裁量労働制の対象拡大と日立製作所
政府の規制改革推進会議(働き方・人への投資WG)で日立製作所が裁量労働制の対象拡大を要望し、その要望が閣議決定された規制改革実施計画に反映されました。実施計画によると労働政策審議会(厚労大臣の諮問機関)で議論されることになっています。
働き方・人への投資WG
政府の規制改革推進会議(第8回)働き方・人への投資ワーキンググループ(WG)は今年(2026年)4月14日にオンラインで開催。議事録によると議題は「労働時間法制に係る政策対応の在り方について」。
出席者は(委員等)間下直晃座長、堀天子座長代理、中室牧子委員、宇佐川邦子専門委員、水町勇一郎専門委員、安中繁専門委員、(事務局)内閣府規制改革推進室 阿久澤孝室長、菱山大次長、三谷将大参事官、(関係者)鈴木重也・一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)労働法制本部⾧、明崎雄大・株式会社日立製作所トータルリワード部労務・雇用企画グループ主任、玉木諒・一般社団法人スタートアップ協会事務局長、堤明純・学校法人北里研究所北里大学医学部教授、進藤創・日本商工会議所産業政策第二部部長、
清田素弘・日本商工会議所産業政策第二部担当部長、山崎篤男・一般社団法人全国建設業協会専務理事、家永勲・弁護士法人ALG&Associates企業法務担当役員・パートナー弁護士、尾田進・厚生労働省大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、川口俊徳・厚生労働省労働基準局労働条件政策課長、前田奈歩子・内閣官房日本成長戦略本部事務局参事官。
あらためて言わなくても理解できると思いますが、これほどのメンバーがそろいながら労働者側の出席者が一人もいません。
働き方・人への投資ワーキング・グループ(第8回) 議事録(PDFファイル)
日立製作所の提出資料
規制改革推進会議の働き方・人への投資ワーキング・グループ(第8回) における日立製作所の提出資料(PDFファイル)は次のとおりです。
資料「日立製作所の裁量労働制について」(株)日立製作所(PDFファイル)
日立製作所の裁量労働制
規制改革推進会議の働き方・人への投資ワーキング・グループ(第8回)議事録によると、明崎雄大(株)日立製作所トータルリワード部労務・雇用企画グループ主任は次のように発言しています。
裁量労働制の制度概要・運用状況
裁量労働制の導入経緯
日立製作所の明崎主任は、まず裁量労働制の導入経緯について「従業員が自らの知識・技術や創造的な能力を生かせるよう、仕事の進め方や時間配分に関する主体性を尊重すること、対象者の働き方に対する意思をより重視することで、多様な人材の多様な働き方を実現し、生産性の向上・イノベーション創出などにつなげることを目的として2004年に導入した制度となってございます」と説明しています。
裁量労働制の対象部門・職種・等級
また対象部門に関しては特に制限を設けず、対象職種は「こちらも幅広く使っておりまして、企画業務型におきましては営業企画だったり企画、調達、 財務、人事総務、法務、広報などにおいて適用してございます。専門業務型につきま しては研究開発だったり設計開発、SEなどについて適用してございます」と述べ、適用対象者は「総合職が全部で四等級あるのですけれども、 そのうち上位三等級について適用しているという状況でございます。
概ね平均的には入社4年目以降から該当するというところでございます」と説明しています。
裁量労働制の適用者認定
日立製作所の明崎主任は、裁量労働制の適用者認定の在り方について「裁量労働制の対象業務がJD(ジョブディスクリプション)に定められていて、かつ、非対象業務がJDに予定されていないということを条件に認めているというところでございまして、 対象者の適用意思を踏まえて会社が認定するということで対象者を認定してございます」と述べています。
認定基準としては「適用によって従来以上に業務効率の向上が期待できる者と定めてございます」と説明し、「申請は原則として半期に1回という形で認めております」と。
みなし労働時間と裁量勤務手当
一日のみなし労働時間は「7時間45分と所定労働時間と同じ時間」、裁量勤務手当は時間外労働35時間(脚注2)相当分を毎月支給している」とのこと。(脚注2=実際の発言では「時間外労働30.5時間」としているものの、正しくは「時間外労働35時間」であるため議事録を修正)
裁量労働制の適用除外基準(重要)
適用除外基準については、明崎主任は「こちらは主なものは3つございまして、まずは当然本人から適用除外の申出があった場合、二つ目として業務の遂行手段及び時間配分の決定などに関して具体的な指示を受ける場合、三点目として、健康管理用時間と書いているのですけれども、PCの起動時間で算出されます所定労働時間を超えた時間が月80時間を超えた場合は適用除外するとしてございます」と説明しています。
裁量労働制の労働時間管理(重要)
また明崎主任は「労働時間管理ですけれども、こちらはPCのログをベースに日々の勤休について本人がシステム上で自己申告をして、上長がその内容を確認して承認を行うという形で日々承認を行っております」「健康管理の観点から所定労働時間を超えた労働時間数を把握しているところでございます」と述べています。
そして「深夜労働だったり法定休日労働につきましては上長の許可が必要としておりまして、原則として深夜労働は禁止としてございます」とのことです。
日立製作所の健康管理措置
明崎主任は健康管理措置について「こちらは健康管理用時間が月80時間以上、あるいは3か月連続で60時間以上に達した場合には、健康管理措置として医師などによる長時間残業者健診を実施」、また「その水準に達した時点、あるいは達する前の一定時間に達した時点で本人及び上司に対してアラートを発信している」とのこと。
また日立製作所の労働組合は「これ(健康管理措置)によって人材の多様化が進んで多様な働き方に対するニーズが高まる中、プライベートと仕事の両立を図ることができる制度として評価していただいております」と明崎主任は述べています。
労使委員会の運営状況
明崎主任によると「半期に1回裁量労働制度に関する労使委員会を実施」、また、これとは別に月1回の頻度で労働時間に関する労使委員会も開催して、「働き方であったり長時間労働に関する議論を労使で行っている」とのこと。
また、労使委員会ではは「法定の開示事項の確認に加えて各事業場における適用状況、苦情の有無、平均の健康管理用時間の推移、健康管理措置の実施状況」「業務内容を踏まえた適用の妥当性」などを確認しているとのこと。
裁量労働制の導入効果について
日立製作所の明崎主任は「対象者が全部で10,000名程度いる中で、8割程度の方に対して今、裁量労働制が適用」、労働時間の状況は「こちらも特に管理職だったり、一般・フレックスタイム制勤務者と大きく差異があるわけではなく、概ね25時間程度の健康管理用時間、いわゆる残業時間で推移」と説明。
裁量労働制の導入効果について「3つある」とし、一つ目が「時間、場所にとらわれない柔軟な働き方の実現」。明崎主任によると「特に育児、介護を行う従業員については、過去は時短勤務を選択する方が多かったのですけれども、最近は裁量労働制を選択することで仕事とプライベートを両立するケースが増えてきている」とのこと。
二つ目は「フレックスとの大きな差異という部分になるかと考えているのですけれども、業務に裁量権を与えることによる生産性、モチベーションの向上が見られる」と明崎主任は述べています。
そして、三点目が「ジョブ型人財マネジメントとの親和性」とのこと。明崎主任は「裁量労働制は労働時間の長さではなく成果に重点を置くという働き方を目指して導入したも のなのですけれども、こちらはジョブに基づく成果評価を行うというジョブ型人財マ ネジメントとの親和性が高く、生産性の向上につながっていると考えております」と語っています。
(略)日立製作所の明崎と申します。
まず、当社におけます裁量労働制の制度概要・運用状況でございます。
こちらの画面のとおりなのですけれども、まず導入の経緯でございます。
こちらは画面にございますとおり、従業員が自らの知識・技術や創造的な能力を生かせるよう、仕事の進め方や時間配分に関する主体性を尊重すること、対象者の働き方に対する意思をより重視することで、多様な人材の多様な働き方を実現し、生産性の向上・イノベーション創出などにつなげることを目的として2004年に導入した制度となってございます。
特に対象部門に関しては制限を設けてございません。
対象職種ですけれども、こちらも幅広く使っておりまして、企画業務型におきましては営業企画だったり企画、調達、 財務、人事総務、法務、広報などにおいて適用してございます。
専門業務型につきま しては研究開発だったり設計開発、SEなどについて適用してございます。
その上で、対象者ですけれども、弊社は総合職が全部で四等級あるのですけれども、そのうち上位三等級について適用しているという状況でございます。
概ね平均的には 入社4年目以降から該当するというところでございます。
適用者の認定の在り方なのですけれども、こちらも画面のとおりで、裁量労働制の対象業務がJD(ジョブディスクリプション)に定められていて、かつ、非対象業務がJDに予定されていないということを条件に認めているというところでございまして、 対象者の適用意思を踏まえて会社が認定するということで対象者を認定してございます。
認定基準としては、適用によって従来以上に業務効率の向上が期待できる者と定めてございます。
申請は原則として半期に1回という形で認めております。
一日のみなし労働時間ですけれども、こちらは7時間45分と所定労働時間と同じ時間を定めてございます。
こちらは裁量勤務手当の方なのですけれども、時間外労働35時間(脚注2)相当分を毎月支給しているところでございます。
(脚注2)実際の発言では「時間外労働30.5時間」としているものの、正しくは「時間外労働35時間」であるため修正。
適用除外基準ですけれども、こちらは主なものは3つございまして、まずは当然本人から適用除外の申出があった場合、二つ目として業務の遂行手段及び時間配分の決定などに関して具体的な指示を受ける場合、三点目として、健康管理用時間と書いているのですけれども、PCの起動時間で算出されます所定労働時間を超えた時間が月80時間を超えた場合は適用除外するとしてございます。
その上で、労働時間管理ですけれども、こちらはPCのログをベースに日々の勤休について本人がシステム上で自己申告をして、上長がその内容を確認して承認を行うという形で日々承認を行っております。
健康管理の観点から所定労働時間を超えた労働時間数を把握しているところでございます。
なお、深夜労働だったり法定休日労働につきましては上長の許可が必要としておりまして、原則として深夜労働は禁止としてございます。
健康管理措置なのですけれども、こちらは健康管理用時間が月80時間以上、あるいは3か月連続で60時間以上に達した場合には、健康管理措置として医師などによる長時間残業者健診を実施しているところでございます。
また、その水準に達した時点、あるいは達する前の一定時間に達した時点で本人及び上司に対してアラートを発信しているというところでございます。なお、組合からはこれによって人材の多様化が進んで多様な働き方に対するニーズが高まる中、プライベートと仕事の両立を図ることができる制度として評価していただ いております。
こちらは労使委員会の運営状況なのですけれども、こちらは半期に1回裁量労働制度に関する労使委員会を実施しているというところと、これとは別に月1回の頻度で労働時間に関する労使委員会も開催しておりまして、働き方であったり長時間労働に関する議論を労使で行っているというところでございます。
その労使委員会におきましては、法定の開示事項の確認に加えて各事業場における適用状況、苦情の有無、平均の健康管理用時間の推移、健康管理措置の実施状況、あとは業務内容を踏まえた適用の妥当性などを確認しているというところでございます。
それでは、項番2の裁量労働制の効果について御説明申し上げます。
まず左の適用状況なのですけれども、対象者が全部で10,000名程度いる中で、8割程度の方に対して今、裁量労働制が適用されているという状況でございます。
労働時間の状況ですけれども、こちらも特に管理職だったり、一般・フレックスタイム制勤務者と大きく差異があるわけではなく、概ね25時間程度の健康管理用時間、いわゆる残業時間で推移しているという状況でございます。 右側ですけれども、主な導入効果として3つあると考えてございます。
一つ目が、時間、場所にとらわれない柔軟な働き方の実現というところでございます。
こちらは当社はコロナ禍を経て出社とリモートワークを組み合わせた柔軟な働き方が定着している状況でございます。
特に育児、介護を行う従業員については、過去は時短勤務を選択する方が多かったのですけれども、最近は裁量労働制を選択することで仕事とプライベートを両立するケースが増えてきているところでございます。
二つ目は、フレックスとの大きな差異という部分になるかと考えているのですけれども、業務に裁量権を与えることによる生産性、モチベーションの向上が見られるとい うところでございます。
三点目が、ジョブ型人財マネジメントとの親和性というところでございます。
裁量労働制は労働時間の長さではなく成果に重点を置くという働き方を目指して導入したも のなのですけれども、こちらはジョブに基づく成果評価を行うというジョブ型人財マ ネジメントとの親和性が高く、生産性の向上につながっていると考えております。
裁量労働制の対象拡大を要望
日立製作所の明崎主任は、日立製作所・裁量労働制の制度概要や運営状況や導入効果の説明につづいて、政府に対して裁量労働制に関する要望を述べています。
非対象業務を含むケースも企画業務型適用を
まず非対象業務を含むケースの裁量労働制の適用について明崎主任は「現状、非対象業務が短時間でも予定されている場合は企画業務型の対象外となってしまいますが、実態としては非対象業務を一部行っている場合であっても、遂行手段や時間配分の裁量を委ねて企画・立案・調査・分析業務を主たる業務として行うことは可能でありまして、こうした一部非対象業務を含むようなケースについても企画業務型の適用を認めていただきたい」と要望しています。
明崎主任は具体例として「人事業務について、人事施策の企画・立案に関する業務に従事している時間が大半であるという方がいらっしゃる一方で、一部定型的な業務、例えば、給与計算などに従事している場合、業務遂行の手段や時間配分の大 半については裁量に委ねている場合であっても裁量労働制の適用が認められません。その結果として、労使では裁量労働の対象としたい職務においても適用ができず、モ チベーション低下につながっていくと考えてございます」としています。
課題解決型営業についても企画型適用を
次に日立製作所の明崎主任は「いわゆる課題解決型営業でございますけれども、特定の顧客向けの商品・サービスを企画・立案・調査・分析した上で、それに基づき開発・提案まで行う業務についても企画型裁量労働制の適用を認めていただきたい」と政府に対して要望しています。
明崎主任は(事例として)「営業職について、現状、顧客の課題解決を行う課題解決型営業、いわゆるソリューション営業については非対象業務とされておりますけれども、顧客の課題を調査・分析し、ソリューションを企画・立案しており、その業務遂行の手段や時間配分などについては従業員の裁量に委ねているという場合であっても裁量労働制の適用は認められておりません。その結果として、労使では裁量労働の対象としたい業務においても適用できず、こちらもやはりモチベーションの低下につな がっている」と述べています。
そして日立製作所の明崎主任は「是非とも、こうしたものについても裁量労働の適用対象としていただくことによりまして、時間にとらわれない働き方をより広く実現し、仕事とプライベートの両立に資すること、また、働き方に裁量権を与えることによって生産性やモチベーションの向 上に資することが期待できる」と。
三点目、裁量労働制に関する要望というところで申し上げさせていただきます。
こちらは大きく2点ございまして、上段はいわゆる非対象業務を含むケースの裁量労働制の適用でございます。
画面のとおりなのですけれども、現状、非対象業務が短時間でも予定されている場合は企画業務型の対象外となってしまいますが、実態としては非対象業務を一部行っている場合であっても、遂行手段や時間配分の裁量を委ねて企画・立案・調査・分析業務を主たる業務として行うことは可能でありまして、こうした一部非対象業務を含むようなケースについても企画業務型の適用を認めていただきたいと考えてございます。
こちらは具体例なのですけれども、人事業務について、人事施策の企画・立案に関する業務に従事している時間が大半であるという方がいらっしゃる一方で、一部定型的な業務、例えば、給与計算などに従事している場合、業務遂行の手段や時間配分の大 半については裁量に委ねている場合であっても裁量労働制の適用が認められません。
その結果として、労使では裁量労働の対象としたい職務においても適用ができず、モ チベーション低下につながっていくと考えてございます。
二点目は、いわゆる課題解決型営業でございますけれども、特定の顧客向けの商 品・サービスを企画・立案・調査・分析した上で、それに基づき開発・提案まで行う業務についても企画型裁量労働制の適用を認めていただきたいと考えてございます。
こちらも事例ですけれども、営業職について、現状、顧客の課題解決を行う課題解決型営業、いわゆるソリューション営業については非対象業務とされておりますけれども、顧客の課題を調査・分析し、ソリューションを企画・立案しており、その業務遂行の手段や時間配分などについては従業員の裁量に委ねているという場合であっても裁量労働制の適用は認められておりません。
その結果として、労使では裁量労働の対象としたい業務においても適用できず、こちらもやはりモチベーションの低下につな がっていると考えております。
是非とも、こうしたものについても裁量労働の適用対象としていただくことによりまして、時間にとらわれない働き方をより広く実現し、仕事とプライベートの両立に資すること、また、働き方に裁量権を与えることによって生産性やモチベーションの向 上に資することが期待できると考えております。
簡単ですが、御説明は以上とさせていただきます。
お時間を頂きましてありがとうご ざいました。
閣議決定された規制改革実施計画
今月(2026年7月)21日に閣議決定された『規制改革実施計画』45ページ~には変形労働時間制および裁量労働制の見直しについて労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)で検討するように、と極めて詳細に記載されています。
今回は変形労働時間制については省かせていただきますが、『規制改革実施計画』48ページ~には事項名「裁量労働制の適用対象業務の在り方」の規制改革の内容には「一部の企業や民間経済団体からは、以下に掲げる課題等への対応が必要であるとの声がある」「我が国の企業においては、企画業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者に全社横断的なプロジ ェクト型業務への参加や安全衛生委員会への出席といった非対象業務も担当させる場合があることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない企画業務型裁量労働制を適用することが困難であること」と記載されています。
そして「以上の声や指摘などを踏まえ、心身の健康維持と労働者の選択を前提に柔軟で多様な働き方を実現する観点から、厚生労働省は、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について労働政策審議会にお いて見直しの検討を開始し、結論を得次第、 必要な措置を講ずる」と書かれています。
事項名
裁量労働制の適用対象業務の在り方
規制改革の内容
労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条の3に定める専門業務型裁量労働制及び同法第38条の4に定める企画業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者に委ねる業務に従事する労働者を対象とする制度であり、適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリ ットのある働き方の実現が見込まれるものの、厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、専門業務型裁量労働制の適用労働者割合は期間を定めずに雇われている労働者全体の約1.1%、企画業務型裁量労働制の適用労働者割合は期間を定めずに雇われている労働者全体の約0.3%となっている。
これに対して、一部の企業や民間経済団体からは、以下に掲げる課題等への対応が必要であるとの声がある。
・裁量労働制は、令和7年に実施された日本経済団体連合会の「ホワイトカラー労働者の裁量労働制適用ニーズ等に関する調査結果」によると、メリハリを付けて自分のペースで働ける、就労時間が短くても一定額の裁量労働手当等を受け取ることができる、成果に応じた処遇が受けられる可能性があるといった理由により、裁量労働制を適用されていないホワイトカラー労働 者のうち約3割が同制度の適用を希望しているとされている一方、「現行の裁量労働制の対象業務に関する解釈について」(令和5年8月2日厚生労働省労働基準局労働条件政策課長及び監督課長連名通達)においては、対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが原則であり、企画、立案、調査及び分析の業務とは別に、たとえ非対象業務が短時間であっても、それが予定されている場合は、企画業務型裁量労働制を適用することはでき ないこととされており、我が国の企業においては、企画業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者に全社横断的なプロジ ェクト型業務への参加や安全衛生委員会への出席といった非対象業務も担当させる場合があることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない企画業務型裁量労働制を適用することが困難であること。
・規制改革推進に関する答申(令和7年5 月)にも示されたとおり、スタートアップにおいては一人の労働者が複数の業務を担当することが一般的であることから、対象業務と非対象業務の混在が認められていない裁量労働制を適用することが困難であるほか、企画業務型裁量労働制を導入する際に必要な労使委員会の設置等が手続負担等の面からスタートアップにおける制度導入の障壁になっていること。
・特定の顧客向けの商品・サービスの企画、立案、調査及び分析を行った上で、それに基づき開発・提案まで行う業務に対しても 裁量労働制を適用するニーズがあるが、現行制度では適用が困難であること。
・グループ会社等で重複する人事・財務・経 営企画などの間接業務を別会社に集約・標 準化し、効率化を目指す、いわゆる「シェアードサービス業務」がグループ化を進める企業を中心に活用される中、「シェアードサービス業務」の中でも企画、立案、調査及び分析を行う業務に対しても裁量労 働制を適用するニーズがあるが、現行制度では適用が困難であること。
一方、令和元年に実施された厚生労働省の 「裁量労働制実態調査」においては、①労働基準法第38条の3第1項第2号に規定する労働時間として算定される時間及び同法第38条の4第1項第3号に規定する労働時間として算定される時間(以下「みなし労働時間」という。)と実際の労働時間の間に、専門業務型裁量労働制の適用労働者では平均し て46分、企画業務型裁量労働制の適用労働者では平均して1時間8分の差がそれぞれ 見られること、②専門業務型裁量労働制及び企画業務型裁量労働制の適用労働者のそれぞれ約2割が裁量労働制の適用に対する満足度について「不満である」又は「やや不満である」と回答していること、③適用労働者の苦情の内容として「業務量が過大である」 「労働時間が長い」「賃金などの処遇が悪い」「人事評価が不適切である」などの点が挙げられていることなどを踏まえ、制度の趣旨に沿っていない運用への懸念については、労働者の健康確保や長時間労働防止、適切な処遇確保等の観点から、制度の濫用防止措置について検討する必要がある。
特に、みなし労働時間については、企画業務型裁量労働制指針等において、対象業務の内容並びに対象労働者に適用される賃金・評価制度を考慮して適切な水準のものとなるようにし、対象労働者の相応の処遇を確保することが必要とされていることを踏まえ、適切に設定されているかなど、実態を明らかにし、制度の趣旨に沿っていない運用の懸念がある場合には、適切な措置を講じて、未然に防止するべきである。
これに対して、公衆衛生学の観点からは、 裁量労働制の運用について、以下の指摘がある。
・長時間労働や概日リズムの乱れ、心理的に仕事から距離を置けないこと、裁量のない労働者への制度の適用、努力に見合わない報酬や評価等が生じた場合には、健康上のリスクとなりやすい。
・使用者には、正確な労働時間の管理や裁量に見合うタスクの設定、適切な成果の評価が求められるほか、健康・福祉確保措置として、勤務間インターバル(企画業務型裁量労働制指針等に基づき、終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保することをいう。)、深夜労働(労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させることをいう。)の回数を1か月について一定回数以内とすること、 使用者が把握した労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除、年次有給休暇の連続取得の促進等の予防的措置を講ずることが重要であり、さらに、時間外の連絡方法に関するルールの作成や仕事を与える管理監督者に対する心理的安全性に関する教育の実施、労働者に対する労働時間等の自己管理能力を醸成する教育の実施等も考えられる。
以上の声や指摘などを踏まえ、心身の健康維持と労働者の選択を前提に柔軟で多様な働き方を実現する観点から、厚生労働省は、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について労働政策審議会にお いて見直しの検討を開始し、結論を得次第、 必要な措置を講ずる。
実施時期
令和8年検討開始、早期に結論、結論を得次第速やかに措置
所管府省
厚生労働省
気になる東京新聞の報道
東京新聞は今月(2026年7月)14日に労働政策審議会(厚労大臣の諮問機関)労働条件分科会に関するウェブ記事『裁量労働制で連合「労働時間の適正把握、義務化を」 政府がモデル扱いする(略)で「不適切運用」』を配信しています。
東京新聞のウェブ記事には「政府が裁量労働制の『代表例』と位置づけてきた(略)で、実労働時間を過少に申告するなど不適切な運用があったとの東京新聞の報道を受け、連合(日本労働組合総連合会)の菅村裕子委員は『労働時間の適正把握を義務化する必要性が高いと、報道も含めて認識した』と指摘した」と書かれています。
(略)報道では、制度適用者の過労死ラインを超える長時間労働や、それを過少申告する社内のシステムについて現役社員が証言した。(略)の委員はこの分科会にも使用者代表として名を連ね、議論を左右する存在だ。
制度の適用拡大を求める使用者側の意見に対し、菅村委員は「制度のさらなる拡充は、不適切な運用や長時間労働を招きかねない」と批判。(略)の委員から、裁量労働制についての言及はなかった。経団連の鈴木重也委員は「裁量性を確保するため乱用防止策の具体的検討が必要」としつつ、労働時間の把握の規制強化については触れなかった。
また今月(2026年7月)15日の連合(日本労働組合総連合会)ニュース(労働条件分科会で、裁量労働制などの緩和不要と生活時間保障に向けたルール強化の必要性を改めて主張)には「7月14日、第210回 労働政策審議会 労働条件分科会が開催され、『日本成長戦略(案)』『骨太の方針2026(案)』などを踏まえて議論が行われました」とあり、規制改革実施計画(案)のことは記載されていません。また東京新聞が報道した(略)のことについてもふれられていません。
(略)
裁量労働制について
今回も使用者側委員からは、裁量労働制は適正に運用されれば生産性向上や柔軟な働き方の実現につながる制度であり、濫用防止策とセットで見直すべきとの発言が繰り返されました。
これに対し、労働者側委員は、現場の実態として、裁量労働制は長時間労働になりがちであり、適切な裁量や処遇が確保できていないといった課題は、加盟組合へのヒアリングでも確認しており、長時間労働や健康被害を増やしかねないとして拡充や緩和に強く反対しました。
労働時間制度について
労働者側委員は、労働者の健康確保について明確なエビデンスが確立している、勤務間インターバル制度の導入義務化や長期の連続勤務規制の導入、「つながらない権利」の法制化などが必要と訴えました。あわせて、長時間労働の是正や、休みをとりやすい環境整備こそが生産性を高めることが明確になっていることも主張しました。
他方で、使用者側委員からは、時間外労働の月45時間以上年6回までの規制や変形労働時間制の緩和を求める意見がありました。これに対し労働側委員は、長時間労働の常態化や過労死等を招きかねない規制緩和はあってはならないと反論しました。
追記:労働条件分科会議事録を確認
2026年7月14日に開催された労働政策審議会(第210回)労働条件分科会の議事録が公開されましたので連合の菅村委員の発言を確認しました。
議事録によると、菅村委員は「(略)先日、裁量労働制を導入している大手企業において不適切な運用が見られるという報道がございましたが、個別の事案には立ち入りませんが、いずれの労働時間制度においても実労働時間の管理を徹底させることが不可欠であって、労働時間の適正把握を義務化する必要性が高いことを改めて認識したところでございます。(略)」と発言しています。
*本日のnote(ノート)記事に関連する記事はマガジン『裁量労働制の見直し(対象拡大)最新情報をお届け』に掲載しています。
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