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STANCE vol.1 「構え」 カルチャー×ライフ マガジン


ライフスタイル誌 STANCE vol.1 「構え」

STANCE = 構え

「構え」とは、
 1. 造り。構造。また、家屋などの外観。「構えの大きな家」「洋風の構えの門」
 2. 予想される事態に対処するための備え。
 3. 即座に有効な動きができるように整えた、からだの格好。特に、武道・格闘技での姿勢。

出典:デジタル大辞泉(小学館)
コトバンク経由で閲覧

とされている。

僕が思うに構えとは、
 「構えとは、行動の前にあらわれる思想」 だ。

建物で言えば、構えとは外観だけではない。
それを支える構造まで含めて「構え」だ。

構えとは、外と中の両方を含んだ概念なのだ。

スポーツや格闘技でも同じ。
構えは、次のアクションをいつでも出せる準備であり、同時に動き始めの最初の段階と言ってもいい。

特にスポーツでは、
この姿勢をスタンス(STANCE)と呼ぶ。

だから、STANCEは単なる準備ではない。
そこには、スタイルがある。
次のアクションがにじみ出ている。

そして、その背後には思想がある。

STANCEは、それ自体がすでにアクションの始まりだ。

さぁ、準備を始めよう。あなたのSTANCEを取ろう。
そこから思想が芽生え、次のアクションが生まれる。

Take your STANCE.

STANCE = 構え、姿勢



QUESTION あなたの「構え」は?

あなたの「構え」は何ですか?

朝、1杯のコーヒーから始めること?
お気に入りの音楽を流すこと?
または、1冊のノートを開くことかもしれない。

行動の前にある、小さな準備。
あなたの構えは、何だろう。

STANCE = 造り、構造

CLIPPING 今月のカルチャー

MIND

「書くこと」の哲学 ことばの再履修

noteを始めてから、「書くこと」に関する本がやけに目に入るようになった。

世の中にはこんなにも、書くこと、伝えることについての本や発信が溢れていたのかと思うほどに。
多くの人が思いを伝えたいと思いながらも、どこかで書くことに苦手意識を抱えているのだろう。

今回紹介するのは、書くことについて。
この本は、自分の言葉で語ろうとする人にそっと寄り添いながら背中を押してくれる一冊だ。

書くことへのハードルが上がっている人にとっては、まさに「再履修」。
一度、自分の意識を棚卸しする機会になるかもしれない。

本書は哲学的な話から始まり、レトリックや技術にも触れていく。

ただし、「この通りに書けばいい」という一つのスタイルを与えてくれるわけではない。

それでいいのだと思う。
書くことを学ぶとは、型を身につけることではなく、自分の言葉で語るための準備をすることだからだ。

ゆっくりでいい。

あなたにしか語れない言葉で書き始める。
そのための構えを、この本は静かに整えてくれる。

BODY

On CloudMonster3

スイスのスニーカーブランドのOnより新作到着のお知らせだ。
私自身、OnのCloudMonster1を履いている。
優れたクッショニングと自然な推進力が特徴で、快適なランニング体験をもたらしてくれる素晴らしい一足だ。

ランニングに必要なのはシューズと部屋から出るほんの少しの勇気だけ。
散歩をするつもりでシューズを履いて、家を出る。街を歩く。
景色を見ているうちに段々と早足になり、気付けば身体が跳ねている。
それはジョギングでも、ランニングない、心地よい探検だ。

だから、大事なのはスピードじゃない。
最初から最後まで走り続けなくたっていい。

Onのシューズのもう一つの魅力は、
ランニングシューズに留まらないスタイリッシュさ。
街履きとしても成立するデザイン。
通勤に使うのも悪くない。

そうやって、ランニングがライフスタイルに溶け込んでいく。
Onを履いて、生活とランがシームレスになる感覚を体験してほしい。

Onを履いて外に出ること、それがあなたにとって最高の「構え」になる。

シューズを履く、それだけで走り出せる

FEATURE 誰かのSTANCE

さまざまな人物から学ぶべき姿勢(STANCE)を探る連載企画。

今月の顔は、

村上春樹(小説家)

日本を代表する作家であり、世界的にも高い人気を受ける小説家だ。
今回は彼の創作に対するSTANCE、つまり、「構え」を見ていきたい。

村上春樹の創作に対するSTANCEをよく表しているのは『職業としての小説家』にある次の言葉だ。

長い歳月にわたって創作活動を続けるには……継続的な作業を可能にするだけの持続力がどうしても必要になってきます。
それでは持続力を身につけるためにはどうすればいいのか?

それに対する僕の答えはただひとつ、とてもシンプルなものです
──基礎体力を身につけること。逞しくしぶといフィジカルな力を獲得すること。自分の身体を味方につけること。

村上春樹『職業としての小説家』(新潮社)

これが村上春樹のSTANCEだ。

私たちが抱きがちな、文学への退廃的なイメージとは真逆のものだろう。

村上春樹は、日本を代表する小説家であると同時に、熱心なランナーとしても知られている。フルマラソンやトライアスロンに参加するほどの本格派だ。

それにしても、
いたって健全で、スマートな回答である。

ではそんな彼の執筆生活を覗いてみよう。

まず朝早くに起きて、午前のうちは執筆活動に没頭する。
これは5~6時間程度、頭が動かなくなるまで行っているようだ。
午前の頭の疲れを癒すように、午後は休息や個人的な活動(音楽、読書)にあてる。
毎日、1時間程度は運動をする。
そして、翌日の仕事に備える。

シンプルだが、現代の私達にとってはいささかシンプル過ぎる生活に見えるかもしれない。
仕事(執筆)を続ける限り、人に会うこともできなければ、ちょっとした夜更かしで気晴らしをすることもままならないかもしれない。

とにかく、こんな生活を来る日も来る日も孤独に続けていたという。

創作には体力もいるらしい

ここまで孤独でストイックな生活を続けられる人は、そう多くないだろう。

ここで重要なのは、村上春樹の生活が特別だからその生活スタイルを真似できないという話ではない。
むしろ注目すべきなのは、その思想のシンプルさだ。

その根底には、
創作とは、ひらめきだけで成り立つものではない。
という思想が見てとれる。

センスや才能だけで書き続ける小説家では、彼ほど長くヒットを放ち続けることは難しいだろう。
彼は自分なりのルールのなかで、シンプルに努力を積み上げることの力を信じ続けてきたのだと思う。

長く小説を書き続けるためには、集中力と持続力が必要になる。
驚くべきは、その持続力を支えるのが「身体」だと考えていることだ。
多くの人は、創作をどこか神秘的なものとして捉えがちだ。
あるいは、感性やひらめきに依存した行為だと思われることも多い。

しかし村上春樹の考え方は、少し違う。

定期的にトレーニングに取り組み、十分な休養を取る。
それによって長時間の創作活動に耐えうる身体を作り上げる。
充実したエネルギーを持って、毎日机に向かう。
それらのルーティンを死守する。
その繰り返しのなかで、小説を書く能力も積み上げてきたのだろう。

このアプローチは、文学に対するロマンチックなイメージとは少し違っているかもしれない。
むしろ、創作というよりもアスリートに近い。
だが、その現実的な姿勢こそが、村上春樹のSTANCEなのだ。

そしてこの姿勢は、私たちの生活にも示唆を与えてくれる。
何かを作るということは、気合いや情熱だけでは成立しない。
仕事でも、勉強でも、創作でも、行動を起こすためには「持続できる身体」と「持続できる生活」が必要になる。

村上春樹の生活はとてもシンプルだ。

早く起きる。
集中して仕事をする。
身体を動かす。
そして翌日に備える。

特別なことは何もない。
ただ、その繰り返しを何十年も続けている。
彼にとっては、行動も準備も分かちがたく、努力と習慣の境界もおぼろげかもしれない。
生活全体が創作に必要な過程なのだ。

おそらくそれこそが、素晴らしいアクションを起こすための彼の「構え」というものなのだろう。

そこには、彼の思想がにじみ出ている。

長く創作を続けるための生活の設計。
村上春樹の作品は、その静かな構えの上に成り立っている。


ESSAY

構えの功罪

「構え」を特集しようと思った時、構えという言葉の最初のイメージは、構え過ぎて、身構えて、固まってしまう自分の姿だった。
過ぎたるは及ばざるが如し。
構えすぎることは、僕の欠点でもある。

失敗するのが怖くて、準備ばかりをしてしまう。
そうするうちに、いよいよ行動に移すタイミングを見失う。
ここまでたくさん準備をしたのだから、まずは完璧な構えを作ってから、行動に移そう。
そんな風に自分に言い聞かせる。

世の中を恐れるあまり、一歩踏み出すためにも固く身構えてしまう。

スポーツや格闘技などでは、構えとは無理のある姿勢であってはならない。自然と背筋が伸びて、脱力して、視界が広く、すぐにでも動ける、余裕のあるスタンスだ。
ボクサーの構えが亀のように縮こまっていては、いいパフォーマンスが出せるはずもない。

次の一歩を恐れる僕の構えは、まるで亀のように固い。 

いま、世間は春だ。
春になると否が応でも、変化を求められる。
入学、就職、転勤、さまざまだ。
そして僕らは変化に弱い生き物だ。
いつも通りでいい、これまで良かったのだから大丈夫。
そういう声が心の奥から聞こえてくる。

でも、僕はこの雑誌を作って構えを変えてみようと思った。
きっともっと軽い構えでいい。
ステップは軽く、周りがよく見えるように。
背中を曲げて縮こまっていたら勿体ない。

傷付かないための構え、から、
次の行動のための構えに変えてみたいと思った。

構えは準備の最終段階であり、行動の始まりだ。

さぁ、今日は何をしようか。

やれることは無限にある

WORD 今月のことば

『ブンバップ』 川村有史

川村有史の短歌には、はっきりとしたスタイルがある。

短歌というと、和歌由来の古風さや現代難解さをイメージする人も多いだろう。
だが、彼の歌には生活のリズムがあり、ストリートカルチャーの感覚が根付いている。

窮屈な靴でも・だからデザインが良く履く度に汚れていった

『ブンバップ』川村有史

スニーカー、スケボー、ラップ、そういったカルチャーに根ざしたワードを自然と短歌に落とし込んでしまうのが川村の魅力だ。

近年、世間ではスニーカーブームもあった。
しかし、川村からはスニーカーを履かずにコレクションするような姿勢は感じられない。

好きなスニーカーは履き続けるうちに汚れ、形が変わり、やがて生活の一部になっていく。
そんな生活の中の美しさが光る。

そこには等身大の生活者としての、「構え」が見えてくる。


EDITOR'S NOTE 編集後記

春になると、新しいことを始めたくなる。
入学、就職、引っ越し。世の中も少しだけ動き出す季節だ。
そんなタイミングで、このマガジン、STANCEを作ってみようと思いついた。

スポーツでも、仕事でも、何かを始めるときには必ずスタンスがある。すぐに動ける人もいれば、少し慎重に準備をする人もいる。人それぞれだ。

小説家の創作の構え。

生活のスタイル。僕たち自身の構え。

いろいろな人の「構え」を眺めながら、あらためて自分の構えについて考えてみた。

この雑誌を読み終えたあと、ほんの少しでもあなたの構えが軽やかなものになっていたら嬉しい。

春は、何かを始めるにはちょうどいい季節だ。

2026.3 STANCE vol.1 「構え」
EDITOR : Ryu.

【初めての方はこちらもどうぞ】

【この雑誌を作ったメソッドを公開しました】

↓ STANCE vol.2

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