風まかせ文芸部・第54回お題【初夏】
「もう夏やなぁ、お前は『初夏』って聞いたら何か思い出すか?」
「オレか?オレはやっぱり『あゆ』やな」
「魚の鮎か?」
「ちゃうちゃう、求肥の入った和菓子の『あゆ』や!」
「そうか、俺はやっぱり茅の輪やな」
「あぁ、あの輪っかのお菓子やな」
「ちゃうちゃう、お菓子の『茅の輪』とちゃうで『茅の輪くぐりや』」
「なんやそれ」
「神社で大きな輪っか、潜ったことないか?」
「あ、あれな、右や左やちゅうて面倒いやっちゃな」
「あれをくぐったら、いっぺんに夏やと思えへんか?」
「思うか、そんなもん、真っ直ぐくぐったら笑いよってん、アイツ」
「アイツて誰や、彼女か」
「そや」
「ほんでどないしてん」
「えらそうな顔してくるくる回っとったわ」
「お前は?」
「真っ直ぐくぐったからそのままや、神さんなんて賽銭投げて、手ぇ叩いて、絵馬とおみくじ買うたらなんでも聞いてくれはるやろ。フルコースや」
「大きな声で言わんときや、バチ、当たるぞ、気ぃつけや」
「オカンがな、作法より気持ちやからちゃんと拝んできぃやて言いよるねん」
「そら、まぁ、お前んとこのオカンが言うのも一理あるな」
「そやろ、手ぇ洗うんもブツクサ言いよるから気分悪かってん」
「カナンなぁ、ほんでどないしてん」
「喧嘩になってな、別れたわ」
「ははは、バチ当たってやんの!ははは」
「………………」
ちゃんちゃん
