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創作小話|エラとヨルを描き始めたきっかけ


◾️最初はひとつのシーンから

『エラとヨル』を描き始めたきっかけは、あるシーンが頭に浮かんだからです。

その時、とある曲が頭の中で流れていました。
何の曲かは言いません。すこしマイナーです。
でも、その曲のイメージが鮮烈で、かなり影響を受けたのは間違いありません。

ヒントは、空から落ちていく姿。
かなりアップテンポで、爽快な感じ。
あと、ボーカロイドの曲です。

わかった人は私の仲間です。
同志です。
飴ちゃんあげます。

そのシーンは、絶対に入れようと思って書き始めました。
けれど、そこにたどり着くまで二十四話かかりました。

空から落ちる二人。
怖いはずなのに、笑っている。
夜空を、ものすごい速度で落ちていく二人。

着地の方法は考えていませんでした。

……いや、冷静に考えると、だいぶ危ないですね。

でも、最初にあったのはこのシーンだけでした。笑

物語全体の形が見えていたわけではありません。
私はこの場面にたどり着くためのピースを、一つずつ集めていきました。

つまり『エラとヨル』は、最初から壮大な計画のもとに始まったというより、
「この場面を書きたい!」という勢いから始まった物語です。

だいたい、そういう始まり方をしたものは、あとで作者が苦労します。
今回もたぶん、そうでした。



◾️見えていたのはエラ


もう一つ、最初のころから浮かんでいたものがあります。

エラのこのセリフです。

「冒険者じゃないよ、探検者!」

それと、地図を書く仕事。

勢いがあって、とにかく明るい。
でも、少しズレている。

そんなキャラクターのイメージが、最初にありました。

かなり早い段階で、
「この子、たぶん人の話をちゃんと聞いてるようで、ちょっとズレた返事するな」
という確信もありました。

そして、なぜか髪の色は紫でした。

なぜでしょう。
本当にわかりません。笑

でも、たぶんそういうものなんだと思います。
理由より先に、もうその子はそこにいたんでしょうね。

作者はあとから「なんで紫なんだろう」と考えます。
キャラクターは先に「紫だけど?」という顔をしています。
強いです。




◾️『エラとヨル』の骨格にあるもの

エラの姿が見えてきたのと同時に、物語の骨格も少しずつ見えてきました。

地図を書く旅人の話。
少しズレているけれど、なんやかんや賑やかで、ちょっと考えさせられる。
そんな物語です。

そして、もう一つ大事だったのが、「判断」でした。

これは『イブ物語』全体にもつながっている部分です。

何が正しいのか。
どうするべきなのか。
誰と、どう向き合うのか。

そういうことを、旅の中で少しずつ考えていく話にしたかったのだと思います。

……などと真面目っぽく言っていますが、実際に書いている時は、
「この二人、ここで絶対まっすぐ進まないな」
みたいなことも普通に起きます。

でも、そのズレ方も含めて、たぶんこの物語です。



◾️主人公が二人だった理由


主人公は最初から二人でした。

性格は違う。
だからぶつかることもあるし、ときには喧嘩もする。
わからないから話をして、話をするから少しずつ相手が見えてくる。

そんな二人の物語が、最初からぼんやり浮かんでいました。

では、なぜ女の子二人が主人公なのか。

これもだいぶズレています。
でも、がんばる女の子が書きたかったからです。

以上です。

……いや、ほんとにそれがかなり大きいです。

もっと深くて文学的な理由がありそうに見えたら申し訳ないのですが、
わりと元の動機はそのくらいの温度感です。

でも創作って、案外そういう「好き」が一番強い気がします。



◾️地図を見る話ではなく、地図を作る話


旅は危ないです。
しかもこの物語は、地図を見ながら旅をする話ではなく、地図を作りながら旅をする話です。

かなり変わっていると思います。

普通は、地図があるから安心して進めます。
でも『エラとヨル』は、そこをあえて逆走しています。

安心材料がない。
でも進む。
しかも「たぶん、だいたい、大丈夫」で進む。

強いのか雑なのか、たまに作者にもわからなくなります。

でも、そうすることで『イブ物語』の世界、中央大陸を、読者と一緒に見ていける気がしました。

完成された世界を案内するというより、
まだ知られていない場所を、登場人物と一緒に見つけていく。

『エラとヨル』は、そういう旅の形にしたかったのだと思います。

だからこの物語には、意外と知られていない街や土地がたくさん出てきます。

たとえば、城塞都市リンブガルド。
名前からして、すごくファンタジーですよね。

あの街には、ちゃんと都市の設計図や歴史もあります。
物語の中では全部は出ません。
でも、そういう部分を裏でこっそり作って、ひとりでニヤニヤしているのが私です。

城塞都市リンブガルド


読者に全部見せるわけではないのに、裏設定だけ増えていく。
創作者あるあるです。



◾️宿屋の名前にも、ちゃんと理由がある


ちなみに、物語に出てきた「カエルの宿屋」や「猪突猛進亭」にも、ちゃんと意味があります。

あの辺りの地域は、宿屋の激戦区です。
流行り廃りも激しくて、どの宿も生き残りをかけて必死です。

そこで生まれたのが、名物料理という発想でした。

味がいいだけでは、次につながらない。
どうしたら旅人の記憶に残るのか。
どうしたら口コミが広がるのか。

そんなことを考えた結果、とんでもない名前や、思わず誰かに話したくなる遊び心が生まれて、ああいう宿屋になっています。

カエルの宿屋


要するに、あの世界の宿屋もかなり営業努力をしています。

ファンタジー世界でも生き残りは大変です。
夢だけでは宿は回りません。
現実的です。



◾️プロットがない、というより……


『エラとヨル』には、きっちり固めたプロットがありません。

もちろん、完全に行き当たりばったりというわけではないです。
さすがに毎回「さて今日はどうしようかな」で書いているわけではありません。
……たぶん。

ただ、作者である私も、読者と一緒に旅をしている感覚があります。

少し違うのは、ほんの数話先の景色が、少しだけ見えていることです。

だから書いている最中にも、

「へぇー、そんな場所なんだ」
「ここは大変そう」
「ちょっと食べてみたいかも?」

と、自分で驚きながら書いています。

たぶん私は、物語を作っているというより、
旅の途中で見つけたものを拾って、言葉にしているのかもしれません。

作者なのに、わりと普通に読者側の感想が出ます。
不思議です。



◾️そして気づいた、衝撃の事実


そんなふうに書いていたら、途中で衝撃的な事実に気づきました。

三十話書いて、戦闘シーンが二回。

あれ?

ファンタジーは?
魔法や剣の戦いは?
どこ行った?

いや、あります。
剣もあります。
魔法もあります。
設定もちゃんとあります。

でも、気づいたら全然戦っていませんでした。

たぶんみんな、歩いたり、食べたり、喋ったり、悩んだり、ズレたりしていました。

でも、たぶんそれも『エラとヨル』らしさなんだと思います。

戦うことよりも、歩くこと。
勝つことよりも、見ること。
正しさよりも、どう判断するか。

そういうものを積み重ねていたら、今の形になっていました。

なので『エラとヨル』は、ファンタジーなのに戦闘が少ないです。
でもたぶん、それで合っています。

作者も最近ようやく、そう思えるようになりました。笑

最近ちょっと戦闘シーンが増えたのは……
決して戦闘を忘れていたわけではありません。

嘘です。

忘れてました。



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第二十四話まで読んでみてください。
私が最初に見た景色が、そこにあります。
ここ、書きたかったところです。



創作大賞2026 ファンタジー小説部門 投稿作

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