「わかっちゃいるけど…。」帰宅願望のAさんと、私の葛藤。
「そろそろ帰ります」
夕食の準備でバタバタしているホールに、Aさんの声が響きます。
私がホール担当で、1人、夕食の準備や席への誘導、トイレ誘導をしていると、Aさんはそわそわして、玄関へ向かおうとします。
「ああ、またか…。」
心の中でそうつぶやきながら、私はAさんの側に近寄ります。
私:「そうですねえ。帰りたいんですよねえ。」「帰って何されますか?」 Aさん:「・・・とにかく帰らないと…。」
私:「もうそろそろ夕飯ができるので、食べてから帰りましょうか。」
Aさん:「…。息子が待ってるから。」
私:「そうですねえ。息子さんが待っているんですね。」
そんなやり取りを交わしていると、他の入居者(Bさん)から「トイレ~。」との訴え。
「Aさん。ここで少し待っててくださいね。」
と言いながら、Bさんのトイレ介助を済ます。
Aさんを見ると、やはり玄関へ向かおうとしている。
再び、Aさんの側に行き、「Aさん。そろそろ夕食ですので…。」とひきとめる。
そのようなことを繰り返すうちに、あっという間に夕食の時間が近づいてくる。
仕方なしに、動作が早くなってしまう。 入居者さんを全員、自席へ誘導。事前のトイレ誘導。 お茶、エプロンの準備を素早く済ます。
Aさんは相変わらず、ホールと玄関を行ったり来たり。
帰宅願望(夕暮れ症候群)には、ゆっくり寄り添い、話を聴くことが大事。
それは、介護職員なら誰もが知っている「正論」です。
でも、現実は……。
私は心の中でこうつぶやく。
「わかっちゃいるけど…。」
そして、こう続く。
「もう少し、人員を増やしてくれよ~。」ってね。
