「留学したら受験に遅れる…」それは、親世代の話です【子どもの教育環境を考える⑤・最終回】
全5回のシリーズで、日本の教育環境を見つめ直し、中高生が海外で学ぶことの価値について考えてきました。
今回が最終回です。
前回は、誰も偏差値を知らない教室で子どもに何が起きるのかという話でしたが、今回は、ここまで読んで最後に残る「でも、受験は?」という不安に向き合います。
「話は分かりました。でも、うちは受験がありますから」
ご相談の終わりに、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。
留学の価値は分かった。
子どもが変わるのも、なんとなく想像できる。
でも、大学受験がある。
1年空けたら、同級生に置いていかれるんじゃないか。
帰ってきてから間に合うのか。
そもそも、留学なんてしたら不利になるだけじゃないのか。
この心配は、まったくの的外れではありません。
実際、不利になる場合もあります。
ただ、多くの親御さんが思い浮かべているのは、ご自身が受験生だった頃の入試なんですよね。
今の入試は、当時とはずいぶん形が変わっています。

いま大学に入る人の半分以上は、もうテスト一発勝負じゃない
まず、いちばん大きな変化からお伝えします。
今、日本の大学に入学する人のうち、半数以上が、当日のテストの点数だけで合否が決まる方式では入っていません。
書類と面接で選ぶ方式や、学校からの推薦で入る方式が、それだけ増えているんですね。
親世代の感覚だと、「推薦は成績が足りない子が使うもの」というイメージがあるかもしれません。
でも今は違います。
その子が何に関心を持ち、これまで何をしてきて、大学で何を学びたいのか。
そこを正面から評価する入り方が、主流の一つになりました。
そして、この方式と留学経験は、とても相性がいいんです。
1年なり2年なり、言葉の通じない場所で暮らした経験を持っている受験生は、そう多くありませんから。
「留学して英語が話せるようになりました」では、1点にもならない
ただ、勘違いしてほしくないことがあります。
留学したという事実だけでは、評価されません。
見られているのは、その経験を自分の言葉で語れるかどうかです。
なぜその国を選んだのか。
現地で何に困って、どう向き合ったのか。
その結果、何を考えるようになったのか。
それを大学のどの学びにつなげたいのか。
ここが説明できないと、「海外に行ってきました」で終わってしまいます。
だから僕は、留学する子には、うまくいかなかったことこそ書き留めておいてほしいと伝えています。
友達の輪に入れなかった日のこと。
言いたいことが言えずに、悔しかった日のこと。
そういう話のほうが、成功談よりずっと強いんです。
どう乗り越えたのかという過程が、その子自身を語ってくれるからですね。

海外の高校を2年通って卒業すると、日本の受験生と競わずに受ける方法がある
もう一つ、あまり知られていない入り方があります。
海外に2年以上滞在して、現地の高校を卒業した場合、多くの大学で“帰国子女”としての枠を使えるようになります。
一緒に受けるのは、同じように海外で高校時代を過ごした人たちだけ。
日本で受験勉強をしてきた高校生と、同じ土俵で競う必要がないんです。
受験科目は英語と小論文という学校が多いのですが、最近は多様化していて、書類審査だけ、面接だけ、というところもあります。
国公立にも私立にも、この枠はあります。
現地での成績がそのまま評価されるので、受験勉強に膨大な時間を取られることもありません。
ちなみに、高校時代に留学した子の多くは、最終的に日本の大学に進学しています。
海外に出たら日本には戻れない、という話ではないんですね。
正直に言えば、はっきり不利になる場合もあります
もちろん、いいことばかりではありません。
当日のテストの点数だけで決まる方式、いわゆる一般入試を前提にするなら、留学は不利に働きます。
数学や古文、日本史のように積み上げが必要な科目は、離れていた分だけ空白ができるからです。
高3の夏に帰国して、そこから切り替えるのは、時間的にかなり厳しい。
だから、帰国後に学年を一つ下げて準備をする子もいます。
学校によっては、長期の留学で元の学年に戻れないこともあります。
ここは事実として、隠さずにお伝えしておきます。
大事なのは、どちらの入り方を目指すのかを、出発する前にご家族で話しておくことです。
決めないまま出て、帰ってきてから慌てる。
これがいちばん苦しくなるパターンなんですよね。
合否が決まるのは半年後。自分で決めた経験は、その先ずっと効きます
ここで、少し視点を変えさせてください。
受験の合否は、数か月で確定します。
第一志望か、そうでないか。
結果は、はっきり出ます。
一方で、自分で決めること、知らない場所でやっていくこと、困ったときに人に助けを求めること。
こういう力は、いつ効いてくるのかが分かりにくい。
でも、20年後も30年後も効き続けます。
実は「役に立つ」という言葉には、共通の基準がありません。
その人が何を大切にして、どんな人生を送りたいのかによって、意味がまったく変わってくるからです。
だから僕は、3年後の合否だけで判断しないでほしいと思っています。
20年後のお子さんを思い浮かべたときに、どちらの経験を持っていてほしいか。
そう考えてみると、見える景色が変わってきます。

調べれば消える不安と、調べても消えない不安があります
ここまで書いてきたことで、消えた不安もあると思います。
入試の仕組みも、帰国後の進路も、調べれば形が見えてきますから。
でも、調べても消えない不安が残るはずです。
本当にこの子にできるのか。
親元を離れて大丈夫なのか。
自分の判断は間違っていないのか。
この不安は、情報では消えません。
それは子どもの課題ではなく、親であるご自身の課題だからです。
その選択の結果を、最後に引き受けるのは誰か。
そう考えると、進路は本来、お子さん自身の課題なんですよね。
親にできるのは、代わりに決めることではなく、決めるための材料を渡すこと。
そして、決めたことを信じて待つことです。
期待を信頼に変える、と僕はよくお伝えするのですが、これが本当に難しい。
ただ、海を挟んで手が届かなくなると、否応なく信じるしかなくなります。
その距離が、実は親のほうも自由にしてくれるんです。

我が子の好奇心は、親が与えて育つものではありません
最後に、このシリーズ全体でお伝えしたかったことを書かせてください。
図鑑を買っても、習い事を増やしても、子どもの好奇心は育ちません。
親が自分の人生を面白がっている姿を見て、初めて子どもは外の世界に興味を持ちます。
「仕事はつまらない」「社会は厳しい」と聞かされて育った子が、社会に出るのを楽しみにするはずがないですよね。
第1回では、「別に」しか返ってこない食卓の話を書きました。
第2回では、やめさせたいのにやめられない親御さんの事情を書きました。 第3回では、夢を聞かれて黙ってしまう理由を書きました。
そして前回、環境が変わると子どもに何が起きるのかをお伝えしました。
このシリーズを通して伝えたかったのは、「留学に行くべきだ」ということではありません。
子どもが自分の人生を自分で選べるようになるために、いま何ができるのかを、一緒に考えたいということです。
高校留学は、そのための強い方法の一つです。
でも、唯一の方法ではありません。
だからこそ、「何かが違う」「どう考えたらいいか分からない」など、漠然と迷っている段階で構いませんので、一度お話を聞かせてください。
お子さんに合う道を、ご家族と一緒に探していけたらうれしいです。
僕は娘のエリンの高校留学(カナダの高校に3年間)をきっかけに、親として様々なことを考え、家族で対話を重ねてきました。
そして、この8年間、YouTubeなどで情報発信するかたわら、同じような不安や疑問を抱える皆さんの応援をしてきました。
そうしたすべての経験を1つのカタチにした書籍『中高生の海外留学 知るたび、自分と未来が広がる本』を出版しました!
留学の基礎知識から、英語力、生活の不安、そして親御さんの疑問まで、包み隠さず本音で語っています。
ぜひ手に取ってみてくださいね。

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アメリカの大学留学経験者であり、娘の高校留学を応援してきた親の立場の留学パパと、15歳で英語力ゼロからカナダの高校に留学したエリンが、皆さんの不安や疑問について、一緒に考えていきます。
無理な「押し付け」や「留学ありき」の話は一切しません。
ぜひお気軽にメッセージくださいね。

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