実績ゼロだった僕が「自称と実証」でじわじわとコピーライティングの仕事を獲得していくまでの裏話
はじめまして。デザイナーの迫 健太郎(サコケン)です。福岡出身の34歳、1児のパパです。普段は大手家電メーカーで働いています。
専門はアイデア発想、プロダクト(製品)デザイン、広告クリエイティブの3領域で、これらを組み合わせたデザインコンサルティング業務をやっています。最近は一橋大学、京都芸術大学、中央大学、関西大学、母校の九州大学、宣伝会議などでもクリエイティブに関する講演の機会をいただいています。
このnoteでは公開情報になっている仕事の事例や話を引用しつつ、僕の約10年間の戦略と行動を振り返りながら、以下のような方に向けてキャリアアップのささやかなヒントになればと思って書いています。
・コピーライティングの仕事を獲得したい
・今はコピーライターではないがコピーを書く仕事がしたい
・今の自分の肩書にはない新しい領域の仕事を獲得したい
それではどうぞ、ご覧ください!
はじめに
僕はデザイナーであり、コピーライターひとすじの人間ではありません。もっと言えば入社して以来、一度も正式に「君はコピーライターだ」という辞令を会社からもらったことはありません。なので本業はデザイン業務だけどコピーを書く仕事「も」しているデザイナー、という感じです。
ですが、新規事業のネーミング、通信テクノロジーのネーミング、会社全体の行動指針のタグライン策定など、会社として重要な案件の中でコピーを書く仕事も任せてもらえるようになりました。
最初は”自称”コピーライターでしたが、今の自分の状態をあえて表現するなら”実証”コピーライターと呼んでいます。「私は今日からコピーライターも兼ねますので、お仕事をください」と自称することから始め、実際の提案の中でそのスキルを実証していくことで、どんどん仕事をいただけるようになりました。
今回はあくまでも僕自身がどのような考えで動いてきたかという事実ベースのnoteです。そのまま応用できる人もいると思いますし、まったく参考にならない人もいるはずです。また、広告代理店などでもっとコピーライター専門で日々戦っている方から見れば「ふん、甘いな」と思う人もいるかもしれませんが、ひとつのエンタメとして読んでいただければ幸いです。
1. ”自称”コピーライターの始まり
なぜ最初は家電のデザイナーになったのか
僕が卒業した大学は美大ではなく、いわゆる国立の総合大学の芸術系の学部の工業デザイン専攻で、家具やクルマなどの工業製品のデザインについて学びました。大学院では製品デザインも含めた総合的なデザイン戦略構築(デザインストラテジー)について学び、デザインストラテジーで修士号を取得しています。

就職活動で特に「これだ!」という業種やデザインしたいものが決まっていなかった僕は、業界を広く観察してみようと思い、家電メーカー、文房具メーカー、航空会社、省庁、広告代理店など幅広いジャンルの会社のインターンに参加しました。
よく聞かれる質問に「なぜ最初から広告代理店などでコピーライターにならなかったのか?」というものがあります。昔も今もそうなのですが、学生時代の自分は”何かひとつの手段(言葉)”に自分の可能性が閉じられてしまうことへの恐れがあったのだと思います。今思うと、そんなことはないんですけどね。
最初はなるべく幅広いデザインの手段に関われる業界や職種を希望していたことや、人が毎日使うような生活の道具をデザインすることには興味があったので、最終的には今も勤めている大手家電メーカーに工業デザイナー(家電の色や形を考える人)の職種で採用試験を受け、合格して入社しました。
ただ、当時のエントリーシートの「あなたの強みは?」という定番の質問に「私の強みはコピーライティングです!」と書いたことは覚えています。当時からブレブレだったようです。工業デザイナーの採用試験なのになぜ合格できたのか今でも謎ですが、いずれにせよ面接官に感謝です。
家電デザインとその広告もセットで勝手に提案する
入社して最初に僕は女性向けの美容家電のデザインチームに配属され、ドライヤーやヘアアイロン(コテ)といったヘアケア製品のデザインを、先輩のサポートという形で共に担当しました。振り返ってみると2年間にも満たない期間でしたが、多くの種類の色や材料の名前を覚えたり、工場に出向いて狙いの色のプラスチックが成形できるように調整したり、モノづくりの難しさやダイナミックさが伴う家電メーカーのど真ん中の仕事に携われた素晴らしい時間でした。

自分が携わった製品を芸能人の方が持ってくれて、渋谷のスクランブル交差点でド派手に宣伝されたりと、とても達成感のある仕事に恵まれました。家電のデザインの仕事も充実した日々でしたが、やはり広告的な仕事もいつかやってみたいと心のどこかでは考えていました。
そこで、家電のデザインを社内で提案する時に「僕、コピーライティングもできるんです!(自称)」と宣言し、「たとえばキャッチコピーをつけるならこんな感じですかね…(実証)」と、勝手に商品の広告イメージを作って添えてプレゼンすることから始めました。
そのキャッチコピーの出来栄えはさておき、こうした「ちょっと勝手に提案してみました」という行動は、社内の先輩方に「(言われてないのに考えて提案してくるほど)迫くんはコピーライティングも好き」というイメージを持ってもらう上ではとても大事だったと思います。
えらい人が目にする夏祭りポスターを作る
たしか入社2年目だったと思います。会社が主催して実施する、地元の住民も招いて行われる夏祭りイベントの宣伝ポスターをデザインすることになりました。僕の同期入社の知人が夏祭りの実行委員をやっていて「迫ちゃん、ポスターのデザインしてくれないかな?」と相談してきたことが始まりです。
もちろん同期の頼みでしたし、快諾してデザインを開始。それと同時にこうした社内のイベントのポスターは会社のえらい人も目にするはずだと考えたので「キャッチコピーを書けるということを、えらい人にアピールするチャンスになるかも」と下心を持っていました。
当時、自分が採用したキャッチコピーのデータを発掘したのですが、今見返すと目も当てられない内容です。しかし、後輩たちを勇気づけるために公開します。
・サマフェスっていうより、ビールで体を冷まフェスだ。
・あの部長のスケジュールに「サマフェス」が入っていた。
・イギリスは離脱しても、みなさんは離脱しないでください。
こう、絶妙な黒歴史感がありますよね。ゾクゾクします。ちなみに3本目は、当時イギリスがEUから離脱するというニュースが世間を騒がせていたのでそれに引っかけたものです。
このキャッチコピーが大きく掲載されたA3サイズのポスターは会社の食堂など、何枚か目立つところに貼られました。また、会社全体の朝礼の中でもポスターが社長から紹介されたりと、えらい人の目にも入るポスターとなりました。
まだまだスキル不足の僕が作ったこのポスターは全く話題にはならなかったのですが、「今年の夏祭りのポスター、僕がキャッチコピーとデザインをやってます!」と、なるべく会社の先輩やえらい人に会うたびに自分から宣伝しました。
せっかくポスターを作っても「あのキャッチコピーを書いたのは迫くん」と知ってもらえなければ意味がありませんので、ここは恥ずかしい気持ちを一旦捨てて、とにかく声を大にして宣伝することが大事だと思います。

社外の講座に自費で通ってアピールする
美容家電のチームは2年間で卒業し、次はアドバンスデザイン(未来の家電のコンセプト)を考えるチームに異動しました。そこは未来の生活を想像し、新しい生活を提案する家電のコンセプトモデルをデザインして展示会で発表するといったミッションのチームでした。

展示会のタイトルや説明文も自分たちで作成していたので、このチームではわりとコピーライティングが仕事の中でも大事になってきました。なので僕としては「キャッチコピーを、もっと仕事で書けるぞ」と嬉しくもあったのですが、一方で「独学にも限界あるなあ」と、例の夏祭りのトラウマをまだ引きずっていたのです。
そこで、定番ですが宣伝会議が開催しているコピーライター養成講座に通うことにしたのです。申請すれば会社の費用で受講できそうな感じでもあったのですが、「この手の勉強は身銭を切った方がちゃんと学ぶので身に付く&自費で通うほどコピーライティングに熱心なやつと思われたい」という2つの考え方から、自費で16万円ほどを払って通いました。後者は結構大事だと思っていて「最近、講座に自費で通って勉強してます!」と、これも社内の先輩やえらい人になるべく言うようにしていました。
当時はコロナも何もない時代でしたので、毎回表参道の教室に通ってリアルで受講しました。身銭を切ってますから、課題は割と真剣に取り組んで金の鉛筆(その日の課題で良いコピーを書けた人がもらえる)も何本かもらえたと思います。ここで課題をプロに添削してもらう実戦形式でコピーの筋肉を初めて鍛えました。

所属チームのネーミングを挙手して考案する
ここで、これまでより少し大きなコピーの仕事に関わるチャンスがやってきました。それは、所属しているアドバンスデザインスタジオのチーム名です。組織上は”新領域開発課”という名前があったのですが、「対外向けのカジュアルでかっこいい通称が欲しいね…」という話になったのです。
そこで僕はすかさず「外部に委託はせず、僕にメインで考えさせてください!」と挙手。具体的な検討プロセスは割愛しますが、チームメンバーの皆様ともディスカッションを重ねながら”FUTURE LIFE FACTORY”という名前を作りました。未来のくらしをデザインするスタジオだが、絵に描いた餅ではなく手触り感のある提案まで結実させたいという思いから、工場(FACTORY)というイメージを引用したネーミングです。
また、同時にチームのタグラインも自主提案して書かせてもらいました。未来のことなら何でも考える…だとスタジオの方針として曖昧すぎるので、チームメンバーとのディスカッションを重ねながら”未来の豊かさを問い、具現化するデザインスタジオ”だと定義して言語化しました。
前述の夏祭りのポスターも含め、日頃から「コピーライティングも好きな迫くん」という印象を持ってもらうための”自称と実証”の活動をしていたことで、組織名を考える時に「じゃあ、やってみたら」と託してもらえたのだと感じています。
FUTURE LIFE FACTORYは2年間の任期制なので僕はもう既に卒業したのですが、今も定期的にユニークなコンセプトが発信されていますので、ぜひご覧ください。

新しいオフィスのコンセプトワードを勝手に提案する
入社3年目の時に、僕にとってのコピー仕事の最初の代表作と出会います。僕の働いている会社は、2018年にそれまで滋賀と大阪に2つあったデザインの拠点を統合し、京都に新設しました。そのオフィスの建築コンセプトである"Drip"というコンセプトワードが、僕のキャリアを大きく前進させてくれた最初のコピーの代表作です。

この京都のオフィスはビルの4〜9階で構成されている6フロア構造。特徴としては、最上階である9Fでセミナーやワークショップをやって世の中のトレンドをインプットする → その下の8Fでインプットを元に企画やアイデアを考える → その下の7Fと6Fで具体的な製品デザイン案を描く → その下の5Fと4Fで模型やプロトタイプなど最終形の製品デザインに定着させる、という階層になっています。つまり、最初は頭の中のアイデアだったものが、フロアが下がるごとにどんどん目に見える具体的な製品デザインに進化していくオフィスです。

そして当時、この新しいデザインオフィスのレイアウトや内装を考える検討会に参加していた僕はこの建築全体のフロア構想を拝見した時に「上から色々入れて、最後は磨き上げたデザインが下から落ちてくる…これってモノにたとえるとコーヒーのドリッパーみたいだなあ」と感じたのです。
そこで、「これって…たとえるならコーヒーのドリッパーのようなデザインオフィスですよね。なので”Drip”というキーワードと、コーヒーを淹れているかっこいいビジュアルとセットで、この新しいオフィスを世の中にお披露目しませんか」と勝手に検討会の中で提案しました。

すると、「すごく分かりやすい!」と盛り上がり、この新しい京都拠点の正式なコンセプトフレーズに採用され、拠点をオープンする際にメディアに向けて発信されたのです。このオフィスは日経ニューオフィス賞にも入選したようです。後から社内のえらい人にも「あの言葉があったから、すごく発表がしやすかったし、メディアの反応も良かった!」と言ってもらえました。
最初は”自称”であっても、「勝手に提案してみました!」と自ら”実証の打席”を作ることがとても大事です。勝手に提案する分には「おお、とりあえずありがとう」と、別に向こうも悪い気はしないものです。(もちろん、今のあなたの本業となっている仕事はしっかりやらないといけませんが)それを繰り返す中で「これ、結構いいね!採用しようか」となればこちらのもの。この”自称と実証”をいかに高速で回していけるかが勝負を分けると思います。
2. コピーの仕事をもっと引き寄せるための作戦
ここからは、わらしべ長者的にコピーの仕事を獲得していくために意識していたコツと、僕がコピーを学ぶプロセスの中で意識した点、そして販促コンペのグランプリ受賞など、もう少し具体的なトピックを書いています。僕がデザイナーという立場から、コピーライティングという「自称」領域の仕事を獲得していくために実践していた作戦の一部をご紹介します。
ネーミング案件を積極的に狙う
戦略的に狙っていたのが「ネーミング案件」です。いわゆる定番の「広告的なキャッチコピー」の仕事だけに限定してしまうと、その多くは広告キャンペーン全体の一部に組み込まれるため、どうしても社外の広告代理店さんにドンと一括で発注されるケースが多くなります。しかも、コピーだけでなく映像制作やWebサイト制作などもセットになることが多いので、そもそも僕ひとりの力では完結できない規模の仕事になりがちです。
一方で「ネーミング」の仕事は比較的コンパクトで、僕ひとりのスキルで完結できることが多い。そしてここがポイントなんですが、ネーミングを提案する際に「この名前にはこういう思想が込められています。これを分かりやすく世の中に伝えるためのキャッチコピーとして、こんな表現も一緒にどうでしょうか?」と、ごく自然な流れでキャッチコピー的な提案も滑り込ませることができるんです。
新規事業のサービス名や製品名はもちろんですし、社内のちょっとしたコミュニティの名称や、部署横断プロジェクトの愛称を考える、といった小さな機会も実は「ネーミング案件」の宝庫。「こんな名前どうでしょう?」と提案するついでに、「この名前なら、こんなキャッチフレーズが似合いますよ」と、コピーの仕事を生み出すことができる。こうしたネーミングの仕事は比較的案件として発生させやすく、かつ決定すれば様々な場所で露出する機会が多いので、僕は意識的に「最近動いているあのプロジェクト、ネーミングの仕事が生めそうだな…」とアンテナを張っていました。
たとえば過去に手掛けた通信規格のリブランディング案件では「Nessum」というネーミングに加えて「くらしと産業を豊かにする画竜点睛の通信規格」というキャッチフレーズを提案し、採用されています。

有線通信と無線通信のハイブリッドで通信網を補完するテクノロジー
早押しクイズ作戦で仕事を逃さない
企業内で「自称コピーライター」として活動する場合、僕にとって最大の競合は、社外の優秀な広告代理店さんたちでした。だから、社内で何かしらの「言葉の仕事」が発生しそうになった時、それが社外に発注される前にいかに自分の仕事としてスピーディーに受注できるかが勝負の分かれ目です。
そのために僕が最も重視していたのは、とにかく「打ち返しの速さ」です。「社内のコピー案件は早押しクイズだ!」と自分に言い聞かせていました。外部の代理店に仕事が流出する前に、誰よりも早く「ピンポーン!例えばこんな案どうでしょう?」と挙手して提案する。このスピード感が命です。
「こういう新サービスのネーミングとキャッチコピーを考えてるんですけど、何か良いアイデアないですかね…」と軽く相談を持ちかけられたら、もうその60分の打ち合わせが終わる頃には、「たとえばですけど、A案としてこういう方向性、B案ならこんな切り口がありそうですよね。具体的にはXXXとかYYYとか…」と、具体的な言葉のアイデアや方向性を提示する。そのためにネーミングやコピーのアイデアをその場で打ち込んですぐに簡易の提案資料として画面共有できるような提案フォーマットを、常に手元に用意してオンライン会議に臨んでいました。
このスピード感と具体性で、「あ、なんかもう迫さんが色々考えてくれてるし、このまま頼んじゃった方が早そうだな」と相手に思わせて、社外に仕事が流出する隙を与えない。もちろん、時間をかけてじっくりと質を高めることも非常に重要ですが、まずは仕事を受注できないと何も始まりません。特に初期の段階では速さを重視して、「こういうのどうでしょう?」と、魅力的なサンプル案をすぐに提示できるような準備を入念に行っていました。
一方で「すぐにサンプル案を提示できそうにない…」という方のために、僕が実際に使っていた「早押しクイズ用のネーミングの型」の一例を置いておきます。例示しているネーミング案は過去に僕が仕事やコンペの中で提案したものです。
①ノリシロくっつけ型
Aという単語の終わりと、Bという単語の冒頭を重ねてネーミングにする。
例)忍者のデザインをしたメモ
→ つまり「忍び」の「便箋」
→ ネーミング:シノビンセン
②動詞そのままやんけ型
提供価値を「1単語の動詞」に置き換えて、そのままネーミングにする。
例)地域の隠れた名産品を購入できるECサイト
→ つまり地域の名産品を「発掘」できるECサイト
→ ネーミング:ハックツ!
「あれ、結構普通だな…」という声も聞こえそうですが、大事なのは圧倒的なスピード感で「たとえば…」を提示することなので、まずは定番の型を使いながらぜひ自分なりの型も編み出してください。
セット販売でコピーを売り込む
自分を売り込んでいく中で意識していたのは「自分が既に得意なこと」と、これから伸ばしたい「コピーライティング」を組み合わせた「新しいセット商品」を開発して、お客さんに提案することでした。(前編だと、家電のデザイン&その広告が該当します)
僕の経験上、「コピー“だけ”をお願いします」というピンポイントな発注はあまり多くないと感じます。多くの場合、お客さんは「製品デザインとそれを端的に伝える言葉」「ロゴデザインとそのコンセプトを社内でプレゼンするためのキャッチフレーズ」といったように、ある程度まとまった課題解決のパッケージの状態を求めていることが多いと気づきました。(いわゆるソリューションデザイン)
だからこそ僕のベースにあるデザイナーとしての「モノ(製品やグラフィック)」を作るスキルと、自称コピーライターとしての「モノは言いよう」を考えるスキル、この両方を活かして最初からセットで提案していきました。最初に依頼されたのはどちらか片方でも、勝手にセット商品にして売り込んでいく。この2本柱で臨むことで「迫さんならデザインも言葉もまとめて相談できて助かるし、全体のイメージも統一できそうだ」とお客さんにとってもメリットを感じてもらいやすかったようです。
僕の場合はベースがデザイナーですが、読者の中にはそうでない方もいると思います。しかし、これはデザイナー以外でも成立するかもしれません。まずは今ご自身が既に売っているメインの商品(自分のベースとなるスキル)に、どのような形でコピーという別の商品を組み合わせると、全体としてお客さんに喜ばれるパッケージ(新商品)になるか?を考えてみてはいかがでしょうか。

デザイン(ロゴ・製品) × ネーミングのセットで提案
自分プレスリリースをSNSで発信する
自分が関わったコピーやネーミングの仕事が形になった時や、広告に関するコンペで受賞した時などは、その規模に関わらずこまめに社内外に発信するようにしていました。僕の場合はFacebookをよく利用しており、「株式会社”自分”のプレスリリース発表会場」だと思って運用していました。
「この仕事やりました!」と自慢げにSNSで発信するのはちょっと気恥ずかしいと感じる方もいるかもしれません。でも、僕はあえて発信を今でも続けています。なぜなら意外と社内の人たちも、そういった僕の発信をちゃんと見てくれていることに気づいたからです。
だから、社外に向けて発信しているようでいて、実は社内の様々な部署の人に向けて「僕はこんな仕事もできるんですよ」「こんな実績も持ってるんですよ」と告知している感覚です。社内営業は社内でやるのではなく、実は社外(SNS等)でやった方がうまくいくことが多いと感じています。
その際に特に意識していたのは、広告やクリエイティブの業界に詳しくない人でも、その成果の価値が分かるように情報を翻訳して伝えることです。
たとえば「販促コンペでグランプリを獲りました!」とだけ伝えた場合、広告業界の人なら「おお、それはすごいね!」とその価値を理解してくれますが、そうでない一般の方からすると「…販促コンペって何?グランプリって、そんなにすごいの?」とピンとこないことが多い。これは非常にもったいないですよね。
なのでこういう場合は、「このコンペは毎年全国から約4,000件もの応募があって、その中でNo.1に選ばれました」とか、「電通さんや博報堂さんといった日本を代表する広告代理店の第一線で活躍する20~30代の若手プランナーも数多く応募するコンペなんですが、プロの審査員による厳正な審査を経て、彼らを抑えて1番になることができました」といったように、具体的な数字や比較対象を入れて補足することで、その実績の「すごみ」を伝える工夫をしていました。この翻訳力も自分の価値を効果的に認識してもらうためにとても大事なスキルだと思います。
3. コピーのスキルを鍛えるコツ
ここからは僕が実践してきた「コピーのスキルを鍛えるコツ」についてお話しします。これまでは仕事を獲得する方法に焦点を当てましたが、いくら仕事のチャンスがあっても肝心のスキルが伴わなければ良い提案ができず、自分のリピーターになってくれません。特に僕のように明確な指導者がいない環境では、自分なりのトレーニング方法を見つけることが不可欠でした。
戦う前から負けない
いきなり精神論になってしまうのですが(笑)、まず大前提として「特定の指導者がいないとダメだ」「自分は専門じゃないから…」という思い込みを捨てました。もちろん、大手広告代理店に入社し、クリエイティブ試験に合格して、かっこいいコピーライターの名刺を持った王道の人たちを見ると、「かないっこないかも…」と思う気持ちも分かります。
ですが、コピーライティングというジャンルは少し特殊で、その多くは社会人になってからみんな本格的に勉強し始めるものだと思います。高校や大学に「デザイン学科」はあっても、「コピー学科」というのはあまり聞きませんよね。とんでもなく小さい頃から絵を描き続けて東京藝大に行くような天才はいても、とんでもなく小さい頃から広告コピーを書き続けている人がいる、という話もあまり聞きません。(最近は中高生でも素敵なコピーを書く人が増えましたが)
だから、あなたが「かないっこない」と思っている同世代の優秀なコピーライターも、実はコピーを本格的に学び始めてからまだ数年しか経っていないかもしれません。(もちろん彼らも毎日スキルアップしていますけど)そう考えると、費やした絶対的な時間の差はそこまで絶望的に大きいわけではないと思えてきませんか? 大事なのはスタートラインを気にすることより、今この瞬間からどう自分流の戦い方を見つけてスキルを磨いていくのか、その覚悟を持つことではないでしょうか。今この瞬間は負けていてたとしても、10年後はあなたの方が成長しているかもしれません。
定期的にフィードバックをもらえる環境を作る
ただ、いつまでも独学や我流だけで突き進んでいると自分の変な思考の癖に気づけないまま、時間を浪費してしまう危険性があります。書いたコピーは定期的に「見る目がある人」に見てもらい、客観的なフィードバックをもらうことがスキルアップの近道です。
たまに「とにかくたくさんの公募に応募しまくって訓練しています!」という若い子がいます。もちろん量をこなすことは大事ですが、コピーも「書きっぱなし」ではなかなかスキルは上達しないと思うんです。自分の書いたものがどう評価されるのか、どこが良くてどこがダメなのかを知るプロセスが不可欠です。
僕がこの「フィードバックを得る目的」でよく利用していたのが、宣伝会議のコピーライター養成講座に加えて、奈良新聞のクリエイティブ・アドというコピーの公募でした。これは毎月1回、奈良新聞の広告枠への掲載の権利を争うキャッチコピーコンテスト。最大の特徴は大手広告代理店の有名クリエイターが月替わりで審査員を務め、ファイナリスト10作品に対し、ひとつずつオンラインで丁寧に講評してくれる点でした。(現在は審査方法が変わってしまってこの方法ではなくなっています)
僕はこれにたしか20ヶ月くらいは応募し続けたと思います。自分の作品が選ばれなくても、他の作品へのプロの講評を聞くことで「なるほど、こういう視点のコピーは評価されるんだな」とか「こういう書き方はメッセージがぼやけるんだ」と具体的に学べました。まさに公開添削授業を毎月受けていたようなものです。最後の方に2回だけ受賞できましたが、むしろ落選した18回の方もコピーのスキルアップという意味では価値のある時間でした。

得意なコピーの型を見極めて一点集中で磨き上げる
おいしいカレーにも色々と種類があるように、コピーにも様々な「型」があります。すべてをバランス良く書けるのが理想ですが、まずは自分が得意な領域、あるいは「これから仕事にしたい!」と強く思えるコピーの型を見極め、そこを集中的に訓練する方が効率的です。
たとえば僕は世の中のコピーをざっくり「ファクト重視の”新聞型”」と「表現重視の”小説型”」の2つに分類していました。実際はもっと細かく分類できたり、両方を兼ね備えているコピーもありますが、あくまでも自分が取り組む領域を決める取っ掛かりなので、最初はこのくらいの分類でいいと思います。すごくざっくりした例を出すと、以下のようなイメージです。
【新聞型】
地図に残る仕事。(大成建設)
父親の席は、花嫁から一番遠くにある。(キヤノン)
おしりだって、洗ってほしい。(TOTO)
【小説型】
そうだ 京都、行こう。(JR東海)
わたしらしくをあたらしく(LUMINE)
がんばるひとの、がんばらない時間。(ドトールコーヒー)
僕自身は世の中の様々な広告やコピーを見る中で、「自分は新聞型の方が得意だな」と気づき、それからは「新聞型」に絞ってインプットとアウトプットを繰り返していきました。なので、今でもザ・コピーライター的な「小説型」のコピーはあまり得意ではないかもしれません。しかし、自分の好きや得意を起点にすることで分析も楽しくなり、スキルの定着も早まるはずです。ぜひ自分なりの分類を通して磨き上げたいコピーの型を見つけてみてください。
コピーのNG集を先に学ぶ
コピーを書き始めて、最初から良いコピーをいきなり書こうとするのは本当に難しいですよね。何が良いのか、その基準すら曖昧な時期です。
しかし逆に、でも「これはちょっと良くないな…」という「ダメな理由」は、コピーを学び始めた初期でもわりと学びやすいと考えています。
たとえば、「誰に何を伝えたいのか、さっぱり分からない」「言葉が難解で、読む気がしないな」「企業の言いたいことばかりで、生活者のメリットが感じられない」「事実かもしれないけど、だから何?としか思えない」…などなど。こうした「ダメなコピー」のパターンって、意外と共通していることが多いんです。
だから、僕は宣伝会議の講座で評価されなかった自分の案や、奈良新聞のコンペで落選した他の人のコピー(もちろん自分の作品も)を、「なぜこれはダメだったんだろう?」という視点で丁寧に分析しました。「この言葉選びが良くなかったのか?」「そもそも視点がズレていたのか?」と、自分なりにダメな理由を言語化する。この訓練を繰り返すことで、「こういう書き方をすると失敗しやすいんだな」という、いわば「コピーのNG集」が自分の中に出来上がっていきました。
いきなり満点のコピーを書くのは至難の業ですが、ダメなコピーを書かないことを目指し、繰り返していくことで結果的に合格点を超えたコピーにたどり着きやすい。これを徹底するだけでも、結果的に魅力的なコピーを書ける確率は格段に上がると思います。
コピーのNG集の一例
(お題が”生徒が学校の廊下を走らなくなるコピー”だとした場合)
・うまいこと言おうとしすぎている(行動変容に繋がらない)
迫のダメコピー:青春は走り抜けても、廊下は走り抜けないでください。
・嘘をついている(本当にそうか?と問われると自信がなくなる)
迫のダメコピー:廊下を歩く人は素敵だと、クラスのマドンナが言っていた。
・後味が悪い(目的は達成できても気持ちがよくない)
迫のダメコピー:廊下を走る人に、浪人する呪いをかけました。
コピーのスキルを鍛える方法は世の中にもたくさんあるので、ぜひ自分に合った方法を見つけてくださいね。
4. ”実証”コピーライターとしての活動
最後に、こうした約10年間の自称と実証の活動を通して、僕自身が携わった印象的な仕事をご紹介します。(他にもたくさんのお仕事の機会を皆様からいただきました、本当にありがとうございます!)
全社グループ共通の行動指針の日本語タグラインの開発
全社員に対して発信される行動指針を端的に日本語で表現するタグラインの開発。いわゆる広告的なキャッチーな表現ではありませんが、普段使いされるスタンダードな行動指針として、文字数を絞って端的な言葉を選びつつ、11個全体の統一感やバランスを意識しました。これもSNSなどでこまめに活動を発信していたことで、コピーの依頼が舞い込んだケースだと思います。
お客さま起点で考える
大胆に未来を描く
誠意をもって行動する
未来起点で行動する
世界一の生産性を追求する
自主責任感をもつ
日に新たに挑む
衆知でより良い決断をする
違いを強みとして活かす
「人」を第一に考える
結果にこだわる

メトロアドコンペ受賞からTCC年鑑への初掲載
リゾート地でのゆったりした時間を過ごせる結婚式(リゾ婚)を訴求するお題に「通常の結婚式はほとんどゲストと喋れない」という気づきをベースにした「一般的な結婚式でゲストと会話できる時間を記した”席次風デザイン”の広告」をMetro Ad Creative Award 2020に応募しました。(こちらはチームでの制作です)
Metro Ad Creative Award 2020の受賞をきっかけに、実際に東京メトロの車内の中吊り広告として掲載。その後、その年のTCC年鑑に掲載された広告のひとつになりました。「広告代理店勤務ではない自分はTCC年鑑とは縁遠い…」と思っていたのですが、仲間のおかげでコピーライターの一員として歴史あるTCC年鑑の1ページに載ることができました。

共同制作者:広川楽馬 / 中塩屋祥平
販促コンペでのグランプリ受賞
そして僕が自称コピーライターとして活動する中でひとつの大きな到達点となったのが、販促会議 企画コンペティションでのグランプリ受賞です。
オセロには様々なユニークな名前を持つ打ち方(必殺技)があることに目をつけた、技の名前を自動で実況してくれるスマホアプリ「オセリポ!」の企画です。こちらもチームでの応募で、僕はCDとして企画・コピー・デザイン全般を仲間と共に担当しました。
この受賞はこれまでにでご紹介した”新聞型コピー”発想(オセロのまだ知られていない価値をストレートに伝える)と”得意な型に集中する”戦略、そしてデザイナーをベースにしつつコピーの目線でも企画を磨いていける”セット販売”思考がうまく発揮できたケースだと思います。(もちろん、一緒に作り上げてくれたメンバーがいてこそのグランプリです。本当にありがとうございました!)
販促コンペはコピーライターど真ん中の公募ではないのですが、同じコンペに応募していたであろう大手広告代理店の同世代のクリエイターと真っ向勝負して(瞬間風速ですが)勝てたという結果は、僕にとって孤独な「自称」から始まった道のりが明確な「実証」に変わった瞬間であり、感慨もひとしおでした。もちろん実務とコンペでは求められるスキルが違うということもよく理解していますが、僕にとってはすごく意味のある受賞になりました。

共同制作者:松沢洋祐 / 久松葵
大阪・関西万博パビリオン「ノモの国」 基本構想ディレクション
タイムリーなプロジェクトなのでこちらもご紹介します。次世代を担う子どもたちに「自分を信じるチカラと一歩を踏み出す勇気」が持てるきっかけを提供するパビリオンとして、初期の基本構想のフェーズにおいて主催企業側のクリエイティブ担当として体験ストーリー・ロゴ・タグライン・ゾーニング設計のディレクションを担当しました。
本当に多くの社内外のクリエイターの皆様の力が結集されたことで実現したパビリオンなので「僕がやりました」とはとても言えないのですが、パビリオンのタグラインである「Unlock your nature」のディレクションなど、コピーライター的思考も発揮できた印象深い仕事です。

子どもたちの可能性を”Unlock”するパビリオン
おわりに
さて、長きにわたり僕の「自称と実証」の道のりにお付き合いいただきありがとうございました。
今回「自称と実証」というコンセプトを思いついたのは、会社のとある先輩の言葉がきっかけでした。まだ入社して数年の若い頃、社外のお客さんと仕事で名刺交換をしている際にその先輩が「この子、自称コピーライターなんですよ!」と僕のことを紹介してくれました。その先輩は悪気はないような言い方だったのですが、僕はその時に「自称か…」という言葉にショックを受けたことを今でも覚えています。この原体験がモチベーションとなって、今日に至るまでデザインやコピーの仕事を続けてこれたのだと思います。
もちろんデザインとコピーの両方が完璧にできているだなんて、僕は全然自分のことを思っていません。世の中の優れたクリエイターの皆様を見て、どちらもこれからますます鍛えていかなければと思っています。
また、ひょっとするとあなたの周囲に「若いうちはひとつのスキルを集中して磨かないと、広く浅くの人間になっちゃうよ」的なアドバイスをくれる方がいるかもしれません。これは僕もそう思います。単純に考えて、24時間365日の限られた時間を集中投下するか分散投下するかでは、個々の習熟度は変わりそうですよね。
ただ、一方で「課題解決のために使える引き出しが複数ある」ということも強みになると思いますし、結果論ですが僕はそうしたスタンスを10年間取ってきたことで、仮にデザイナーのスキルだけで今でも頑張っていたとしたら、きっと携われなかったような素敵なプロジェクトの機会に恵まれたと思っています。ポケモンだって技は4つまで覚えられるのですから、デザインとコピーと、何ならあと2つの新しい技をこれから覚えていくぞ!くらいのつもりです(笑)。
今回ご紹介した「自称」と「実証」。この2つの視点を時には行ったり来たりしながら、あるいは同時に意識しながら新しい領域に挑戦していく。それが今の肩書きを飛び越えて、自分の可能性を広げていくためのひとつの方法ではないかと僕は考えています。
僕の個人的な体験談が、皆さんのこれからのキャリアを考える上で、あるいは新しい領域に一歩踏み出そうとしているその背中をほんの少しでも押すことができたなら、これほど嬉しいことはありません。みなさんが今日からどんな「自称」を生み出していくのか、僕もとても楽しみにしています。
それでは、またどこかでお会いしましょう!

