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風まかせ文芸部・第5題企画【雨】

 昔、所有ビルを利用して「現代アート画廊」を経営していたことがあった。屋上階のペントハウスとバルコニー、1F〜9Fまでの階段室を使ってインスタレーションなどの展示をしようとしたもの。

 最大の武器とデメリットは『雨』と『風』。バルコニーなので直に風雨が降り注ぐ。
 そのデメリットを制覇すれば、面白い展示になり得るが、それを忘れて作品作りされると、目も当てられない状態になり、どうかするとご近所迷惑な末路となってしまう。

 そんな危険を冒しながらも記憶に残る展示は幾つかあり、事情で記録を無くした今、私はこうして、その記憶だけに頼って思い出すのである。

 私の中の展示No.1は、新聞を扱った作品で有名な藤岡氏のインスタレーションで、新聞紙を広げて古い順に背の高さほど積み上げ、自然(天候)に任せて3ヶ月間放置して様子を記録しようというもの。
 風雨で飛んでしまうのでは?と心配する私だったが、彼のコンセプトとしては、自然に飛んで無くなっていく様も作品なのである。
 そこで、私との協議の末、目に見えないほどの「違法ではない防鳥ネット」をエレベーター塔の高さまでに張り巡らせるという荒技に出た。

 果たして、展示は大成功に終わった。台風や大風で飛んでいった新聞は、網の中で一定方向に舞い、集まったり固まったり。新しい日付から古い日付へと飛んでいく様は、時間軸という難解なテーマを想起させるものでもあった。
 最終的に高さ50cmくらいが残り、その他は網の中の一定方向で雨に打たれて塊を作ったのであった。

 こうして書きながら思い出したのは、もうひとつ。
 同じく彼の作品で直径3m、高さ30cmの円筒の中にランダムに拾い集めてきた土を詰め込み新聞紙で包んだものを2基、確か、お正月明けから半年ほど展示していた。
 春、草花が芽出しの頃、新聞紙の中の土は、適度な温度と充分な雨を確保して、どこの野山より早く新聞紙を蹴破ってニョキニョキ生えだした。

 こうして、無機質なビル群の中で風雨にさらしながら、人の手が自然を模写した作品を作り出したのであった。
 



#風まかせ文芸部
#雨
#インスタレーション

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