『自分らしさに向かって(仮)』#1
裏路地の物陰で、息を潜めていた。
猫の居場所は、もうわかっている。
問題はここからだった。
猫も、姿の見えないこちらの気配に気づいたのか、歩みを止めた。
ダッシュで近づこうとしても、足が遅い。
当然、猫には逃げられる。
今日、これで5回目だ。
このまま続けても意味がない。
そう感じていた。
気分転換に近くにあるカフェに入ることにした。
爽やかなオレンジジュースが喉をすっと通っていく。焦りが、少しだけ穏やかになった。
そんな時間を過ごしながらも、猫の行動を《気配察知》で追い、《脳内マップ》に描き続けていた。
その途中で、何度も同じ通りを行ったり来たりしているクラスメイトの姿が目に入った。何をしているのだろう。
気になって、その子の動きも《脳内マップ》に描いていた。
もう、猫を追いかけるのはやめた。
次は、罠を置く。
《脳内マップ》に描かれた軌跡を眺めていると、時間を置いては戻ってくる場所があることがわかった。
そこだ。
餌は好みのキャットフード。飼い主からの情報だ。
餌のところまで入ると入口が閉まる檻。ただし今回は透明なアクリル製にした。
少しでも警戒を減らすためだった。
お金と時間を使ってしまったが、背に腹は変えられない。
猫がそこから離れるのを見計らって罠の檻を設置した。猫に見つからないように、少し離れたカフェで猫の動きを探ることにした。これでダメなら、途方に暮れることになりそうだ。
しばらくすると、猫が罠に近づいてきた。罠の周りを彷徨いている。警戒しているようだ。何度か様子を伺った後、罠の場所から遠ざかっていった。
違和感を覚え、罠の場所へ行ってみると、驚きの光景が目に入った。罠の檻の入口には角材が挟まっていた。入口は締まり切っていなかった。当然、好物のキャットフードはなかった。
お金と時間を無駄にしてしまった自分が情けなく、カフェでしばらく頭を抱えていた。
走り回っていたクラスメイトもこちらに気づいたらしく近づいてきた。
「ビリー、頭抱えてるみたいだけど、課題進んでないの?」
「ルナだって、そこを行ったり来たり、走り回ってるだけじゃないの?」
「私は、最初にこの猫探しの課題を選んだんだけど、まだ猫が見つからないんだよね」
「僕は、こっちの猫探しを選んだんだけど、居場所は分かるけど、すばしっこくて捕まえられないんだよな。高価な罠まで買ったけど…。」
「なぁーんだ!それなら、私は猫を捕まえられる。あなたは猫を探し出せる。協力して一緒に捕まえればいいじゃん!」
「でも、2人の場合は、1人10pt以上じゃなくて、2人で30pt以上になっちゃうよ!猫探しだと1ptだから、30匹以上だよ!」
「…」
「ひとりで、0ptよりマシでしょ?」

※ featuring シンフォニム「何人なら」
「できない、できる、もっとできる」
※ このオリジナル創作小説の世界観から、Sunoで生成した楽曲です。
それぞれのことばが、
迷いながら創るあなたの、小さな創作のヒントでありますように。
#創作のヒント
#思考のヒント
『自分らしさに向かって(仮)』索引
『自分らしさに向かって(仮)』#2▶︎
Photo: Unsplash
(c) s.f.出版
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