小学5年生が泣きながら単身イギリス留学した話|第15話〜大道芸を習うの巻〜
※これは1995年、今から約30年前の話です。まだインターネットも携帯電話も普及していなかった時代、英語を話せない10歳の私が、イギリスで奮闘した日々を綴ります。
前回の話はこちら⬇︎
私には、イギリス人に絶対に言えない秘密があった。
ボーディングスクールの部屋の壁には、みんな好きなポスターを貼っていた。
私は猫のポスターを飾った。
すると隣のベッドの子が、新しいポスターを嬉しそうに広げた。
これ、新しいの買ったんだ〜
かわいくない?
そう言って見せてくれたのは、一頭の馬だった。
……馬?
馬のポスター??
私は正直、戸惑った。犬でも猫でもない。馬のポスター。
でも彼女は周囲の友達に自慢してまわっていた。めちゃくちゃ可愛いでしょ?と。
イギリス人にとって馬は、日本でいう犬や猫と同じように愛でる存在であり、ポスターにして眺めるくらい可愛い対象なのだと理解した。
そして同時に、あることを思い出した。
やばい。
わたし、馬、食べたことある。
私の母は熊本出身。小さい頃、母の実家に帰省すると馬刺しを食べた。
Soooo Cute !!!!
ポスターの中の馬を眺めながら、そう叫ぶ友達を見て、これは墓場まで持っていく秘密にしようと固く誓った。

週末や放課後には、さまざまな課外活動(アクティビティ)があった。
好きなものを自由に選べる。
バイオリンやバレエのようにお嬢様らしいアクティビティをする子もいたし、ドラムや大道芸などを選択する子もいた。

そして、私はもちろん(?)大道芸を選んだ。
学校にプロの大道芸人がやってきて、放課後にこの英語を話せない日本人に身振り手振りで一生懸命教えてくれた。
そのかいあって、私は一輪車に乗りながらジャグリングができるようになった。
さらに同時に5、6枚の皿回しができるようになった。
さらにさらにdiabolo(中国ゴマ)と呼ばれるコマを空中で回転させたり、投げたりする大道芸の技を幾つか習得した。

わたしはどこへ向かっているのでしょうか?
二児の母になった今でも、ときどき公園で大道芸のパフォーマンスを見かける。子どもたちは目を輝かせて見入っている。ある日、ショーが終わると大道芸人さんが声をかけてくれた。
お母さんもやってみませんか?
え〜、私にできるかなぁ~
などと恐縮しながら道具を受け取ると皿を回した。
もう一枚。
さらにもう一枚。
3枚同時に回す。
続いてDiaboloを高速回転させ、そのまま高く打ち上げ、一回転してキャッチした。
大道芸人さんは私を見つめたまま固まっていた。
子連れの普通の主婦が突如として大道芸の高度な技を繰り出すものだから、周囲を大変困惑させた。
あなたは一体…
いえ、名乗るほどの者では…
この時のために大道芸を習っていたのだろうか。長い伏線回収だった。
次回、イギリスのボーディングスクールの学費事情。当時の学費明細を大公開!
第一話はこちらから⬇︎
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