定保健指導」の仕事です。
これは、生活習慣病の予防を目的に、健康診断でリスクが見つかった方へ食生活や運動習慣の改善を支援する取り組み。
未経験でも挑戦できる募集でした。
ここでの1年間は、対象者に寄り添いながら、
「どう伝えれば行動が変わるのか」
を試行錯誤する日々。
栄養指導の基礎を実践で学び取る、大きな経験となりました。
——そしてこの経験が、次のキャリアへの扉を開くことになります。

腹囲や体重を測り、食生活を見直すきっかけに
3. 念願の急性期病院へ
特定保健指導で得た経験を武器に、ついに念願だった「急性期病院」への採用が決まりました。
※急性期病院とは、病気やけがの発症直後など、患者さんの状態が不安定な時期に集中的な治療を行う病院です。
検査や手術が立て続けに行われ、病状が大きく変化するため、医療スタッフには常に迅速で的確な判断が求められます。
私が入職して最初に担当したのは HCU(High Care Unit:高度治療室)。
HCUは、ICU(Intensive Care Unit:集中治療室)と一般病棟の中間に位置づけられる病棟で、緊急入院の患者さんを多く受け入れる場所でもあります。
ICUほど生命維持装置に依存するわけではないものの、依然として重症度は高く、24時間体制で全身状態を見守る必要がありました。
そうしたHCUを任されたことは、
管理栄養士として大きな挑戦の始まりでした。

毎日の変化を見逃さず、適切な栄養を届ける

栄養計算と盛り付けに心を込める

制限を解除するなど食事摂取を優先に
4. 初めての「死」と向き合う
働きはじめて間もなく、私は初めて患者さんの死に直面しました。それは、心不全を繰り返していた患者さんでした。
昨日まで栄養状態を必死に検討していたのに、翌日にはベッドが空になっている。
急性期の現場では、生と死が隣り合わせにあることを痛感しました。
その現実は大きな衝撃であり、時に無力感に押しつぶされそうになる瞬間もありました。
5. 管理栄養士としての使命
けれど同時に、「栄養管理は命に直結する」という事実を、これほど強く感じたことはありません。
一口の食事、一滴の輸液。
その栄養が患者さんの回復を助け、時に生命をつなぎとめる。

管理栄養士が大きく関わる大切な仕事
その責任を果たすために、私は現場の仕事と並行して新たな学びにも挑戦しました。
最初に取得したのは 日本糖尿病療養指導士。
続いて 心不全療養指導士、そして 病態栄養専門管理栄養士へと学びを広げていきました。
患者さんと向き合うたび、「もっと知識と技術があれば」と感じた思いが、そのまま資格取得への原動力になっていったのです。
6. 今、思うこと
急性期の現場は、常に迷いと葛藤の連続です。
「この栄養管理が本当に最善なのか」
「もっとできることはないのか」
そう自問しながらも、一人ひとりの患者さんと向き合い、チームの一員として最善を尽くすしかありません。
父を亡くして「食べることの意味」を学び、栄養士から管理栄養士、そして急性期病院へ。
その道のりは決して平坦ではありませんでしたが、すべてが今の私を支える糧になっています。
そして、この間に取得してきた資格。
糖尿病、心不全、病態栄養——。
それぞれの学びは、臨床の現場を支える大きな力となりました。
日々進化する栄養学を学び続けながら、患者さんの「食べたい」気持ちを大切にする。
その実践の積み重ねを、これからも続けていきたいと思います。


この資格取得のストーリーについては、次回改めて綴る予定です。
いつもより長めの文章になってしまいました。
最後まで読んでいただきまして、
どうもありがとうございました。
