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『見えないつながりとともに(仮)』#5

◀︎『見えないつながりとともに(仮)』#4

ニーナは久しぶりに、バブルの家へ戻ってきた。

「ニーナ! 久しぶり!」

バブルは嬉しそうに、念話でニーナだけに語りかけた。

「バブル! 久しぶり!」

ニーナの声も嬉しそうに弾んでいた。

バブルと分身体たちが同時に同じ場所に集まっていると、火事や事故に巻き込まれたとき、全員を一度に失ってしまう危険がある。

だから、みんなが同時に集まることはしなかった。

「せっかくだから、今日はニーナの分身体を解除して、一旦、身体的にも同期させようか」

「そうだね。たまには同期しないとね。個体差が大きくなるから」

「特に、ココ」

「ココだね」

二人は、同時にため息をついた。

「ココと身体的に同期すると、みんなの体重とかウエストとか、ちょっと増えちゃうんだよね!」

「たまにココと会ったときに、“甘いものばっかり食べないで、運動もちゃんとしなよ!”って言ってるんだけどね。全然変わらないんだよね」

「やっぱり、経験や記憶の同期のときに、分身体ごとの名前で区切りを設けはじめたからかね」

「そうかもね。一度解除して、もう一度分身しても、その名前の記憶の箱だけを使って活動を始めるようになったし」

「ココの場合は、そのせいで太りやすくなっちゃってるよね」

「そうなんだよね……」

ニーナは透明なままだった。

けれど、バブル本人には、ニーナの半透明の苦笑いが見えていた。

身体的な同期を終えたあと、バブルはもう一度ニーナを分身させた。

その夜も、バブルはニーナと遅くまで念話でお喋りをしていた。

久しぶりに家へ戻ってきたせいか、ニーナの話はなかなか終わらなかった。
バブルも、それを止めようとはしなかった。

二人はいつのまにか、同じベッドで寝落ちしていた。

朝になって、バブルは机の上に置いてあった一枚のチラシを手に取った。

「ニーナ。これ、学院のアントレ科の実習でやってる《無料探し物依頼受付中!》のチラシだけど、モーリスさんのポストに入れておいて」

ニーナはチラシを見た。

迷い猫や落とし物、仕事まで、なんでも無料で探してくれるようだった。

「バブル。いいけど、ポストに入れるだけでいいのかな?」

「うん。あとは、モーリスさんの問題だから」

バブルは少しだけ、チラシに目を落とした。

「モーリスさんの中に、まだ何かを変えたい気持ちが残っていれば、きっかけにはなるよ。目に留まらなかったら、また考えよう」

「わかった……」

ニーナは、まだ少し迷っているようだった。

「あっ、そうだ! ちょっとチラシ貸して」

ニーナの手に移って透明になっていたチラシが、バブルの手に戻って見えるようになった。

バブルはにやにやしながら、チラシの隅に《s.f.》と描いて、ニーナに渡した。

「《s.f.》って、何?」

「silent friends?」

バブルは「ふーん」という顔で聞いているだけだった。

「secret friends?」

今度は、少しだけ目を細めた。

「small favorは?」

バブルは答えなかった。

「今夜寝たら、私の記憶も少し混ざるでしょ。そこから先は、ニーナの自由」

ニーナは、なんだか釈然としなかった。

けれど、チラシを受け取ると、そのままモーリスさんの家へ向かっていった。

『見えないつながりとともに(仮)』#6▶︎

※ featuring シンフォニム「名前が意識させる」
「個性、選択、名前」

※ このオリジナル創作小説の世界観から、Sunoで生成した楽曲です。




 

それぞれのことばが、
迷いながら創るあなたの、小さな創作のヒントでありますように。
#創作のヒント
#思考のヒント


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Photo: Unsplash
(c) s.f.出版

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