私の暮らしを少し変えた小説、「ツバキ文具店シリーズ」
今回紹介するのは小川糸さんの「ツバキ文具店シリーズ」です。シリーズ最新作「椿ノ恋文」の文庫化、待ち侘びておりました!せっかくの機会と最初から全部読み直したので、その魅力をネタバレをできるだけせずに語りたいと思います。
ざっくりと第1巻の概要
鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、手紙の代書を請け負う鳩子。今日も風変わりな依頼が舞い込みます。友人への絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙……。身近だからこそ伝えられない依頼者の心に寄り添ううち、仲違いしたまま逝ってしまった祖母への想いに気づいていく。大切な人への想い、「ツバキ文具店」があなたに代わってお届けします。
私の好きの出発点
シリーズ第一巻「ツバキ文具店」は2016年に刊行されました。10年前!
私がこの本を読んだのは、5年ほど前。「文房具」という題名に惹かれて、手に取ったと記憶しています。
この話は当時の私の憧れがつまっています。
雑巾がけをして京番茶を飲む、清々しい朝の風景・チャーミングなお隣さんとの付き合い・依頼人の人柄や手紙の内容に応じた筆記用具や便箋…
くらしの豊かさがそこにはある気がして、私も鳩子の真似をしたいと思ったのです。
今振り返ってみると、この小説をきっかけに興味をもったものがたくさんあります。
活版印刷という手間ひまをかけた印刷方法に心惹かれて、「活版印刷三日月堂」シリーズを読み、実際に活版印刷を体験しに行きました。果てには、大人の科学マガジンの小さな活版印刷機を買ってしまいました。
ガラスペンやインクの描写が素敵で、憧れるんだよねーと話していたら、プレゼントでガラスペンスターターキットをもらいました。さらに、100均にもガラスペンはあるらしいと知り、色んな種類のインクを集め、積読ならぬ積インクを増やしています。
代書を依頼しに来た人に様々な飲み物が振舞われたのを読んで、飲めるものを増やしたいと紅茶に挑戦しました。(珈琲は苦い…)意外と飲めたので、ルピシアのアソートパックを購入し、ちまちまと飲んでいます。
改めて列挙すると、この小説が私に与えた影響、大きすぎる…
変わっていく鳩子
今回、シリーズを通して一気読みして、鳩子がだんだん人間味を増していることに気が付きました。
物語の最初、主人公である鳩子は朝から掃除に精を出し、ご近所さんと楽しい会話をして、鎌倉の美味しいご飯を食べる日々を過ごしています。もちろん、ツバキ文具店に舞い込む代書の依頼や亡くなった先代との関係に悩むことはありますが、それでもどこかゆとりのある暮らしの残り香のようなものが常にあったように感じます。
第2巻「キラキラ共和国」で、鳩子の暮らしは少しずつ変わり始めます。彼女の人生に関わる人が増えたことで、朝の時間にも若干の変化が発生し、今までより早めに目覚ましをかけることになります。それに伴い、悩みの内容も鳩子自身の人間関係に起因したものが増えていきます。それでも墨をすったり、仲間内で季節のイベントを楽しんだりする時間はあります。
そして最新の3巻。鳩子はさらに忙しくなり、自分の時間を確保できずにいました。でもそれが鳩子の人間臭さや内面をより鮮明にしていて、ちょっと特別な物語の登場人物から、等身大の、ひょっとしたら本当に鎌倉にいるかもしれない女性に変わっている気がします。
変わらないヒロイン、バーバラ婦人
私はこの物語の主人公は鳩子、そしてヒロインはお隣さんであるバーバラ婦人だと勝手に思っています。彼女は毎回名言を鳩子に授けてくれます。その中でも私が一番好きなのは、以下の部分。
「あのね、心の中で、キラキラ、って言うの。目を閉じて、キラキラ、キラキラ、ってそれだけでいいの。そうするとね、心の暗闇にどんどん星が増えて、きれいな星空が広がるの」(中略)
「これをやるとね、辛いこととか、悲しいこととかも、全部きれいな星空に紛れちゃうの。」
第2巻「キラキラ共和国」につながる大切な教えです。
私も内心のイライラをキラキラに変えられる人になりたい…!
最新の3巻はある事情から彼女の登場は少ないのですが、だからこそ、その登場が待ち遠しく嬉しい!
3巻に以下のように鳩子が考える場面があります。
バーバラ婦人にもうすぐ会えると思ったら、朝飲む京番茶までが輝きを増した。間違いなく、この感情はときめきというやつである。
読んでいて、わかるー!と思わず膝を打ってしまいました。より身近に感じられるようになった鳩子とは違い、バーバラ婦人はずっと可憐で可愛らしいイメージのまま。変わるものも変わらないものも描かれているのが、このシリーズの魅力になっている気がします。将来はバーバラ婦人のようなチャーミングなおばあちゃんになりたいものです。
鳩子たちにまた会えるかも
最新の3巻は2巻から約10年後の鳩子たちが描かれています。実際の出版も約8年の時間が空きました。今回改めて3冊を一気読みして、鳩子たちと同じ時間を生きているような気がして、しみじみしてしまいました。
初めて読んだ時とは状況が違うはずなのに、それでも面白いなと思えるのがこの作品のすごいところ。ずっと手元に持っておきたいからと、文庫本が出版されるのを待っていた甲斐がありました。
ちょっぴり嬉しかったのはシリーズ完結と書かれていなかったこと。何年先になるかはわかりませんが、新キャラも含めた鳩子たちの変化を楽しみにしながら、ゆったりと続編を待ちたいと思います。
こうやってじっくり振り返ることで、積読を思い出してしまいました。
文房具屋つながりで購入した『銀座「四宝堂」文房具店』シリーズです。
調べてみたところ既刊が7冊!ゆったりと待つ間の本には困らなさそうです。
「ツバキ文具店シリーズ」こんな人におすすめ
●贈り物の包装にこだわっちゃう人
鳩子が手紙のしつらえを考えるシーンにきっと心がときめきます。
●ちょっと泣きたい人
何回読んでも、別のところでじんわりきます。
●3巻だけ未読の人
冒頭に鳩子からの素敵な手紙があるので、期間が空いたのを心配する必要はありません。読もう!!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また読んだ本を書き連ねていきます。
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