『見えないつながりとともに(仮)』#5
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ニーナは久しぶりに、バブルの家へ戻ってきた。
「ニーナ! 久しぶり!」
バブルは嬉しそうに、念話でニーナだけに語りかけた。
「バブル! 久しぶり!」
ニーナの声も嬉しそうに弾んでいた。
バブルと分身体たちが同時に同じ場所に集まっていると、火事や事故に巻き込まれたとき、全員を一度に失ってしまう危険がある。
だから、みんなが同時に集まることはしなかった。
「せっかくだから、今日はニーナの分身体を解除して、一旦、身体的にも同期させようか」
「そうだね。たまには同期しないとね。個体差が大きくなるから」
「特に、ココ」
「ココだね」
二人は、同時にため息をついた。
「ココと身体的に同期すると、みんなの体重とかウエストとか、ちょっと増えちゃうんだよね!」
「たまにココと会ったときに、“甘いものばっかり食べないで、運動もちゃんとしなよ!”って言ってるんだけどね。全然変わらないんだよね」
「やっぱり、経験や記憶の同期のときに、分身体ごとの名前で区切りを設けはじめたからかね」
「そうかもね。一度解除して、もう一度分身しても、その名前の記憶の箱だけを使って活動を始めるようになったし」
「ココの場合は、そのせいで太りやすくなっちゃってるよね」
「そうなんだよね……」
ニーナは透明なままだった。
けれど、バブル本人には、ニーナの半透明の苦笑いが見えていた。
身体的な同期を終えたあと、バブルはもう一度ニーナを分身させた。
その夜も、バブルはニーナと遅くまで念話でお喋りをしていた。
久しぶりに家へ戻ってきたせいか、ニーナの話はなかなか終わらなかった。
バブルも、それを止めようとはしなかった。
二人はいつのまにか、同じベッドで寝落ちしていた。
朝になって、バブルは机の上に置いてあった一枚のチラシを手に取った。
「ニーナ。これ、学院のアントレ科の実習でやってる《無料探し物依頼受付中!》のチラシだけど、モーリスさんのポストに入れておいて」
ニーナはチラシを見た。
迷い猫や落とし物、仕事まで、なんでも無料で探してくれるようだった。
「バブル。いいけど、ポストに入れるだけでいいのかな?」
「うん。あとは、モーリスさんの問題だから」
バブルは少しだけ、チラシに目を落とした。
「モーリスさんの中に、まだ何かを変えたい気持ちが残っていれば、きっかけにはなるよ。目に留まらなかったら、また考えよう」
「わかった……」
ニーナは、まだ少し迷っているようだった。
「あっ、そうだ! ちょっとチラシ貸して」
ニーナの手に移って透明になっていたチラシが、バブルの手に戻って見えるようになった。
バブルはにやにやしながら、チラシの隅に《s.f.》と描いて、ニーナに渡した。
「《s.f.》って、何?」
「silent friends?」
バブルは「ふーん」という顔で聞いているだけだった。
「secret friends?」
今度は、少しだけ目を細めた。
「small favorは?」
バブルは答えなかった。
「今夜寝たら、私の記憶も少し混ざるでしょ。そこから先は、ニーナの自由」
ニーナは、なんだか釈然としなかった。
けれど、チラシを受け取ると、そのままモーリスさんの家へ向かっていった。

※ featuring シンフォニム「名前が意識させる」
「個性、選択、名前」
※ このオリジナル創作小説の世界観から、Sunoで生成した楽曲です。
それぞれのことばが、
迷いながら創るあなたの、小さな創作のヒントでありますように。
#創作のヒント
#思考のヒント
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Photo: Unsplash
(c) s.f.出版
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