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Jiggerpoling(前編)─ 「キャストしない」バス釣り

本稿は、米国の老舗アウトドア誌 Outdoor Life が2026年5月22日付で復刻公開された、ビル・フィリップス(Bill Phillips)氏の記事「This Forgotten Bass Fishing Tactic Required 18-Foot Poles and Lures the Size of Pike Bait」を起点に、米国の釣り専門メディア・ローカル紙・百科事典等を横断的に調査し、ジガーポーリング(jiggerpoling / jigger pole fishing)という伝統的なバス釣法について、その歴史・文化・道具・対象魚であるブラックバスの習性を整理したものです。

なお、元となった Outdoor Life の記事は、リード文に「This story was originally published in the June 1970 issue of Outdoor Life.」と明記されているとおり、1970年6月号に初出した記事の再掲です。出典:Outdoor Life

ジガーポーリングとは何か

基本的な定義

ジガーポーリング(jiggerpoling/jigger pole fishing、別名 doodle-socking とも呼称されることがあります)は、リールを使わず、長尺の竿の先端に短い太糸を結びつけ、その先端のルアーを水面で「叩く」「8の字を描く」などして動かし、岸際のカバーに潜むブラックバスを誘い出す釣法です。出典:Outdoor Life Mossy Oak

英語版Wikipediaは次のように要約しています。

「A jiggerpole (or jigger pole) is a long fishing pole that is used with a short and heavy line, usually a foot (0.3 m) or less of 50 lbf (220 N) test or heavier.」
(要約)「ジガーポールは長竿であり、おおむね30センチ以下の、50lbテスト以上の太糸を伴って使用される」道具・釣法だ、ということです

Wikipedia: Jiggerpole

竿・ライン・ルアーの構成

ジガーポーリングの典型的な装備は次のとおりです。

  • 竿の長さ:1970年の Outdoor Life オリジナル記事では「18〜20フィート(約5.5〜6.1m)」の竹竿または同等長のグラスファイバー製テレスコピックポールが推奨されています。出典:Outdoor Life

  • 一方、Mossy Oakのフィッシング・ブログでは「12〜15フィート(約3.7〜4.6m)」の現代用ポールが紹介されており、Game & Fish誌のキース・サットン(Keith Sutton)による解説でも「14フィートのケーンポール」が往時の標準として記されています。すなわち時代と地域・実践者によって12〜20フィートと幅がある点に留意が必要です。出典:Mossy Oak Game & Fish Magazine

  • 竿の素材:伝統的には乾燥させた竹(bamboo/cane)、現代ではグラスファイバーやグラファイトの複合素材が用いられます。米国のポール製造メーカーB'n'M Pole Companyは現在も「Ray Scott Jigger Pole」という14フィート/16フィートのグラスファイバー製モデルを販売しています。出典:Mossy Oak B'n'M Pole Company

  • ライン:往時はダクロン(Dacron)糸を竿の根元から先端まで電気テープで等間隔に固定し、竿先から30cm前後だけを出す方式が一般的でした。出典:Game & Fish Magazine
    現代では30〜80lbテストのPEラインが用いられ、エディスト川(サウスカロライナ州)のビリー・ガーナー(Billy Garner)氏は60ポンドテストの編糸を使用しています。出典:Game & Fish Magazine Carolina Sportsman

  • ルアー:いずれも「pike-size big」、すなわちパイク用ルアー並みの大型ルアーが用いられます。具体的にはジョイントタイプの木製プラグ(南部では「crackbacks」と呼ばれる)、葉巻型ミノー、プロップベイトなどです。キース・サットンが特に好んだのはHeddon社のDowagiacシリーズで、この巨大ルアーを使うことから「dowjacking」という別名も生まれました。出典:Outdoor Life Game & Fish Magazine

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動作 ─ 「キャストしない」釣り

最大の特徴は、ルアーをキャストしないことです。
Outdoor Life の原記事は、ジガーポーラーの所作を次のように描写しています。

「The jiggerpoler holds the pole's butt with one hand while his other hand grips the pole some three to four feet up the shaft. By jigging with his forward hand, he constantly slaps the water with the tip of his pole to create a bubbly wake ahead of the approaching plug...」
(要約)片手で竿のバットを握り、もう一方の手で根元から3〜4フィート(約90〜120cm)先のシャフトを掴み、前方の手で「ジギング動作」を行うことで、竿先を常に水面に叩きつけ、ルアーの前方に小さな泡の引き波を作るというものです。

出典:Outdoor Life

その後、停止状態では「figure eights and tight circles(8の字や小さな円)」をルアーで描き、竿先の「spat, spat, spat(ピシャッ、ピシャッ、ピシャッ)」という打音を絶え間なく続けます。船はエレキを足で操作し、両手をフリーにしてシャローラインや倒木周りを静かに進みます。
(※エレキはフットコンとは限りません。)

バスがバイトすると、リールがないため手繰り寄せ式のランディングになります。エディスト川のビリー・ガーナーは次のように説明しています。

「With no reel and a very limber rod, ... the only way to get the fish in is to pull the rod straight in, hand over hand until you've got the whole rod in the boat...」
(要約)「ロッドを真っ直ぐ船内に引き込み、手繰り寄せて魚を捕る。時にはロッドが反対舷からはみ出すこともある」というものです。

出典:Carolina Sportsman

現代のバスフィッシングの「タックルに仕事をさせる」原則と真逆の、極めて原始的なファイトです。


歴史と起源 ─ 「antiquity に消えた」古き技術

起源は不明

ジガーポーリングの厳密な起源について、Outdoor Life の原記事は端的に「The art's origin is lost in antiquity.(その技法の起源は古代の彼方に失われている)」と述べています。ただし、同記事はこう続けます。

「There is really nothing new about jiggerpoling except that artificial lures have replaced animal skin and live bait. ... Our Southern forefathers used it to put plenty of fish on the menu.」
(要約)「ルアーが動物の皮や生き餌に取って代わったという点を除けば、ジガーポーリングに新しい要素は何もない。南部の先人たちは食卓に魚を並べるためにこの技を用いた」

出典:Outdoor Life

「14世紀起源説」

ジガーポール用品メーカーB'n'Mの製品ページには、B.A.S.S.創設者レイ・スコット(Ray Scott)氏の見解として、次の記述があります。

「The Jiggerpole method for catching bass dates back to the 14th century, making it one of the oldest, and most productive, fishing techniques known.」
(要約)「ジガーポール釣法は14世紀に遡り、知られる最も古く生産性の高い釣法のひとつである」

出典:B'n'M Pole Company

【注釈】この14世紀説は、製品PRサイト上の記述であり、学術的な一次資料は本調査では確認できませんでした。

英語版Wikipediaでは、以下のような記述があります。

「Fishing with a jiggerpole is perhaps the oldest known method of capturing bass with an artificial lure.」
(要約)「ジガーポール釣りはおそらく、人工ルアーでバスを獲る最古の方法である」

出典:Wikipedia

Wikipediaの同項目は出典として Pennsylvania State University(1971)『Complete book of baits, rigs and tackle』と Cornell University(1993)『Jiggerpoles』Field and stream誌第98巻148頁を挙げています。

近縁の伝統釣法と確認可能な最古の文献記録

ジガーポーリングと近縁関係にある「skittering(スキタリング)」については、Game & Fish誌のキース・サットンが次のように紹介しています。

「One earliest description of skittering was written in 1791 by naturalist/explorer William Bartram who observed it being used in the southeast U.S... In Fishing in American Waters published almost a century later in 1888, we learn from Genio Scott that skittering was still popular...」
(要約)「スキタリングの最古の記録の一つは、博物学者・探検家ウィリアム・バートラムが1791年に南東部米国で観察した記述である。約100年後の1888年刊『Fishing in American Waters』でもジェニオ・スコットが、その人気と進化を伝えている」

出典:Game & Fish Magazine

ウィリアム・バートラム(William Bartram, 1739-1823)は、アメリカ独立期を生きた著名な博物学者で、1791年刊の旅行記『Travels through North & South Carolina, Georgia, East & West Florida...』は米国初期博物学の古典です。出典:NCpedia Wikipedia
バートラムの観察記録は18世紀末の南東部に長竿を用いた水面叩き釣法が定着していたことを裏付ける文献的物証となります。出典:NCpedia Game & Fish Magazine

ジガーポーリングそのものは、artificial lures(人工ルアー)の登場と切り離せません。米国における近代的な木製ルアーの始祖はジェームズ・ヘドン(James Heddon, 1845-1911)とされ、1898年にミシガン州ドワジャックのMill Pondで自作のカエル型ルアーを試したのが嚆矢であり、1902年に同社が創業したのは、広く知られています。
したがって人工ルアーを用いた現在の姿のジガーポーリングが完成するのは、ヘドン社のDowagiac Minnowなどがリリースされた1905年前後以降と考えるのが自然です。出典:Wikipedia

1960年代 ─ 米国南部における全盛期

ジガーポーリングが最も盛んだったのは、1960年代までの米国南部各地です。キース・サットンは次のように回想しています。

「I first learned jiggerpoling in the mid-1960s. It was a common bassing method then on the Mississippi River oxbow lakes I fished with my Uncle Guy. ... It wasn't unusual to see a dozen bassers using this technique along a half-mile stretch of shore.」
(要約)「1960年代半ば、ミシシッピ川の三日月湖で叔父のガイと釣りをしていた頃、ジガーポーリングは一般的なバス釣法だった。半マイル(約800m)の岸沿いに十数人のジガーポーラーが並んでいることも珍しくなかった」

出典:Game & Fish Magazine

注目すべきは1960年代後半が米国近代バスフィッシング産業の黎明期と重なる点です。
レイ・スコットが世界初のプロ・バス・トーナメント「All-American Bass Tournament」をアーカンソー州Beaver Lakeで開催したのは1967年6月、B.A.S.S.の創設も1967〜1968年です。

Outdoor Life の1970年6月号にこの記事が掲載されたのは、まさに伝統的なジガーポーリングが、近代化するトーナメント・バス・フィッシングと並存していた最終盤にあたる時期だったことになります。出典:Outdoor Life Bass Fishing Hall of Fame

前編まとめ

前編では、米国の伝統的バス釣法「ジガーポーリング」について、その定義、タックル、そして歴史的背景を複数の資料から整理しました。

  • 定義と方法:12〜20フィートの長竿と短い太糸を用い、キャストせずに水面を叩いてバスを誘う、リールレスの釣法。

  • 歴史:起源は不明瞭ながら、ルアーの登場した20世紀初頭に現在の形が完成。1960年代まで米国南部で隆盛を極めました。

この釣法がなぜ「most productive(最も生産的)」とまで呼ばれたのか。次回は、その理由をさらに多角的に調査します。「地域的釣り文化」「バス習性とジガーポーリング」をレポートする予定です。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。


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