この子はどこまで伸びるのだろう?──そう聞かれたときに専門家が考えていること──
こんにちは。今日もつらつらと書き連ねていこうと思います。
今日のテーマは、
「この子はどこまで伸びるのだろう?」と聞かれたときに、専門家は何を考えているのか
というお話です。
「どこまで伸びますか?」は、親としてごく自然な問い
脳性麻痺のお子さんを育てている親御さんなら、一度はこう思ったことがあるはずです。
「この子は、どこまでできるようになるんだろう」
「歩けるようになる? 座れる? 将来、どんな生活になる?」
それは、リハビリを続けるモチベーションにも関わるし、
進学や進路、家族の働き方など、生活の根底に関わる大きな問いですよね。
だからこそ、僕たちセラピストに、
「歩けるようになりますか?」
「どこまでできるようになりますか?」
「装具は必要ですか?」
「リハビリっていつまで通えばいいですか?」
「どのくらいの頻度で通うのがいいですか?」
「小学生になったらどうなりますか?」
と聞いてくださる場面は、本当にたくさんあります。
まず最初に、正直にお伝えしたいことがあります。
結論から言うと、「こうなります」とはっきり明言することはできません。
期待してくださっている中で、少し拍子抜けする答えかもしれません。
でも、これは決して「逃げ」ではなくて、
一人ひとりの子どもの未来を、誰も正確には予測できないからなんです。
僕たちが見ているもの:姿勢・感覚・協調性・認知・環境
「じゃあ、何もわからないままやってるの?」と言うと、もちろんそうではありません。
たとえ未来そのものは言い切れなくても、
「今、この子に何が必要か」については、僕たちはかなり具体的に考えています。
どんな機能をテーマにしていても、僕たちはいつも
姿勢制御(どこまで自分で姿勢を保てるか)
感覚(体の位置や触れられた感覚をどう感じているか)
協調性(力の入れ方・抜き方、タイミング)
認知面(理解力・見通し・やる気の出し方)
その子を取り巻く環境(家族、学校、福祉機器、生活リズム…)
こうした要素を総合的に組み合わせて、
「今のこの子にとって、現実的で、でも少しチャレンジな目標はどこか?」を考えています。
正直に言うと、ここには
教科書や論文だけでは説明しきれない世界があります。
マニュアル通りに答えが出るわけではなく、
どうしてもセラピストの「主観」や「経験値」が混ざってきます。
だからこそ僕は、
「ここに“完璧なエビデンス”は存在し得ない」
とも思っています。
その代わりに、
その子の身体と動きを、なるべく丁寧に観察すること
過去に似たケースの経過を思い出しながら、「可能性の方向性」を探ること
家族や環境も含めて、その子にとって現実的なラインを一緒に考えること
こうしたプロセスを、とても大事にしています。
それでも親御さんからよく聞かれる質問たち
先ほど挙げたように、親御さんからは本当にたくさんの質問をいただきます。
「この子は歩けるようになりますか?」
「将来、どこまでできるようになりますか?」
「装具は必要ですか? いつまでつけるんですか?」
「リハビリって、いつまで続ければいいんでしょうか」
「どのくらいの頻度で通うのがベストですか?」
「小学生になったら、今より良くなる? それとも大変になりますか?」
どの質問にも共通しているのは、
「この子の未来を、少しでも前向きにイメージしたい」
という、切実でまっとうな願いだということです。
僕自身、父親でもあるので、その気持ちは痛いほどわかります。
僕のスタンス:嘘はつかない。でも、「希望」は手放さない
そんな質問を受けたときに、
僕が自分に課しているルールがいくつかあります。
① 嘘はつかない
「絶対歩けますよ」とは言いません。
逆に、「絶対無理です」とも言いません。
どちらも、言い切れるだけの材料がないからです。
代わりに、
「今の時点で見えていること」
「ここまでは現実的に目指せそうだと思うこと」
「ここから先は、やってみないとわからないけれど、可能性としては〇〇くらいに見ている」
といった形で、
“見通しの幅”としてお話しするようにしています。
② ネガティブ情報は、かなり繊細に扱う
「将来、こういうリスクがあります」
「これ以上の変化は、正直あまり期待できないかもしれません」
といった話をせざるを得ない場面も、ゼロではありません。
でも、そういう話をするときは、
言葉を強くしすぎない
一方的に「無理」と決めつけない
必ず「じゃあ何ができるか」という話につなげる
このあたりを、かなり慎重に考えます。
“事実”を伝えることと、希望を奪うことは別問題だからです。
③ ポジティブな方向にフォーカスする
僕が大事にしているのは、
「この子なりに、どこまで“良い状態”を目指せるか?」
という視点です。
今よりも、座る時間を少し長くできないか
今よりも、介助量を少しだけ減らせないか
今よりも、笑顔の時間を増やせないか
そういった**「現実的だけど、ちゃんと希望のあるライン」**を
お子さんと親御さんと一緒に探していくことが、
セラピストとしての役割だと思っています。
僕たちにできること:未来を「約束」することではなく、「道標」を示すこと
ここまで読んで、
「結局、はっきりしたことがわからないままじゃない?」
と感じられたかもしれません。
その感覚も、すごくよくわかります。
でも、僕が思っているのは、
「確実な未来」を提示することはできないけれど、
「今から進める道」と「目印」は一緒に考えることができる。
ということです。
この数ヶ月は、ここを目標にしてみましょう
そのために、こんなリハビリや、こんな環境づくりが役に立ちそうです
経過を見て、また目標を少しずつ更新していきましょう
そうやって、**“更新され続ける未来予想図”**を
一緒に描いていくイメージに近いかもしれません。
このnoteを読んでほしい理由
このnoteでお伝えしたかったのは、
「はっきり言ってくれない=逃げ」ではないこと
僕たちは僕たちなりに、かなり真剣に、いろんな要素を総合して考えていること
でも完璧なエビデンスや答えは存在せず、そこにはどうしても主観も混ざること
それでも、一緒に“道筋”や“今できること”を考えることはできること
そして何より、
「この子の未来について、親御さんと同じ方向を見て考えたい」
というのが、本音です。
このnoteを読んで、
「あ、専門家ってこんなふうに考えているんだ」
「じゃあ、次のリハビリのときに、こんなふうに聞いてみようかな」
「一緒に悩みながら、少しずつ前に進んでいけばいいんだな」
と、少しでも前向きな気持ちになってもらえたらうれしいです。
あなたのお子さんの未来は、
誰にも「決めつける」ことはできません。
でも、一緒に“育てていく未来”なら、きっと描いていける。
そんな気持ちで、これからも親御さんと並走していきたいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
