青に抱かれてー風まかせ文芸部
青いインクが倒れる。
紙の上にゆっくりと、自ら歩き出すように。
そのインクを止めるように、手を伸ばした。
紙の上に置かれた手は皮膚に染み込むように、青く染まっていく。
冷たさは感じない、ぬめりとした液体に捕らわれる。
そこから抜け出すように手を滑らせると、青の世界が白い世界を覆った。
紺青は夜のように深く、 やがて宝石のような瑠璃色へ。
さらに群青を越え、 露草色の空へとほどけていく。
倒れたインクは紙いっぱいに青のグラデーションを広げた。
青く染まった手を見つめる。
頬に触れると、私の顔にも露草色が映った。
紙の上に光る青へ両手をつく。
私は、自分を抱きしめる。
こんな湿っぽい雨の日は青の世界に抱かれたい。
目を閉じる。
紺青の夜と、深い海へ。
青は静かに、私を抱いた。
お読みいただいて、ありがとうございました。本作は風まかせ文芸部さんの企画に参加しております。
