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【振り子の歴史;病院シリーズ⑥】心理士を知らない病院に新米心理士が来た4

前回からの続きです。


私が常勤採用された当初に
事務長から打診された業務は

①心理検査
②デイケアにおけるSST等プログラムの実施
③作業療法におけるSST等プログラムの実施
④患者・家族への相談支援業務
⑤入院精神療法の補助
⑥思春期患者の対応

の6つでした。
そして、⑤と⑥は
①~④が軌道に乗り出してから
実施ということでした。

①はすでに1年かけて行っていましたので、
なんとなくの流れは出来ていました。
②~④も業務だけ聞けば何となく
概要は分かりました。

しかし、
実際に行動しようとすると問題は
別のところにあることに気づかされました。

新しく創設される
臨床心理室の場所はどこ?

他部署とどうやって
連絡を取り合ったら良いの?

病棟は看護記録や
入院カルテがあるし
外来は外来カルテがあるけど、

心理室が活動したら
記録はどうするの?

どうやって他部署と
共有するの?

それとも
院内であっても情報は共有せず、
主治医から状況を聞かれても
守秘義務を優先するの?

そもそも書類も無いから
作らないといけないけど、
どのような書類を作ったら良いの?

そうです。

臨床心理室として動き出す前に
こうした細々とした課題が
山積していたのです。

前回の最後にも書きましたが、
この時、私が進もうとしていた先に
何の「道」も無いということを
改めて実感しました。

このときすでに
SCとして1年勤務していましたが、

どの学校に行ったとしても
記録するための書類が準備され、

その日の終わりには
「保健室(管理職)の先生に
記録を渡して退勤する」
という手続きが明確化され、

一日のスケジュールも
相談室の机も掃除の手配も
何から何まで全てが整っていました。

そうして環境が与えられていることに
何も気づかず、私はSCとしてただ
敷かれたレールの上を走る列車の
ような日々を送っていたことを、

この時まざまざと思い知らされたのです。

私の手のなかにあったのは、
事務長から受け渡された
(これから走っていく)レールの設計図と、
どっちの方角に向かって走っていくかを
示した羅針盤のみでした。

具体的にそのレールを
敷くにはどうしたら良いか。

心理の仕事を始める前に、
まずはここを考えていかなければ
なりませんでした。

そこで、
私は臨床心理室の立ち上げに際して
1年間は継続して打ち合わせの場を
設けて欲しいことを事務長に伝え、
まずこの許可をもらいました。

手元の記録によると、
2009年2月20日に私の常勤化に
伴う周知が打ち出されてから、

1週間後の2009年2月27日に
さっそく第2回打ち合わせを行なっています。

この第2回打ち合わせの前に、
臨床心理室の場所は
病棟建て替えの際に取り壊さず
残していた旧病棟の一角に決まりました。

そこは作業療法室から
ドア一枚隔てたところにある、
かつて入院患者さんが使っていた面会室でした。

病棟建て替え後は主に
男性職員の休憩室として
利用されていたようです。

この面会室は旧病棟の1階にあり、
窓からは院内の小さな中庭を
眺めることができたのですが、

その窓にはしっかりと鉄格子が
固定されており、

入り口のドアは旧病棟の鍵を
使って開けなければならない
重い鉄の扉でした。

中に入ると天井や壁は
見事に黄色く変色しており、

空間に染みついたタバコの臭いが
強烈に漂ってきます。

壁をよく見ると、
長年の煙を吸い込んだせいか、
黄色というよりも白さを失った
飴色にくすんでいました。

ところどころに筋状のムラが走り、
ヤニが溶けた跡が涙のように
垂れたまま乾いています。

空気まで重く、
タバコとともに古い部屋の匂いが
染みついていました。

この時点で、
常勤化されても当分は心理の仕事に
辿り着けなさそうだと悟りました。

第2回打ち合わせで協議した内容は

・心理士の活動状況を
どう各部署で把握するか、

・「患者・家族への相談支援業務」
をどうするか、

・臨床心理室について
(古くて重苦しい鍵を使って開ける鉄の扉や、
窓に張り付いている鉄の格子、
変色はまだしも臭いを何とかできないか)

・必要な物品の依頼方法

・心理室のごみ収集方法

・検査や相談の依頼を受け付ける流れ

・初診時の問診について

・スクールカウンセラー(SC)継続について

上記の通り、
第2回打ち合わせの時点で
私から事務長に

「臨床の幅を広げるためにも、
SCは1校だけ継続していきたい」

と伝えました。
このとき事務長から断られていたら、
大分違った道を歩んでいたと思います。

2009年3月16日に
第3回打ち合わせを行なった際に使用した
臨床心理室の活動表がこちらです↓

2009年3月 臨床心理室活動表


カウンセリングは未整備なので指示無し。
検査は月4件。
院内行事(カラオケ操作担当)1件。

デイケア・作業療法室も
SSTなどやれるわけがなく、
単なる補助で行くだけでした。

その他の日は何もなし。
ひたすらに書類の
フォーマットを作成したり、
次回の打ち合わせで
何を議題にしたら良いか悩んだり。

心理室は創設できたものの、
病院から全く使ってもらえない状況や
変わらず漂うアウェー感を
どう打破していくか。

どうやったら仕事が
舞い込んでくるのかを
真剣に考える毎日でした。




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