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今こそBTRON? AI OSの夢を見ながら、昔のOSを思い出した

前回、AI OSの夢について書きました。

今のOSは、人間がアプリを選び、ファイルを探し、保存場所を管理する前提でできている。
でも生成AIが常駐する時代になれば、人間がやりたいことを伝えて、AIが必要な情報やアプリを束ねてくれるOSが出てくるかもしれない。

そんな話です。

人間がフォルダを掘るのではなく、
「あの件」で探せる。

人間がアプリを行き来するのではなく、
「これをやりたい」と伝える。

人間が手順を覚えるのではなく、
AIが下準備をして、人間が最後に確認する。

そんなOSが出てきたら面白いな、と思ったわけです。

そして、その記事を投稿したあと、ふと思いました。

今こそ、BTRONなのではないか。

……いや、正確には、BTRONそのものというより、
BTRONが見ていた夢に、ようやく時代が少し追いついてきたのではないか。

そんなことを思いました。

BTRONって何?

BTRONという名前を聞いて、懐かしいと思う人もいれば、まったく知らない人も多いと思います。

ざっくり言うと、BTRONは、1980年代に日本で進められていたTRONプロジェクトの中で考えられた、パソコン向けのOS構想です。

WindowsやMacのように、

アプリを開く。
ファイルを探す。
保存場所を決める。
フォルダで管理する。

という世界とは少し違って、もっと人間が自然に情報を扱える環境を目指していたOS、と言えばよいでしょうか。

画面上のものを直接操作する。
文書や情報を部品のように扱う。
アプリ同士の壁を低くする。
人間の作業に合わせてコンピュータ側を設計する。

そういう思想があったように見えます。

今の言葉で言えば、かなり早い時期に、

人間中心の情報環境

を目指していたOSだったのだと思います。

AI OSの夢と、BTRONの夢は少し似ている

前回書いたAI OSの話は、要するにこういうことでした。

人間がコンピュータの都合に合わせるのではなく、
コンピュータが人間の目的や文脈に合わせてくれるようになってほしい。

これは、BTRONの思想と少し重なる気がします。

BTRONは、当時の技術で、人間が自然に情報を扱えるOSを目指した。
AI OSは、生成AIを使って、人間の曖昧な目的や文脈を扱えるOSを目指す。

もちろん、時代も技術も違います。

BTRONの時代には、今のようなクラウドもありません。
スマホもありません。
生成AIもありません。
APIでいろいろなサービスがつながる世界でもありません。

それでも、目指していた方向には共通するものがある気がします。

つまり、

人間がファイルやアプリに振り回されるのではなく、
人間の作業や思考に近い形でコンピュータを使いたい

という夢です。

この夢自体は、かなり昔からあったのだと思います。

ただし、BTRONを神格化したいわけではない

ここで、BTRONすごい、日本すごい、という話にしたいわけではありません。

BTRONには、今見ても面白い思想がある。
それは確かだと思います。

でも同時に、僕は少しこじんまりした不安も感じます。

人間が文書を扱う。
情報を整理する。
画面上の部品を操作する。
人間にとって自然な情報環境を作る。

この方向性はとても魅力的です。

ただ、現実のコンピュータ利用は、もっと雑多です。

開発環境。
サーバー。
ネットワーク。
セキュリティ。
クラウド。
ゲーム。
動画編集。
企業システム。
スマホ。
Web。
AI。
古い社内システム。
よくわからないExcel。
誰が作ったかわからないマクロ。
謎のCSV。
とりあえず残っている共有フォルダ。

こういうものまで全部飲み込めたのかと言われると、少し不安があります。

BTRONは、理想の机としては美しい。
でも、世界は机の上だけでは終わりませんでした。

コンピュータの世界は、もっと泥くさく、もっと雑で、もっと混沌としていました。

勝ったOSは、きれいなOSではなく、雑多さを飲み込んだOSだった

Windowsにしても、Unix/Linuxにしても、思想として完璧に美しかったから勝った、というより、いろいろなものを飲み込めたから生き残った面が大きい気がします。

古いソフトも動く。
いろいろなハードに対応する。
業務アプリが乗る。
開発環境がある。
ネットワークにつながる。
企業が導入できる。
周辺機器が使える。
多少ぐちゃぐちゃでも、なんとか動く。

この「なんとか動く」は、かなり強いです。

理想のOSは美しい。
でも、現実のOSには、汚い現場に耐える力が必要です。

ここは、AI OSを考えるうえでも大事な気がします。

AI OSも、きれいなデモだけなら簡単です。

「この資料をまとめて」
「メールを書いて」
「予定を調整して」
「関連ファイルを探して」

こういうデモは、とても未来っぽく見えます。

でも現実には、

権限が違う。
データ形式が違う。
APIがない。
ファイル名がぐちゃぐちゃ。
同じ資料が3つある。
最新版がわからない。
社内ルールがある。
監査ログが必要。
ミスしたときの責任がある。
人によって仕事のやり方が違う。
例外処理ばかりある。

こういう世界です。

つまり、AI OSも、BTRONと同じ罠にはまる可能性があります。

思想は美しい。
でも、現実の雑多さを飲み込めない。

そうなると、便利そうだけど一部の用途でしか使えない、こじんまりした環境で終わってしまうかもしれません。

今こそBTRON、ただしそのままではなく

だから、僕が思う「今こそBTRON」は、BTRONをそのまま復活させよう、という意味ではありません。

そうではなく、

BTRONが見ていた人間中心の思想を、
クラウドと生成AIと雑多な現実に耐える形で作り直す

という意味です。

人間がファイル名を覚えなくてもいい。
人間がアプリの壁を意識しなくてもいい。
人間が保存場所を探し回らなくてもいい。
人間が毎回同じ作業手順を思い出さなくてもいい。

この方向性は、今でも十分に魅力的です。

むしろ、今のほうが必要かもしれません。

なぜなら、昔よりも情報は増え、アプリは増え、クラウドは増え、通知は増え、作業は分断されているからです。

パソコンの中だけならまだよかった。
今は、情報があちこちにあります。

ローカルPC。
スマホ。
クラウドストレージ。
チャット。
メール。
GitHub。
社内システム。
メモアプリ。
カレンダー。
ブラウザ。
SNS。
動画サイト。
生成AIとの会話履歴。

これらを人間が全部つなぐのは、かなり無理があります。

だからこそ、AI OSのようなものが必要になる。

そして、その根っこには、BTRON的な「人間中心の情報環境」の夢がある気がします。

AI OSには、理想と泥くささの両方が必要

AI OSに必要なのは、きれいな思想だけではありません。

人間中心であること。
文脈を扱えること。
アプリの壁を越えられること。
ファイルやフォルダを意識しなくてもよいこと。

これは大事です。

でも、それだけでは足りません。

権限管理。
監査ログ。
取り消し機能。
API連携。
レガシーシステム対応。
データ形式の違い。
セキュリティ。
失敗時の責任分界点。
人間の確認フロー。

こういう泥くさい部分も必要です。

AI OSが本当に普及するなら、たぶんここを避けて通れません。

「AIがいい感じにやってくれます」だけでは、仕事では怖いです。

何を見たのか。
なぜそう判断したのか。
どこまで自動でやったのか。
どこから人間が承認したのか。
失敗したときに戻せるのか。

ここまで含めてOSにならないと、夢だけで終わってしまいます。

BTRONは、早すぎた夢だったのかもしれない

BTRONが主流にならなかった理由を、ここで細かく語るつもりはありません。

歴史的な事情もあったでしょう。
市場の問題もあったでしょう。
アプリ資産の問題もあったでしょう。
タイミングの問題もあったでしょう。

ただ、今の目線で見ると、BTRONは単なる負けたOSというより、

早すぎた夢

だったのかもしれないと思います。

人間が自然に情報を扱う。
アプリやファイルの都合ではなく、人間の作業を中心に考える。
コンピュータを、人間の思考や生活に近づける。

この夢は、今でも古びていません。

むしろ、生成AIが出てきたことで、ようやく別の形で実現できる可能性が出てきた。

そう考えると、BTRONは過去の遺物というより、AI OSを考えるためのヒントなのかもしれません。

終わりに

前回、AI OSの夢を見ました。

人間がアプリを操作するのではなく、
人間が目的を伝えて、AIが作業を組み立てるOS。

フォルダをなくすのではなく、
フォルダを人間に見せなくても困らないOS。

何でも勝手にやるのではなく、
下準備をして、人間に確認させるOS。

そんなものが出てきたら面白い、と書きました。

そして今回、BTRONを思い出しました。

昔にも、似たような夢を見ていた人たちがいたのだと思います。

ただし、今こそBTRONと言っても、懐古だけでは足りません。

必要なのは、BTRONの思想をそのまま持ち上げることではなく、
その夢を、今のクラウド、生成AI、セキュリティ、業務システム、雑多な現実に耐える形で作り直すことです。

理想の机は美しい。
でも、世界は机の上だけでは終わらない。

だからこそ、AI OSには、夢と泥くささの両方が必要なのだと思います。

昔夢見たOSは、まだ終わっていないのかもしれません。

形を変えて、生成AIの時代にもう一度やってくる。

今こそBTRON。

ただし、今度は、世界の雑さまで飲み込める形で。

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