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同じ「マグネシウム」でも中身は別物|種類と選び方

安易に「マグネシウム」が良いんだ。と覚えていました。
買おうとネットショップを開くと‥

酸化マグネシウム。クエン酸マグネシウム。グリシン酸マグネシウム。

同じマグネシウムのはずなのに、なぜ種類があるのか。ここを知らないまま選ぶと、「体調のために飲んだのにお腹が緩くなるだけだった」ということが起こります。
私も最初、まさにそれでした。



1. なぜ種類があるのか


マグネシウムは金属の元素なので、そのままの形ではサプリメントにできません。必ず何かと結合した「塩」の形で配合されます。

「酸化」「クエン酸」「グリシン酸」という名前の違いは、この結合相手の違いです。そして結合相手によって、次の3つが変わります。

  • 吸収率 — 水に溶けやすい有機酸・アミノ酸と結合したものほど吸収されやすい

  • お腹への影響 — 吸収されずに腸に残ったマグネシウムは便をやわらかくする(緩下作用)。吸収率が低い形ほどこの作用が強く出る

  • 元素マグネシウムの割合 — 同じ重さでも、実際に含まれるマグネシウムの量は形態によって違う

ここで大事なのは、「便秘も解消したい」のか「お腹を緩くせずに栄養として補いたい」のかで、選ぶべきものが逆方向になるということです。目的を決めるのが先決になります。


2. 酸化マグネシウム — 病院で下剤として出されるもの


日本のドラッグストアや病院で一番よく見るのがこれです。

元素マグネシウムの割合は約60%と高く、価格も安い。ただし吸収率が低いという特徴があります。吸収されずに腸に残るため、腸壁から腸管内に水分を引き寄せて便をやわらかくします。これが下剤・便秘薬として使われる理由です。

つまり、「栄養として補いたい」という目的なら第一候補にはなりにくいということになります。安いからと選んで「お腹が緩くなるだけで元気にならない」のは、この仕組みのせいです。

安全性について知っておきたいこと

酸化マグネシウムは昭和25年から便秘薬・制酸薬として広く使われてきた、臓器への負担が少ない比較的安全な薬です。ただし、副作用として高マグネシウム血症が起こることがあり、日本では2015年・2020年と繰り返し注意喚起が出ています。

添付文書には、便秘症の患者では腎機能が正常で通常用量以下でも重篤な例が報告されているとして、必要最小限の使用にとどめること、長期投与や高齢者では定期的に血清マグネシウム濃度を測定することが記載されています。

初期症状として挙げられているのは、吐き気・嘔吐・立ちくらみ・めまい・脈が遅くなる・皮膚が赤くなる・力が入りにくくなる・だるさ・強い眠気など。特に注意が必要なのは、高用量を飲んでいる方、1ヶ月以上続けている方、65歳以上の方、腎機能に不安がある方です。

「市販薬だから」「昔から使われているから」と自己判断で長く飲み続けるのではなく、続ける場合は医師や薬剤師に相談してほしい種類です。


3. クエン酸マグネシウム — バランス型


クエン酸と結合した形です。吸収率は酸化マグネシウムよりかなり高く、価格はグリシン酸型より安い。コストと吸収率のバランスが取れた標準的な選択肢と言えます。

腸内に水分を引き込む作用もあるため、「栄養も補いたいし、お通じも整えたい」という方には使いやすい形態です。逆に、もともとお腹がゆるくなりやすい方は量に注意が必要です。


4. グリシン酸マグネシウム — 睡眠・神経サポート向き


マグネシウムをアミノ酸(グリシン)で包んだ「キレート型」です。

吸収率が高く、胃腸への負担が少ないのが最大の特徴。緩下作用が出にくいため、「お腹を緩くせずにマグネシウムを補いたい」という目的にはこれが最も合います。医療機関専用のサプリメントにもよく使われている形態です。

さらに、結合相手であるグリシン自体が神経伝達物質の一種で、鎮静・睡眠をサポートする働きがあるとされています。眠りの質や神経の落ち着きを目的にするなら、この形態が第一候補になります。


5. その他の形態 ーリンゴ酸マグネシウム・L-トレオン酸マグネシウム・塩化マグネシウム・硫酸マグネシウム


リンゴ酸マグネシウム
— 果物に含まれるリンゴ酸と結合した形。下剤効果が少なく、初めての方でも取り入れやすい種類です。


L-トレオン酸マグネシウム
— 「脳に届く形」として売られているタイプです。ビタミンCの代謝物であるL-トレオン酸と結合した形で、動物実験で脳内のマグネシウム濃度が上がったという報告があり、人でも小規模な試験がいくつか出ています。ただし結果はまちまちで、記憶や反応速度が改善したという数字と、推論力や客観的な睡眠指標には差がなかったという数字が混ざっています。試験の多くは原料メーカーが関わったものです。

そして、元素マグネシウムの割合が約7%と極端に低いのがこの形態の特徴です。「マグネシウムL-トレオン酸2,000mg」と書かれていても、実際のマグネシウムは144mg程度。1日の推奨量には届かないので、これ1つでマグネシウム補給を済ませる設計にはなっていません。

私も1瓶(1ヶ月分)だけ試しました。ただ、他のマグネシウムも並行して飲んでいたので、正直これのおかげかどうかは分かりませんでした。「頭に良いらしい」と思って飲んでいたぶんもあると思います。続けなかったのは、単純に高かったからです。同じ量のマグネシウムを摂るのに、グリシン酸型の数倍かかります。


塩化マグネシウム
— 吸収率が高い形態。入浴剤やマグネシウムオイルなど、外用の製品によく使われます。


硫酸マグネシウム
— いわゆるエプソムソルト。入浴剤として使われるのがほとんどです。


6. 選び方のまとめ


※「頭の働き」を目的にしたL-トレオン酸マグネシウムは、根拠がまだ小規模な試験にとどまり、価格も高いため、この表には入れていません。試すなら「まず基本の形態を満たしたうえで、余力があれば」という順番になります。

グリシン酸マグネシウムやリンゴ酸マグネシウムは、日本のドラッグストアの棚にはほとんど並んでいません。この表の目的別に、楽天市場で実際に買えるものをまとめました。

目的別|楽天で実際に買えるマグネシウムサプリ(#PR・アフィリエイトリンクを含みます)

塩化マグネシウム(にがりの主成分)を入浴に使う場合の注意

塩化物イオンは、ステンレスや鉄を錆びさせます。追い焚き配管が腐食すると水漏れの原因になるため、給湯器側からも注意喚起が出ています。エプソムソルト(硫酸マグネシウム)は塩分を含まないため、追い焚きしやすい入浴剤とされています。

また、塩化マグネシウムの入浴ではピリピリ・チクチクするという報告が多くあります。販売サイトではこれを「よく浸透している証拠」「続ければ慣れる」と説明していることがありますが、根拠は見当たりません。バリアが弱っているところに刺激が出ているだけ、という可能性のほうが素直です。

実際に入れてみた話は、こちらに書きました。

エプソムソルトを切らして「にがり」を入れてみたら、ポカポカしなかった話


7. 表示の見方で気をつけること


パッケージに「マグネシウム500mg」と書かれていても、それが化合物全体の重さなのか、実際のマグネシウム元素の量なのかで意味がまったく変わります。

日本のサプリは元素量での表示が多く、海外サプリ(特に米国製)は混在しています。"Elemental" という表記があるかを確認すると確実です。

そして評価すべきは「元素量が多いかどうか」ではなく、元素量 × 吸収率です。酸化マグネシウムは元素量の割合が60%と一番高いのですが、吸収率が低いため、実際に体に届く量では他の形態に劣ることになります。ここが一番の落とし穴です。

逆方向の落とし穴もあります。L-トレオン酸マグネシウムは元素マグネシウムの割合が約7%しかないため、「2,000mg配合」という表示を見て多いと感じても、実際のマグネシウムは酸化マグネシウム換算の1/8以下です。数字の大きさではなく、何の重さを指しているのかを見てください。

8. 飲み合わせの注意


一部の抗菌薬・骨粗鬆症の薬・甲状腺ホルモン薬などは、マグネシウムと一緒に飲むと吸収が落ちることがあります。服用時間を2〜4時間ずらすのが一般的です。薬を飲んでいる方は、必ず医師・薬剤師に確認してください。



私自身は「元気になりたい」が目的だったので、緩下作用の少ない形態を選ぶようになってから、体感がはっきり変わりました。同じ「マグネシウム」という名前でも、目的に合っていなければ意味がない。ここを知っているかどうかで、選び方はまったく違ってきます。


参考にした情報源

  • KEGG 医療用医薬品情報「酸化マグネシウム」添付文書

  • PMDA「酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い ―高マグネシウム血症―」(2020年8月)

  • 静岡県薬剤師会「便秘薬の酸化マグネシウムの副作用」

  • 健栄製薬「酸化マグネシウム便秘薬とは?特徴や服用前のチェック項目」

  • 日本くすり教育研究所「便秘薬『酸化マグネシウム』に副作用が」

  • Supplement Note「マグネシウムの形態完全比較」

  • Organic Science LAB「サプリで使用される10種類のマグネシウム」

  • おうち病院「マグネシウムサプリメントの成分・効果」

  • Smith SJ ら「The effects of magnesium L-threonate (Magtein®) on cognitive performance and sleep quality in adults: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial」Frontiers in Nutrition, 2026


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この記事について

この記事は健康に関する情報の共有を目的としたもので、医学的な診断・治療の助言ではありません。腎機能が低下している方では、マグネシウムが体内に蓄積し、高マグネシウム血症を起こすおそれがあります。腎臓に不安のある方、透析を受けている方、心臓の病気のある方は、サプリメントや酸化マグネシウム製剤を使う前に必ず主治医にご相談ください。酸化マグネシウムは医薬品としても使われるもので、便秘薬として長期に使う場合は医師・薬剤師の管理のもとで使用してください。一部の抗菌薬や骨粗鬆症の薬とは、同時に摂ることで吸収が変わります。服薬中の方は薬剤師にご確認ください。

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