「将来の夢は?」に黙り込むのは、夢がないのではなく、まだ何も見ていないだけ【子どもの教育環境を考える③】
全5回のシリーズで、日本の教育環境を見つめ直し、中高生が海外で学ぶことの価値について考えています。
今回はその第3回です。
前回は、しんどいと分かっていても受験のレールから降りられない親御さんの事情でしたが、今回は、そのレールの上を歩いている子どもたちの「夢」の話です。
三者面談で「将来の夢は?」と聞かれた瞬間、我が子が黙り込む
「将来やりたいことは何かある?」
「…特にない」
三者面談でも、進路希望調査の紙でも、お正月に親戚から聞かれたときでも、 返ってくる答えはだいたい同じですよね。
親としては、少し不安になります。
この子は何も考えていないんじゃないか。
やる気がないんじゃないか。
まわりのお子さんは、もっとしっかりしているんじゃないか。
でも僕は、子どもたちの沈黙を「やる気の問題」だと思ったことが一度もありません。
答えられないのには、はっきりした理由があるからです。
今回はその理由を、我が子の一日をたどりながら見ていきたいと思います。

中学生の夢の1位は「好きなことを仕事にする」。高校生になると「安定した毎日」に変わる
中高生への意識調査に、少し切ない結果があります。
中学生に将来の夢を聞くと、1位は「好きなことを仕事にする」でした。
なりたい職業も、男子の1位はITエンジニアやプログラマー。
その理由は「ゲームが好きだから」です。
女子の1位は歌手や俳優、声優といった芸能の仕事で、理由は「モデルになりたいから」。
どれも、他人からの評価ではなく、自分の“好き”から出てきた答えですよね。
ところが、高校生になると1位が入れ替わります。
「安定した毎日を送る」が1位で、2位は「趣味を充実させて生きる」。
なりたい職業も、公務員が1位に上がってきます。
仕事は安定を取って、好きなことは仕事の外に置いておく。
そういう線の引き方が、高校生になるとはっきり出てくるわけですね。
たった数年のあいだに、子どもたちの中で何かが変わるんです。
現実が見えて大人になった、と言うこともできます。
でも僕には、選択肢を増やす前に諦めてしまっているように見えて、仕方がないんですね。

進路相談で話しているのは、結局「今の点数でどこに行けるか」だけ
学校には、進路について考える時間がちゃんとあります。
けれど実際に机の上に出てくるのは、模試の判定と偏差値表です。
「この成績なら、この高校が狙えます」
「ここは少し厳しいので、もう一つ下も押さえておきましょう」
これは“進学先”の相談であって、“進路”の相談ではありません。
進学先を決めるというのは、人生の通過点を一つ選ぶという意味でしかないからです。
本当は、「あなたは将来どうしたいの?」を先に考えたいところですよね。 でも実際は逆になっていて、行ける場所を決めてから、そこに合う理由を後づけしていく。
そういう作業になってしまっています。
だから「将来の夢は?」と急に聞かれると、多くの中高生は固まってしまうんです。
考えてこなかったのではありません。
考えるための時間も材料も、渡されてこなかっただけなんです。

我が子が「夢」だと思っているものは、親と先生と友達とスマホの中にしかない
ここが今回、いちばんお伝えしたいところです。
人は、自分が見たことのあるものの中からしか、将来を選べません。
中高生が知っている職業や生き方は、親、学校の先生、友達、そしてテレビやネットで“たまたま”見聞きしたもの。
その中のいくつか、という範囲を出ないんです。
しかもスマホの画面は、いま興味を持っているものの続きばかりを出してきます。
ゲームが好きな子にはゲームの動画が、音楽が好きな子には音楽の情報が、どこまでも流れてくる。
ちなみに同じ調査で、中高生の生きがいを聞くと、男子の1位はゲーム、女子の1位は音楽で、推し活がその次に来ています。
学校の成績とは関係のないところに、心の置き場所をちゃんと作っているんですよね。
そこは、僕はとても健全なことだと思っています。
ただ、その置き場所も、やはり画面の中にあります。
情報の量は、僕らが中高生だった頃とは比べものになりません。
でも、見えている世界そのものが広がったかというと、これがそうでもないんですよね。
情報量が増えることと、自分の選択肢が変わることは、まったく別の話なんです。

朝6時半に起きて、夜11時に寝る。この一日のどこで、新しい自分に出会うのでしょう?
もう少し具体的に見てみます。
朝6時半に起きて、7時半には家を出る。
学校で6時間から7時間の授業を受けて、部活があれば夕方まで。
そこから塾へ移動して、帰宅は夜9時か10時。
ごはんとお風呂と宿題を済ませたら、もう寝る時間。
この一日で会う大人は、親と、学校の先生と、塾の先生。
だいたいこの3種類ですよね。
行き先も、家と学校と塾の往復だけです。
この毎日の中から「自分の好きなことを見つけなさい」「将来やりたいことを決めなさい」と言われても、正直なところ、無理があると思うんです。
子どもがサボっているわけじゃありません。
新しいもの(人)と出会う機会そのものが、一日の中に用意されていないんです。

電柱を見て「すごい技術だ」と感動する人はいない。見慣れたものは、見えなくなる
人間には、環境に慣れるという素晴らしい力があります。
ただ、その力には副作用もあるんです。
道路沿いの電柱を見て、毎回「すごい技術だ!」と感動する人はいませんよね。
走っている車を見ても、「革命的な発明だ」とは思わない。
最初は驚いたはずのものでも、見慣れた瞬間に視界から消えてしまうからです。
そして同じことが、自分自身に対しても起きています。
毎日同じ場所で、同じ人と、同じことをしていると、自分の中にあるものにも何も感じなくなる。
「自分はこういう人間だから」という枠が、いつのまにか固まってしまうんです。
だから、いくら本人の内側を掘っても、答えは出てきません。
掘る場所ではなく、立っている場所のほうを疑ったほうがいい。
僕はそう思っています。

「うちの子には取り柄がない」のではなく、取り柄に出会う場所が家と学校と塾しかない
ここ数年で、体験そのものが評価の材料になってきました。
習い事も、旅行も、自然の中での活動も、「将来の役に立つかどうか」で選ばれるようになっています。
本来いちばん自由なはずの体験まで、有利か不利かで測られる。
こうなると、子どもはどこまで行っても採点される場所から出られません。 好きなことすら、誰かに見せるための材料になってしまいます。
「うちの子には、これといった取り柄がなくて」
ご相談の中で、本当によく聞く言葉です。
でも僕は、取り柄のない子に一度も会ったことがありません。
取り柄というのは、親が与えたり伸ばしたりするものではなくて、知らない世界に立ったときに、向こうから見つかるものだからです。
問題は本人の能力ではなく、出会う場所が家と学校と塾しかないこと。
だとしたら、変えるべきなのは子どもではなくて、その子が立っている場所のほうですよね。

次回は、いよいよ本題です。
誰も自分の偏差値を知らない教室に立ったとき、子どもに何が起きるのか。 「留学って英語のためでしょ?」と思っている方にこそ、読んでいただきたい回です。
中高生が価値観を大きく揺さぶられる経験ができるのが「海外留学」です。
娘の高校留学(カナダの高校に3年間)をきっかけに、親として様々なことを考え、家族で対話を重ねてきました。
そして、この8年間、YouTubeなどで情報発信するかたわら、同じような不安や疑問を抱える皆さんの応援をしてきました。
そうしたすべての経験を1つのカタチにした書籍『中高生の海外留学 知るたび、自分と未来が広がる本』を出版しました!
留学の基礎知識から、英語力、生活の不安、そして親御さんの疑問まで、包み隠さず本音で語っています。
ぜひ手に取ってみてくださいね。

また、これから本気で留学の準備を進めたい、具体的なプランや現地の情報を相談したいという方に向けて、無料相談・無料カウンセリングも受付しています。
アメリカの大学留学経験者であり、娘の高校留学を応援してきた親の立場の留学パパと、15歳で英語力ゼロからカナダの高校に留学したエリンが、皆さんの不安や疑問について、一緒に考えていきます。
無理な「押し付け」や「留学ありき」の話は一切しません。
ぜひお気軽にメッセージくださいね。

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