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Jiggerpoling(中編)─ 釣り文化とバスの習性

前編では、ジガーポーリングの道具立てと歴史、そして1960年代までの米国南部における全盛期を概観しました。リールを用いず、18フィートもの長竿で水面を叩くその技法は、非常に興味深いものでした。
中編では、この原始的な釣法がなぜ成立したのか、その背景にあるディープサウスの食文化、標的であるブラックバスの生態・習性、そしてその他の伝統釣法を、引き続きOutdoor Life誌に掲載された、ビル・フィリップス氏の記事を起点にレポートします。

ディープサウスの釣り文化

Outdoor Life の原記事は、舞台を次のように設定しています。

「If you have ever fished the lakes and rivers of the Deep South, you have probably seen at least one zany-looking character moseying along close to shore in a boat while he slapped the water with the tip of an 18-foot pole.」
(要約)「ディープサウス(深南部)の湖や川で釣りをしたことがあるなら、18フィートの竿で岸近くを水叩きしながらゆっくり進む、ちょっと風変わりな人物を一度は見かけたことがあるはずだ」

出典:Outdoor Life

ディープサウスとは、概ねアラバマ、ミシシッピ、ルイジアナ、ジョージア、サウスカロライナといった地域を指します。これらの地域はサイプレス(ヌマスギ)が生い茂る沼地、三日月湖、ブラックウォーター・リバー、ハスやウォーターヒヤシンス(ホテイアオイ)が繁茂する野池など、ブラックバスの生息に極めて好適な水域に恵まれていました。

ラージマウスバス(Micropterus nigricans、旧学名 M. salmoides、サンフィッシュ科)の天然分布域はアメリカ東部・中部、カナダ南東部、メキシコ北部に及び、ジョージア州・ミシシッピ州の州魚、フロリダ州・アラバマ州の州淡水魚に指定されるなど、深南部の文化的アイデンティティと強く結びついた魚種です。出典:Wikipedia

アラバマ州 ─ ジガーポール文化の中心地のひとつ

Outdoor Life の原記事に登場するビル・スロゲット(本名William Lloyd Sloggett)氏とボボ・ジョンソン(Bobo Johnson)氏は、いずれもアラバマ州を拠点とするジガーポーラーです。出典:Outdoor Life

Mossy Oakのフィッシング・コンテンツでは、デモポリス(アラバマ州中西部)の街で、クラシックウィナーのランディー・ハウエル(Randy Howell)がジガーポール釣りを実演する映像も公開されており、アラバマ州ではジガーポール文化が現在も継承されていることが確認できます。

レイ・スコットもアラバマ州に居を構え、晩年まで「適切なジガーポールの作り方について語り合った」と、彼の旧知であるSporting Classics誌のダンカン・グラント(Duncan Grant)氏は追悼文で記しています。出典:Sporting Classics Daily

サウスカロライナ州・Edisto(エディスト)川 ─ 黒水川の冬

サウスカロライナ州を流れるエディスト川は、北米最長の自由流下するブラックウォーター河川として知られ、サイプレスツリー(糸杉)や広葉樹の沼地が広がる景観を有します。出典:Thoroughbred Country South Carolina
先住民エディスト族(Cusabo連邦の一部)の名に由来し、河岸には数千年の人類定住の痕跡が残ります。出典:ERCK Trail SC Encyclopedia

このエディスト川で今もジガーポーリングを実践しているのが、Ridgeville在住のビリー・ガーナー(Billy Garner)氏です。Carolina Sportsman誌の取材に、彼はこう語っています。

「It's very effective on really cold, even miserable days. Those are the days that I have the most luck jigger-poling.」
(要約)「凍えるような、最悪に近い天気の日にこそ威力を発揮する。ジガーポーリングが最も当たるのは、そういう日だ」

出典:Carolina Sportsman

同じ南部でも、Outdoor Life が描く春〜夏のシャローパターンと、エディスト川の真冬の張り出した木のシェードパターンとでは、気候風土に合わせて運用が分化していることが分かります。

ミシシッピ川流域 ─ Oxbow Lake(三日月湖)の文化

キース・サットンが回想するミシシッピ川沿いの三日月湖は、平坦な氾濫原に点在する濃密なカバーを伴う典型的なバス水域です。サットン氏が叔父のガイから受け継いだ装備は、彼らがクラッピー(北米産小型サンフィッシュ)用に使っていた14フィートのケーンポールを流用するもので、ジガーポーリングが特別な高級道具ではなく、家庭にある竹竿に少しの工夫を加えて成立する「庶民の釣り」だったことが分かります。出典:Game & Fish Magazine

「生計」から「文化的遺産」へ

Outdoor Life が「Southern forefathers used it to put plenty of fish on the menu」(南部の先人たちは食卓に魚を並べるためにこれを使った)と書いたとおり、ジガーポーリングは元来自給自足的漁の一形態でした。出典:Outdoor Life

Mossy Oakは現代における文化的位置づけを次のように整理しています。

「Having learned the tactic from a young age at the knee of a father, uncle, or grandfather, for many, takes them back to shared memories and a time when fishing was just a simple pastime.」
(要約)「父・叔父・祖父の膝の上で幼い頃に教わったこの技は、多くの人にとって共有された記憶と、釣りが単なる素朴な娯楽だった時代へと連れ戻してくれる」

出典:Mossy Oak

すなわち、現代のジガーポーリングは「効率の良い釣法」というよりも「世代間継承される文化的実践」として位置づけられています。

ブラックバスの習性と「ジガーポーリングが効く理由」

Ambush Predator

ジガーポーリングが成立する最大の根拠は、ラージマウスバスの行動生態にあります。Wikipediaのラージマウス項目は、その狩猟行動を次のように記述しています。

「Under overhead cover, such as overhanging banks, brush, or submerged structure, such as weedbeds, points, humps, ridges, and drop-offs, the largemouth bass uses its senses of hearing, sight, vibration, and smell to attack and seize its prey.」
(要約)「張り出した岸、潅木、水中構造物、ウィードベッド、岬、ハンプ、リッジ、ドロップオフなどのカバー下で、ラージマウスバスは聴覚・視覚・振動・嗅覚を駆使して獲物を襲い、掴み取る」

出典:Wikipedia

バスはカバーで待ち伏せて、振動と音と視覚で獲物を感知する習性があり、これがジガーポール釣法の前提となります。

「ストライク・ウィンドウ」とリアクションバイト

In-Fisherman誌は、バスが何故ルアーに食いつくかを次のように解説しています。

「Each bass has an area to the front and slightly to each side within which it's likely to make a successful attack. A bass senses it can attack and catch prey within this window...」
(要約)「個々のバスは前方と斜め前方に攻撃成功率の高い『ストライク・ウィンドウ(攻撃可能領域)』を持ち、その範囲内であれば捕獲可能と感じれば攻撃に出る」

出典:In-Fisherman

ジガーポーリングは、18フィートの長竿によってこのストライク・ウィンドウの直上にルアーを「置き続ける」ことができる点で合理的です。キース・サットンは次のように説明します。

「the lure remains longer in the fish's strike zone than a lure being cast and retrieved.」
(要約)「キャスト&リトリーブの釣りに比べ、ジガーポールはルアーがバスのストライクゾーンに長く留まる」

出典:Game & Fish Magazine

Outdoor Life 記事中のビル・スロゲット氏の有名な比喩は、この合理性を端的に表現しています。

「The plugcaster tosses in a peanut-size lure and immediately reels it away before the bass can make up its mind. On the other hand, the jiggerpoler swishes a bellyful of porkchops under the fish's nose long enough to excite his appetite or raise his hackles.」
(要約)「プラグキャスターは豆粒大のルアーを投げ、バスが決断する前に巻き取ってしまう。ジガーポーラーは、ポークチョップのご馳走をバスの鼻先で長々と振り回し、食欲か怒りを掻き立てる」

出典:Outdoor Life

「なおIn-Fisherman誌の解説によれば、しばしば『リアクションバイト』と呼ばれる反応は、厳密には闘争心ではなく捕食本能の発露とされます。これは『脆弱な獲物が突然現れた』という認識に基づくもので、産卵床防衛の場合のみ純粋な闘争(aggression)として説明されます。」
ジガーポーリングが行う水面叩きは、「弱った小魚や落水した小動物が逃げ惑う音と引き波」を模倣することで、捕食本能側のスイッチを押す行為と解釈できます。出典:Outdoor Life In-Fisherman

産卵期の縄張り防衛行動

春のスポーニングシーズンには、別のスイッチが働きます。BassOnlineの解説によれば、ラージマウスバスは水温 約15.6〜23.9℃(60〜75°F)で産卵活動を行い、その際オスは産卵床を防衛して縄張り侵入者を攻撃する性質を持ちます。出典:Bass Online

Outdoor Life の原記事は、春のジガーポーリングについて、次のような皮肉めいた表現を残しています。

「The veteran jiggerpoler dislikes the spring. Why? Because he invariably catches his limit before he is ready to call it a day.」
(要約)「ベテランのジガーポーラーは春が嫌いだ。なぜなら、満足するより先にリミット(保持上限)に達してしまうからだ」

出典:Outdoor Life

※個人的に産卵床のバスを釣ることを否定も肯定もしませんが、バスの習性を知るためには重要な情報です。

季節ごとの行動と運用

Outdoor Life は四季それぞれの戦術を以下のように記述しています。
以下要約です。

  • :シャローでの産卵集中。前述のとおり過剰に釣れる。

  • :日中の暑さを避けてバスは奥のシェードに入る。「summer doldrums(夏の凪期)」にはboondocks(奥地)を叩く。

  • :「really whip up the action(本当にアクションが燃え上がる)」。より大型で獰猛な個体が当たる。

  • :「湖や川の日向側」に集まる。日光浴をするバスは、ジガーポールの実践者にとって冬の好機となる。

冬の項目で Outdoor Life は「The black bass is a member of the sunfish family, and all sunfish love to bask in the radiant heat of the sun on a calm winter day.(ブラックバスはサンフィッシュ科の一員であり、サンフィッシュ類はいずれも穏やかな冬の日光浴を好む)」と説明しています。出典:Outdoor Life

中編のおわりに

本稿では、ジガーポーリングが単なる奇抜な釣法ではなく、ディープサウスの風土と生活様式に深く根ざした実践であることを、複数の地域事例を通じて確認しました。この技法が生計手段から世代間の文化的遺産へと移り変わった過程を示しています。

また、ジガーポーリングは「ルアーを攻撃可能圏内に長く留める」という点で極めて合理的であり、ビル・スロゲットが言う「ポークチョップのご馳走を鼻先で振り回す」比喩は、経験と照らし合わせても納得のいく表現でした。

次回(後編)は、その他のリールを使わない伝統釣法について、リサーチする予定です。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。


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