オーギー・レンのクリスマスストーリー
ポール・オースター著「スモーク/ブルー・イン・ザ・フェイス」(新潮文庫)は上質なクリスマス・ストーリーだ。もうすぐクリスマスなのに、映画「Smoke」のディスクが家にないなんておかしいな。買わなきゃ。
ハーヴェイ・カイテル演じるオーギーは、タバコ屋の従業員だ。そこに通う、書けなくなった作家ポール(ウィリアム・ハート)。ふたりとも善人だが、特に幸福そうでもない。そこに聡いが嘘つきの家出少年ラシードが加わり、この三人の男たちの人生が交錯する。とは言え複雑な物語ではない。事件は起きるがささやかであり、しかし各々が明日へ一歩分だけ踏み出す。
「何も変わらないよ、言ったって……」
「変わらないなら、言っちまったらどうだ?」
バカは言うのさ。「お涙頂戴の」「予定調和の」ってさ。オーケー、知ってる単語を全部並べてみろよ。少しは賢く見えるかもしれないぜ。まさかそれで全部じゃないんだろ? この映画にはフォレスト・ウィテカーも出るしトム・ウェイツが歌うんだけど、それでも超一流の予感はしないか?
「お涙頂戴」って言葉が、おれは大嫌い。これが「本気」の頂点だ。
オーギー・レンのフィルムカメラ。「フィルム」カメラね。
表題の「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」とは、小説/映画「Smoke」で劇中劇のように挿入される、もう一編の物語だ。オーギーが写真を撮るようになった始まりの出来事が語られる。店でポルノ雑誌を盗んだ少年の家を訪ねて、少年の祖母とクリスマスの食事を共にすることになった夜の話なのだが、その話には大きな嘘があり、だから物語を真実にする。
この映画自体がそうだ。立派な人は出て来ない。誰もが嘘つきか、足踏みしてる——でもクリスマスくらい、彼らのような人々に優しい物語を。心に嘘をついた日があったあなたにも。
人生の始まりに、ささやかな夢があった。
足を止めた後にも、それは胸に消えないから。
note で、ある父親が娘さんに「8年間、君のサンタさんになれてとても幸せでした」って書いてて、泣かされまして。下の記事なんすけどね。
小説書くでも映画作るでも「親になる」でもそうだけど、誰かに夢をあげるために人って生きてんだと思うよね。そしてその思いは真実なのさ。
ふと偕成社の「サンタクロースっているんでしょうか?」を読み返したくなって、本屋へ。クリスマス、あの名著がないわけないよな?


8歳の女の子が書いた手紙が新聞社に届くところから、この本は始まる。「サンタクロースなんていないんだ、という子がいます。教えてください。サンタクロースっているんでしょうか?」――記者がその思いに応えるために綴った社説が、この本だ。——「サンタクロースがいない、ですって?」
