AI OSの夢を見た。昔夢見たコンピュータが、ようやく来るかもしれない
スマホが出てきたとき、僕は少しだけ思いました。
ああ、これでフォルダ管理から解放されるのかもしれない。
パソコンのように、
どこに保存したっけ。
どれが最新版だっけ。
これはローカルだっけ、クラウドだっけ。
あのファイル名、何にしたっけ。
そんなことを、もう考えなくてよくなるのかもしれない。
写真は写真アプリにある。
音楽は音楽アプリにある。
メモはメモアプリにある。
アプリを開けば、そこに必要なものがある。
フォルダという概念は、スマホによって彼の地へ送られた。
……と思っていました。
でも、現実はそう甘くありませんでした。
写真にはアルバムがあり、
ファイルアプリがあり、
iCloud Driveがあり、
Google Driveがあり、
OneDriveがあり、
ダウンロードフォルダがあり、
共有フォルダがあり、
スクショがあり、
LINEやSlackの添付ファイルがあり、
アプリごとの保存場所がある。
結局、フォルダは死んでいませんでした。
名前を変えて、帰ってきただけでした。
スマホはフォルダを消したのではなく、
ただ見えにくくしただけだったのかもしれません。
今のOSは、人間ががんばる前提でできている
考えてみると、今のOSはまだかなり人間に厳しいです。
Windowsでも、macOSでも、iOSでも、Androidでも、基本は同じです。
人間がアプリを選ぶ。
人間がファイルを探す。
人間が保存場所を決める。
人間が手順を覚える。
人間が設定画面を探す。
人間がアプリとアプリの間をつなぐ。
もちろん昔に比べれば便利になりました。
検索もある。
クラウド同期もある。
共有もできる。
ショートカットもある。
自動化ツールもある。
でも、根本の考え方はあまり変わっていない気がします。
コンピュータは、アプリとファイルを用意してくれる。
でも、それをどう使うかは人間が考える。
つまり、今のOSはまだ、
人間がコンピュータの都合に合わせている
のだと思います。
AI時代なら、OSを仕切り直せるかもしれない
ところが、生成AIが出てきて、少し空気が変わってきました。
今までなら、OSの操作体系を大きく変えようとすると、たぶん反発されます。
スタートメニューの場所が変わるだけでも文句が出ます。
設定画面の位置が変わるだけでも混乱します。
ボタンの名前が変わるだけでも、使いにくくなったと言われます。
でも今は、少し違います。
「AI時代だから、操作の考え方も変わります」
と言われたら、なんとなく受け入れられる空気があります。
人間がアプリを選ぶのではなく、
人間が目的を伝える。
人間がファイルを探すのではなく、
AIが文脈から探す。
人間が手順を覚えるのではなく、
AIが作業の流れを組み立てる。
人間は、全部を操作するのではなく、
確認し、修正し、承認する。
そういうOSが出てきても、おかしくない気がします。
AI OSとは何か
ここでいうAI OSは、単にOSにチャットボットが付いているものではありません。
画面の端にAIボタンがある。
質問すると答えてくれる。
文章を要約してくれる。
それだけなら、今のOSにAIアプリを追加しただけです。
僕が夢見ているAI OSは、もう少し根本が違います。
アプリ中心ではなく、目的中心のOSです。
たとえば、
「この前作っていたAI駆動開発の記事の続きをまとめて」
と言えば、関連するメモ、チャット、GitHub、設計書、過去記事を探してくれる。
「動画生成ツールの文字切れ問題に関係するファイルを出して」
と言えば、実装ファイル、テスト、設計書、過去の会話をつなげてくれる。
「この記事をnoteに投稿したあと、X用の文も作って」
と言えば、記事の内容を見て、投稿文を作り、必要ならサムネ文言も提案してくれる。
「昨日の会議で話した件、何をやるんだっけ」
と言えば、カレンダー、議事録、チャット、資料を横断して、次の作業を出してくれる。
つまり、AI OSは、
アプリを起動する場所
ではなく、
人間の作業文脈を管理する場所
になるのだと思います。
フォルダをなくすのではなく、意識しなくてよくする
ここで大事なのは、フォルダを完全になくすことではない気がします。
フォルダにはフォルダの意味があります。
どこにあるのか。
誰が見られるのか。
どれが最新版なのか。
削除していいのか。
共有していいのか。
こういう責任を管理するために、フォルダやファイルという考え方は必要です。
問題は、それを人間が毎回意識しないといけないことです。
本当は、人間はこう覚えています。
「この前の新潟旅行のホテル予約」
「昨日作ったnoteのサムネ」
「GitHubに上げた最新版のREADME」
「Xに投稿した文の元記事」
「動画生成ツールの文字切れ修正の件」
人間の記憶は、フォルダ名ではなく、出来事や文脈に近い。
だからAI OSが目指すべきなのは、
フォルダを消すこと
ではなく、
フォルダを人間に見せなくても困らない状態にすること
なのだと思います。
裏側では、ファイルもフォルダも権限も履歴もちゃんと管理されている。
でも人間は、「あの件」で探せる。
これができたら、ようやく本当にフォルダの彼岸に行ける気がします。
昔夢見たコンピュータに近づいている
考えてみると、これは昔夢見たコンピュータそのものかもしれません。
「コンピュータ、例の件をまとめておいて」
と言えば、関連資料を集めてくれる。
「この案で送っていい?」
と聞けば、宛先や文面や過去の経緯を確認してくれる。
「今やるべきことは?」
と聞けば、予定、メール、タスク、会話から優先順位を出してくれる。
昔のSFに出てきたコンピュータは、だいたいこういう存在でした。
人間がフォルダを掘るわけではありません。
人間が設定画面を探すわけでもありません。
人間がアプリをいくつも行き来するわけでもありません。
人間が目的を伝える。
コンピュータが下準備をする。
最後に人間が判断する。
生成AIによって、ようやくその形が現実味を帯びてきたのかもしれません。
ただし、便利さの裏には怖さもある
もちろん、いい話ばかりではありません。
AI OSが本当に便利になるには、かなり深い情報にアクセスする必要があります。
メール。
予定。
ファイル。
チャット。
ブラウザ履歴。
写真。
位置情報。
クラウド。
社内システム。
GitHub。
決済。
健康情報。
ここまで見られると、便利ではあります。
でも、怖くもあります。
何でも見ているAI。
何でも操作できるAI。
勝手に判断するAI。
そんなものをOSに入れていいのか、という話になります。
だから、AI OSに本当に必要なのは、賢さだけではないと思います。
権限管理。
操作履歴。
監査ログ。
承認フロー。
取り消し機能。
どの情報を見たのかの説明。
なぜその判断をしたのかの説明。
このあたりがないと、便利な未来ではなく、ただ不安な未来になります。
何でも勝手にやるAIではなく、下準備をするAI
僕がほしいのは、何でも勝手にやるAI OSではありません。
勝手にメールを送る。
勝手にファイルを消す。
勝手に予定を変える。
勝手に投稿する。
そこまでされると怖いです。
そうではなくて、
必要なものを探しておく。
作業の流れを整理しておく。
下書きを作っておく。
候補を並べておく。
リスクを教えてくれる。
最後に「これで実行しますか?」と聞いてくれる。
そういうAI OSがいいです。
人間の代わりに全部を決めるのではなく、
人間が判断しやすいところまで持ってきてくれるOS。
AIが作業員であり、秘書であり、記憶の補助であり、段取り係になる。
そんな感じです。
AI時代は、OSを作り直すチャンスかもしれない
クラウドが普及しました。
APIでサービス同士がつながるようになりました。
生成AIが、人間のあいまいな指示を理解できるようになってきました。
企業でも、個人でも、データはあちこちに散らばっています。
この状況なら、OSの役割を作り直せるかもしれません。
昔のOSは、ハードウェアを管理するものでした。
今のOSは、アプリとファイルを管理するものです。
次のOSは、人間の目的と文脈を管理するものになるのかもしれません。
スマホはフォルダを隠しました。
でも、フォルダ問題そのものは解決できませんでした。
AI OSなら、もしかするとそこを本当に解けるかもしれない。
ファイル名を覚えなくていい。
保存場所を覚えなくていい。
どのアプリを使うかを毎回考えなくていい。
やりたいことを伝えれば、AIが必要な道具と情報をそろえてくれる。
そんなOSが出てきたら、かなり面白いです。
終わりに
生成AIというと、ついモデルの性能や、どの会社が勝つかに目が行きます。
OpenAI。
Google。
Microsoft。
Apple。
Amazon。
Anthropic。
たしかに、それも大事です。
でも、利用者側から見ると、本当に大事なのは、
AIで何ができるようになるのか
です。
そして、その答えの一つが、AI OSなのかもしれません。
人間がアプリを操作する時代から、
人間が目的を伝えて、AIが作業を組み立てる時代へ。
昔夢見たコンピュータが、ようやく来るかもしれない。
もちろん、まだ夢です。
でも、今はその夢を見てもいいタイミングなのかもしれません。
スマホによって彼の地へ送ったはずのフォルダは、結局戻ってきました。
今度こそ、フォルダを本当に彼の地へ送れるのか。
AI OSの夢は、そこから始まっている気がします。
