「知的障害」と「学習障害」は別物じゃない?現場で役立つ最新の考え方。
【この記事の要点】
「知的障害(ID)」と「学習障害(LD)」が重ならない図が目立つのは、古いルールの説明用だからです。
「知的障害」と「学習障害」は、重なり合っているのが『普通』です。
「学習障害」と「限局性学習症(SLD)」は、時代の変化による呼び名の違いです。
「知的障害」はなく「学習障害」だけの場合は、得意な力を活かした具体的な道具の支援が有効です。
【登場人物】
👨ヒロ君:
介護経験は長いが、障害者支援施設での勤務は初めての職員。
👩Kさん:
障害者支援に携わるベテラン女性職員。 ヒロ君の同級生で良き相談相手。
1. 「重ならない図」の正体
👨ヒロ君:
Kさん、ネットの図では「知的障害」と「学習障害」は『重ならない』と描かれていますよね。
あれは本当なのでしょうか。
👩Kさん:
あれはね、『診断のルール』を説明するための図なの。
二つの円が完全に離れて描かれている図のことよ。
これまでのルールでは、「学習障害」を診断するときに「知的障害」がないことが条件になっていたの。
だから、「知的障害」と「学習障害」が重ならない図が多く使われていたのよ。
👨ヒロ君:
ルールを整理するために、あえて離して描いているだけなのですね。
👩Kさん:
その通りよ。
でも実態は、「知的障害」がある方の中にも、さらに『読み書きが極端に苦手』という人はたくさんいます。
二つの円が重なり合っているのが、今の考え方よ。
これを『併存(へいぞん)』と呼びます。
2. 本人の「得意な力」を活かす支援
👨ヒロ君:
では、「知的障害」はなくて、「学習障害」だけの方には、どう対応すればいいのかなあ。
👩Kさん:
その方は『全体的な理解力』はとても高いわ。
だから、『苦手な部分を、得意な部分でカバーする』という考え方が大切よ。
具体的には、次のような道具が助けになるわ。
「書くこと」が苦手な場合:
パソコンや音声入力を使う。「読むこと」が苦手な場合:
読み上げソフトを使い、耳から情報を入れる。「計算」が苦手な場合:
電卓や専用のアプリを活用する。
👨ヒロ君:
『本人の得意な力』を活かせる道具を、一緒に見つけることが支援になるのですね。
3. 「限局性」+「学習障害」=「限局性学習症」という考え方
👨ヒロ君:
最新の呼び名、「限局性学習症(SLD)」についても教えてくれない?
👩Kさん:
これは、呼び方が新しくなっただけで、中身はほぼ同じよ。
「限局性」+「学習障害」と考えると分かりやすいわ。
👨ヒロ君:
「限局(げんきょく)」は、範囲が限られているという意味だったね。
👩Kさん:
そう。
『全体ではない、一部の分野(読み・書き・計算)に困りごとが限られている』という特徴を、より正確に表した名前なの。
4. まとめ:図の「外側」にある本人の姿を見る
👨ヒロ君:
ありがとう。
障害名というラベルだけで、その人のすべてを分かったつもりになってはいけないよね。
その人が今どんな『凸凹(でこぼこ)』を抱えているかを知ることが大切なんだよねえ。
👩Kさん:
その通りよ、ヒロ君。
古い図の形にしばられず、目の前の人が「どこで、どう困っているか」を丁寧に見ること。
「知的障害」と「学習障害」が重なっている可能性を常に考えて、柔軟に工夫していきましょう。
ヒロ君のその視点が、利用者さんの新しい扉を開くことになるわ。
【ヒロ君のまとめシート:最新の捉え方】
図の正体: 二つの円が離れている古い図は、書類上のルールに過ぎない。
重なりの正体: 「知的障害」に「学習障害」が重なるのは『標準(ふつう)』と考える。
呼び名: 「学習障害」と「限局性学習症」は、ほぼ同じ意味。
支援: 「知的障害」がなく「学習障害」だけの場合は、本人の『得意』を道具で引き出す。
